【第7話 私の領土が空に浮かび始めた】
アクアリシア連邦(仮称)の湖畔は、朝から人で溢れかえっていた。
難民、商人、冒険者、元帝国の兵士までが、
「水が無限に出る」「安全」「聖女様が優しい」と噂を聞きつけて殺到。
リシアは塔のバルコニーで、ぼーっと下を見下ろしていた。
「……人口、急に三千人くらい増えてない?」
アーテリアが優雅に紅茶(水で作った)を運んでくる。
「ご主人様、領民が増えるのは喜ばしいことですよ♡
今はまだ湖畔のテント村ですが、塔の機能で街を建設できます」
ミレーヌも尾びれをパタパタさせながら(今は足だけど)。
「湖底の遺跡から建材も無限に出せます。
ご主人様の理想の街、すぐに作れますよ♡」
リシアはため息。
「街とか……めんどくさ……」
そのとき、塔が軽く振動した。
『ご主人様、お知らせです。
湖底深部から、新たな遺跡が浮上中。
名称:天空水城。
起動条件:ご主人様の魔力認証……完了♡』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
湖の中央で、水が渦を巻き始めた。
今度は塔じゃなくて、巨大な水の塊が上昇。
水が剥がれ落ち、中から現れたのは——
白と青を基調にした、浮遊する巨大な城!
城壁は水晶のように透き通っていて、
内部に庭園、噴水、宮殿が浮かんでいる。
城全体がゆっくりと湖面から離れ、空に浮かび上がっていく。
高さは三百メートル以上。
底面には巨大な水の渦が回転し、推進力になっているらしい。
周囲の難民たちが一斉に叫ぶ。
「空に……城が!?」
「神の都だ!!」
「聖女様の力、すげぇぇ!!」
リシアは口をぽかんと開けた。
「……私の領土が、空に浮かび始めたんだけど」
塔の声が嬉しそうに。
『天空水城、完全起動。
高度調整可能、移動速度マッハ0.5(音速の半分)。
武装:水の砲台三百門、津波発生装置、気象操作ドーム。
ご主人様専用スイートルーム完備♡ 今すぐお引っ越ししますか?』
アーテリアとミレーヌが目を輝かせる。
「ご主人様! これで領地は空の上! 敵は絶対に攻められないです♡」
「しかも景色最高です! 一緒に住みましょう♡」
リシアは頭を抱えた。
「引っ越しとか……荷物ないし……
ていうか、空に浮かぶ街って、どうやって水汲むの?
いや、水無限に出るからいいか……」
下では難民たちが土下座合唱。
「聖女様! 私たちも空の街に連れてってくださーい!!」
「領民にしてください!! 税金いくらでも払います!!」
塔の声が淡々と。
『領民申請、受付開始。
現在の空き部屋数:無限(水で拡張可能)。
ご主人様、許可しますか?』
リシアはしばらく考えて、
「……まあ、いいよ。
でも、勝手に戦争とかしないでね。
あと、みんなで温泉入って仲良くして」
その瞬間、空の城から虹色の光が降り注ぎ、
湖畔の全員を優しく包んだ。
難民たちは歓喜の声を上げ、
商人たちは「空の交易都市! 金になる!」と目を輝かせ、
元帝国兵たちは「もう帝国に戻れねぇ……」と諦めの境地。
こうして、アクアリシア連邦は
地上の湖+空の城という、
史上最強(?)の浮遊国家となった。
もちろん本人は、
「とりあえず、今日の昼寝場所決まった……」と満足げ。
第7話 終わり。
【次回予告】
空の城に引っ越したリシア。
しかし、浮遊国家の噂は大陸中に広がり、
今度は「神託の勇者」がやってくる!?
「この城は神のものだ! 明け渡せ!」
リシア「え、めんどくさい……ちょっと雨降らせる?」
第8話『勇者様、湖に落ちてびしょ濡れになる』




