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5校連合チームで挑む甲子園 〜160cm台の怪物二刀流、全国を震わせる〜  作者: ウエス 端
2回戦

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10/10

第9話 球威とコントロールのバランス

「ストライク! バッターアウト!」


 1点リードを許したまま、試合は早くも3回表……というか今ちょうどオレたちの攻撃が終わった。


 現在ウチはノーヒット……というか既に7奪三振を赤石あかいし高校のエース楠元くすもとに許している。


 内角へ食い込む威力満点のナチュラルシュートが面白いように決まって、最後は高速シンカーを振らされてしまう。


 というか内角にしか投げてないのにこれじゃ……まあ嘆いても仕方ない。とにかく裏の相手の攻撃を無失点でしのいでこっちに流れを呼び込まねば。


「オージロウ! いいから遠慮せずに全力で投げてくれ。身体を張ってでも止めるから!」


 一緒にベンチを出た勝崎さんはああ言ってるけど……しょーたみたいに突き指をさせるわけにはいかないし。


 まあ1回戦は序盤から終盤までしょーたの左手に負担をかけ過ぎてしまったのも原因だけど。


 赤石の下位打線はコーナーを丁寧に突けば全開でなくても抑えられるから、そこで上手く調節しよう。


 ということで先頭の8番打者を3球でセカンドゴロに仕留め、9番の俊足バッター河東かわひがしを打席に迎えている。


 次は1番バッターで1回裏にホームランを打たれた楠元……塁に出さないようにセーフティバントを警戒せねば。


 サードの田白がやや浅い守備位置。あとは簡単にバントさせないように厳しいところを突いていく。


「うりゃあっ!」


「くそっ、速い上にいいトコ投げやがる!」


 ガコッ! とボテボテのゴロがサードの方向へ転がっていく。予想外のマン振りだがそこに田白が突っ込んでくる。


「嫌な弱さのゴロだが、俺の肩で刺してやるよ!」


 意気込みはいいが途中でワンバウンドする送球……嫌な予感が!


「あっ! やっちまった!」


 ファーストの中地さんが華麗にスルー……とイヤミが思い浮かぶくらいのザルっぷりで送球を後ろに逸らしてくれやがった。


 河東は当然セカンドを陥れて……。


「ボテボテだったのにラッキー! たもっちゃん、俺をホームに返してくれ〜!」

「あー、わかっとる! 大声で叫ばんでも!」


 『たもっちゃん』はどうやら楠元のあだ名らしい。そして相変わらずぶっきらぼうな口調で答えてる。


 最初は怒ってるのかな? と思ってたが、河東の反応を見るに普段からあんな感じの喋り方をしているようだ。


 ならば必要以上にビビることはない。


 しかし相手側スタンドの大歓声がヤツを後押しするかのような勢いで、やりにくいことに変わりはないけど。


「オージロウ! 悪かったな、さっきのは」


 今度は1塁側から中地さんの声。悪かった、じゃ……いやいや、エラーしたくてする人はいない。


 それにこういう守備のミスは、多くても週2回程度しか合同練習できない連合チームには付きもの。相手の送球に普段から慣れてないとイレギュラーな時に対処が難しくなる。


「問題ないっす! 中地さんのは計算の内なんで!」

「それはちょっと言いすぎだろ!」


 確かに言い過ぎたか。でも少しスッキリした。


「さあ来い、ここで一気に突き放す! 連続ホームランで!」


 今度は楠元がなんか言ってきた。


 狙ってくるのかよ。さっきのはフェンスギリギリで入ったってのに……オレもナメられたものだ。


 コイツの打席はもちろん全開で行く。勝崎さんには悪いけど……怪我しないでくれよ!


「うりゃああっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク!」


「おっしゃ決まった! 初球から163キロ!」

「ビビるこたぁない。前の打席もあれぐらいのボールをホームランにしたんだ!」


 それはコントロールが甘かったから……オレと勝崎さん、そしてしょーたを交えてベンチで組み立てと捕球について話し合いを重ねた。


 そして出した結論……基本に立ち返ってキッチリとコースを突いてストライク先行でいく。


 あとは球威とコントロールのバランスをオレがどうとるか。集中力が必要だけど、それができないようじゃ勝ち上がれない。


 それじゃ2球目、外角低めだ!


 ズバンッ!!


「ストライク! カウント0−2!」


「……ストライクだと? あのコースが!?」


 ふう。ギリギリを狙いつつも腕を振り切ったボール、今日一番の集中力で投げきれた。


 そしてこのストライクはとてつもなく大きい。


 3球目は……。


「ボール!」


「内角高めで164キロでたー!」

「やっぱ高めで勝負か。さっきみたいに力でもってけー楠元!」


 これは予定通りのボール。最初から中腰の姿勢で構えた勝崎さんに、この球速でノビる高めに慣れてもらう。


 それじゃあ今度こそ勝負球……安定した軸足からの強い踏み込みで、行くぜ4球目!


「うりゃあああっ!!」


「……え、えやああっ!!」 


 ズバンッ!!


「ストライク、バッターアウト!」


「またでたぁー! 今日最速の165キロ!」

「だけどアウトコース低め……得意のノビる高めじゃないのにどうして振り遅れたんだ?」


「……2球目が効いた。だから振ってしまった……思わず!」


 楠元は悔し紛れにブツブツ言いながらベンチへと戻っていく。


 そしてオレたちの組み立てはヤツの言う通りに計算したものだ。


 2球目、コースギリギリに決まったことで……高めほどじゃないがボールゾーンからノビてくる低めに手を出すか迷いつつ、最後は振らざるを得なかった。


 さてまだツーアウト。あとは2番の中多なかたを仕留めないと。


 ちなみにランナーはさっきの三振の時に盗塁で3塁を陥れた。こっちが楠元に全集中してる隙を見逃さず……赤石ベンチもなかなか抜け目がない。


 それはともかくとして中多に集中しないと。


 楠元みたいな強靭な下半身から生み出されるパワーはないが、シュアなバッティングで鋭い打球を飛ばしてくるから油断はできない。


 左打席で落ち着いて構える中多……だがこれで終わりにする!


「うりゃあああっ!!」


「外角、打ちごろの高め……とああっ!」


 バシィーッ!


「予想通りのサードライナー! はいっと!」


「アウト! スリーアウト、チェンジ!」


「そ、そんな! いい当たりだったのに!」

「飛んだ位置に野手が! ついてねー!」


 ラッキー、助かった!


 というのは表向きのポーズで、もちろん中多がオレの球威に押されてあの打球になるのは計算通り。


 さて、勝崎さんの左手にあまり負担をかけずにしのぐことができた……そして4回表はオレに打順が回ってくる。


 今度はオレの、ウチのターンだぜ……!



<あとがき>

いつも読んでいただいてありがとうございます

次回更新は3月18日(水)の予定です

よろしくお願いします

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