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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
2回戦

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第10話 意表を突く

「と、届かねえ〜!」


「ストライク、バッターアウト!」


「おっしゃ! この回も順調にまずはワンアウト!」

「今日も楠元くすもとの奪三振ショーだあ!」


 球審のコールとともに赤石あかいし高校側スタンドは歓声で沸き立っている。


 4回表のウチの攻撃にて、先頭打者の中地さんが三振に倒れた……だが何の工夫もしなかったわけじゃない。


 内角へ食い込むナチュラルシュートを攻略するために、中地さんは打席で目いっぱいベースから離れて立つことを選んだ。


 最初は楠元のストライクゾーンの感覚を若干狂わせて、ファウルになったが良い当たりの打球も飛ばしたのだが。


 相手バッテリーは落ち着いていた。まあこの程度のことを仕掛ける相手チームはいくらでもあったはずだ。


 結局はツーストライクに追い込まれ、最後は高速で外へ逃げていくキレのいいカーブにバットが届かなかった。


「ドンマイ中地さん! でも相手がこれまで投げてこなかった球種を出させたんだから十分っすよ!」


「だろ? 何の役にも立ってないってこたぁねえよな!?」


「もちろん、おかげで何か掴めそうです!」


「おほおっ! 気味が悪いくらいにオージロウが褒めてくれたぜ〜!」


 何だよそれ……と思いつつもこれまでの閉塞感漂う雰囲気に光が差し込んできたのは間違いないので、素直にありがたい。


 そしてネクストバッターズサークルで待つオレの前で、今度は2番の近海ちかみが新たな工夫を見せた。


「見よ! これでバシッと内角を打ち返してやるっぴょ!」


 オープンスタンスを選んだか。そこまではいいんだが……足だけじゃなくて肩まで開いちゃってんだけど。


 つまり本当にピッチャーへと正面向いて構えてるってことになる。でもそれじゃ腰がうまく回らなくて、バットに当ててもまともに飛ばないんじゃ……ましてや外角は当てられない気がする。


 そして初球は早速内角へ食い込むナチュラルシュートが。どうする?


「このまま右へおっつけるっぴょ!」


 バシィッ!!


「ファウル!」


 なんと……あんな構えでよく前に飛ばせるな。上半身が強いのだろうか。


 足はほぼノーステップで、器用にバットコントロールだけで弾き返してる。


 そして2球目のシンカーは見送ってボール。両目が正面を向いている分、最後まで見えやすくなっているようだ。


 さあ3球目は何を投げてくるつもりなのか。


 楠元はこれまで通りにノーワインドアップからトルネードで背を向けて、そこから一気に右腕を勢いよく振り切る!


「えやあああっ!」


「外角ストレートきた! 待ってたっぴょ!」


 バシィーッ!!


 近海は開いていた右足を閉じるように踏み込んで、センター方向へライナーを打ち返した!


 これなら外野へ抜ける……そう確信したのだが。


「残念! 正面の当たりだったね〜!」


 相手セカンドにパシッと捕球されてしまいツーアウト……やられた。


「くぅ〜! ついてないっぴょ! 重たいストレートをせっかく打ち返したのに!」


「……ナイスバッティング!」


 オレは悔しがる近海に一応声をかけたが……さっきのは不運じゃなくて、明らかに予測されたポジション取りだった。


 今みたいに外角ストレートを狙って踏み込むバッターも多いのだろう。セカンドはセカンドベース寄りでやや深めに守ってた。


 赤石高校は単なる楠元のワンマンチームじゃないよ。実際に対戦してみると投球に合わせてちょこちょこ守備位置変えたりして、全員でエースを支えてる。


 ベンチには記録員が2人……男子と女子一人ずつでお互いにつけたスコアを見せ合いながらあーだこーだ話し合って、データ分析して試合に活かしているんだろう。


 さて、オレはどうしようかな……これなら少しは相手の意表をつけるだろうか。


「……!」


 グラブを左手から右手にはめ直した楠元が怪訝な顔を見せる。


 そりゃそうだよな。オレは左打席でベース寄りに立ち、更にクローズドスタンスで構えようとしているのだから。


 それは相手側スタンドも同じらしく。


「どういうつもりだ! 楠元の内角ストレート、ナメてんのか!?」

「デッドボール狙いかよ! セコいぞ!」


 うっせーな、黙って見てろ……と内心思いつつも淡々とバットを構える。


 左投げへとスイッチした楠元はおもむろに始動して……これまでよりもドシンと強く足を踏み込んで、オレを試すかのように剛球を投げ込んでくる!


「えやあああっ!!」


「……うりゃあああっ!!」


 バシィーーンッ!!


「うわああーっ! レフトに大きなのがァ!!」

「おっしゃきたあーっ! 広角打法でレフト打ちィ!!」


 楠元が投げる内角へのナチュラルシュート……オレは右足をベース寄りに踏み込んだままステップし、食い込みながらノビてくるボールの勢いに逆らわず弾き返してみた。


 向かってくるボールにあえて身体を近づけてるわけだから怖くないと言えば嘘になるけど……イメージ通りコンパクトに振り抜けたと思う。


 あとは切れずに入ってくれれば。


「ファウル!!」


「お、惜しすぎるぅ〜! もうちょっとポールが左にあったら!」

「ひい〜! 肝冷やしたぜ!!」


 残念……だけどこれで狙いやすくなったかな。


 さすがにショックを隠せない表情の楠元は、2球目をフロントドアの高速カーブでストライクを稼いだ。


 見送りつつじっくり見させてもらったから、次は思いっきり引っ張るだけ。速いと言ってもカーブ、右足を開く余裕くらいはある。


 その辺を相手バッテリーが汲み取っていれば……次はアレで仕留めにくるだろう。


 というわけで……3球目、来い!


「広角に打ち返せるか、これを……えやああああっ!!」


 内角の膝上目掛けて……ここから鋭くコンパクトに振り切る!


「うりゃあああっ!!」


 バッシィーーンッ!!


 高速シンカー、フッと消えた瞬間に落ちきった場所を予測通りにスイングして……打球は大きな放物線を描いて右中間にかっ飛んでいく。


 浜風だけど、まああれくらい勢いがあれば大丈夫だろう。


 クローズドだから内角を引っ張るのはバットの出がやや遅れ気味だけど、読み通りというのもあって丁度いいタイミングで振り抜けたと思う。


 そしてウチの側の大歓声と相手側の静けさの中、オレは淡々とベースを一周したのであった。



<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は3月20日(金)の予定です

よろしくお願いします

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