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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
2回戦

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第12話 パターンとスイッチの変更

「みんなお疲れさん! 最少失点で食い止めることができて上出来だよ。というわけで、まずはこの回で同点に追いつくのを目標に頑張ろう!」


 6回裏の赤石あかいし高校の攻撃で勝ち越し点を許し、足取り重くベンチへと引き上げてきたオレたち。


 それを元気のいい声で出迎えたのは、今日ベンチスタートのキャプテンしょーたであった。


 まあ、そうだな。まだ3回残ってる……慌てる必要なんてない。


 それにこれから入る7回表はオレに回ってくるのだから、ここで一発打てばいいだけのこと。


 さてそれじゃ、ベンチ裏で休憩を取ろうかな。と歩きだすと古池監督の声が。


「オージロウくん! どこへ行こうというんだい?」


「えっ? これから休憩タイムでしょ?」


「いや、それは5回と6回の間に取る8分間のクーリングタイムだけだよ。ちょっと勘違いしてるみたいだね」


「……そんなバカな」


「おい、大丈夫かオージロウ? マジで熱中症になって意識朦朧としてるんじゃ」

「あの、急いで氷嚢用意するから横になって待ってて」


「……いや、ただの勘違いだから、しょーた、泉さん! ドリンクだけ飲んだらサークルに行くし、心配すんなって!」


 とんだ恥をかいてしまった。でもそんなに身体は熱くないし、そういうのじゃないと思うんだけど……とにかくできるだけ間をとって十分に給水してからバットとヘルメットを持ってベンチを出た。


 そして右打席には既に近海ちかみがバットを構えて相手エース楠元くすもとのボールを待ち受けている。


 オレが4回にソロホームランを打ったのを真似してかクローズドスタンス……外角に逃げるカーブに届くよう対策してるんだろうけど、怖くないのか?


 だが近海は内角へ食い込む球威満点のナチュラルシュートを果敢に打ちに行く!


「だっぴょ! イテテ!」


「ファウル!」


 ガコッ! と鈍い打球音と手の痺れを訴える声が。言わんこっちゃない。


「おい、無理するなよ! 普通に構えて打ったほうがいいって!」


「これくらい平気だっぴょ! それよりも主砲はどっしり構えてチャンスに備えるっぴゃ!」


 いつになく気迫十分……これならいける。頼むぞ、出塁してオレにチャンスを回してくれ!


 そこから4球粘る近海に、恐らくそろそろ楠元はアレを投げてくるはず。そしていよいよ……!


「これで終わりだ……しつこいのはぁ! えやあああっ!!」


「きたっぴょ! チェンジアップ!」


 バッターの手前で急激にブレーキがかかって止まったように見えるパラシュートチェンジ!


 近海はスイングしたいのを堪えて、ボールが動き出したところを狙っていく……のだが。


「うわあっ! 足がガクガクだっぴょ!」


 スカッ!!


「ストライク! バッターアウト!」


 つんのめって空振りした勢いで、その場に倒れこんじまった。これは様子を確認しないと!


「おーい、近海くん! 立てるか、それとも」


「……別に大丈夫だっぴょ。ちょっと足がつる寸前だったっていうか」


「いやそれ熱中症の前触れじゃ」


「そうじゃない……アイツの剛球に押し負けないように足を踏ん張り続けて、最後はあのボールを振るのを待ってたら、一気に踏ん張りが効かなくなったっちゃ」


「何にせよ立てないなら応援呼ばないと」


「だから問題ないっぴょ! ほら立てるし歩いて戻れるから。そんなことよりホームラン打ってくれる方がありがたいっちゃ!」


 そうだな。確かに同点に追いつくのがみんなにとって一番の回復薬。


 オレは狙い球を見定めて左打席に入る。あとはその時を待つだけ……。


 だが初球から意表を突かれたオレはバットを振ることなく立ち尽くすしかなかった。


「ストライク!」


「ふふふ。見え見え過ぎるって、たもっちゃんが三振取りにくるキメのチェンジアップ待ちなのが!」


 相手キャッチャーが得意げにこっちの狙いを言い当てやがる。で、これまでと配球パターンを変えていきなりチェンジアップをストライクゾーンに投げてきた。


 その上、楠元の投球フォームも。ヤツは左投げにスイッチせずにあえて右投げのままで挑んできたのだ。


 つまりオレに対しては外角攻めに変更ってわけか。


 実際に2球目は外角いっぱいにナチュラルシュートを決められて、3球目はギリギリから外へ逃げていく高速シンカーで振らせにきた。


 ボール球には手を出さなかったけど……新たに見せられた軌道への対応が追いつかない。


 まあでも次にストライクを投げてきたら、曲がり始めを捉えてセンター方向へ打ち返してやる。


 さあ来い!


 しかしマウンドの楠元は不敵に笑みを浮かべてオレの打ち気をはぐらかしてきた。


「ボール!」


 カーブをオレの頭より高い位置から落として……ストライクゾーンにかすることもなく、完全な高めのボール球として投げてきたのだ。


「さて、トドメは何で行こうかな〜」


 相手キャッチャーが聞こえよがしに呟いて惑わせてきやがる。なかなかのクセ者、というかそれくらいじゃないと楠元みたいな変則的な剛球投手を操縦できないよな。


 普通ならばチェンジアップも合わせて外角に逃げる系統のボールを3つ持ってるから……だが意表を突いて、というのもあり得る。


 正直なところ予測がつかないし、オレはストライクゾーン内のボールを弾き返すだけさ。


 だからこそ全力でスイングできるように構えから準備する。適度に力を抜いて、振ろうと思った瞬間に反射的に振り抜くイメージを頭に思い浮かべて。


 今度こそ、来い……!


 そして楠元は投球に入る直前、大真面目な顔でよく分からんことを言い出した。


「2本目はない、お前には……そしてお前にもなってもらう。赤石高校完全復活の礎に!」


 何だよそれ、大袈裟な話だなあ。ウチは5校連合チームなんでそれどころじゃねーっての。


 楠元はこれまで通り背番号が見える程上半身を大胆に捻ると。


 そこから左足を強く踏み出しながらトルネードの回転で右腕を強烈に振り切る!


「内角行くぞ! えやあああっ!!」


 きたか内角胸元……いやこれはどっちだ?


 ナチュラルシュートでフロントドア気味にストライクゾーンをかすめるつもりか、それとも……迷ってる暇はなさそうだ!


「うりゃあああっ!!」


 バッコーーンッ!!


 ちくしょう! そのまま真っすぐの、わずかにボール球のストレートで読みは外れた。


 おかげで芯よりも少々根元側で打つハメになって両手の痺れが半端ない。


 だが思いっきり引っ張ってやった……あとは右中間の深いところに届きさえすれば。


 あらかじめフェンスベタつきで守ってた外野手、センターの方が追いついてきて。しばらく上空を見ていたが、急に手を上げて叫び始めて。


 パシッ!


「バッター、アウト!」


「おっしゃあああ! ウチのエースが力勝負で押し切ったアアアッ!!」

「これでもう勝ったも同然だー!」

「内角ストレート真っ向勝負でオージロウが負けるなんて」


 ああ……赤石側スタンドの大歓喜とウチのスタンドの深い失望感が手に取るように感じられる。


 下手したらもう打席が回ってこないかもしれない。オレは今まで感じたことのない焦りを抱かずにいられなかった。

 


<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は3月25日(水)の予定です

よろしくお願いします

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