【第5話 人魚姫「私もご主人様のもの♡」って言い出した】
塔の基部に開いた階段を、リシアは渋々降りていった。
後ろからアーテリアがぴったりくっついてくる。
「ご主人様、危険かもしれません。私が先に行きますね」
「いや、別にいいよ……ってか、塔が『安全です♡』って言ってるし」
確かに、塔の声が頭の中に直接響く。
『ご主人様、ご来塔ありがとうございます。最深部へお連れします。エスコートモード発動♡』
階段の壁から水の膜が張られ、滑り台みたいにスルスルと二人を下層へ運んでいく。
「……便利っちゃ便利だけど、なんか恥ずかしい」
最深部に到着すると、そこは巨大な円形の部屋だった。
中央に、水晶のような棺が浮いている。
中には、長い青い髪の少女が眠っていた。
下半身は魚の尾びれ——典型的な人魚だ。
年齢はリシアより少し上くらい。
胸元が大胆で、寝顔がめちゃくちゃ綺麗。
「……また美少女かよ」
リシアが呟くと、水晶の棺が静かに開いた。
人魚の少女がゆっくりと目を開ける。
深い海のような瞳が、リシアをまっすぐ捉えた。
「……あなたが、私の封印を解いた人?」
声は鈴のように澄んでいる。
リシアは手を振った。
「まあ、間接的にね。ごめん、勝手に起こしちゃって」
少女は棺から抜け出し、尾びれが光に包まれて人間の足に変わる。
裸足で床に立ち、リシアの前まで歩み寄る。
「私はミレーヌ。この塔の副管理者——かつて『湖の姫』と呼ばれた者」
ミレーヌは優雅にお辞儀をした。
「千年ぶりの目覚めをありがとう。そして——」
突然、ミレーヌがリシアの手を取って、自分の胸に押し当てた。
「私のすべてを、あなたに捧げます。ご主人様♡」
「ちょ、ちょっと!? 離して!?」
リシアが慌てて手を引く。
アーテリアが横でニコニコ。
「ご主人様のハーレムが増えましたね。嬉しいです♡」
「ハーレムって言うな!!」
塔の声が響く。
『副管理者ミレーヌ、認証完了。ご主人様への忠誠度100%確認。
これより塔の全権限はご主人様と共有されます♡』
ミレーヌは頬を染めて微笑んだ。
「ご主人様が望むなら、この湖を海に変えることもできます。
大陸を水没させることも、たった一言で」
「いやいや、そんなスケールデカすぎ!!」
そのとき、塔全体が軽く揺れた。
外の様子が、壁に水のスクリーンとして映し出される。
湖畔はもう大騒ぎだった。
・ドライア王国の王女が土下座している
・インプライア帝国の軍勢が湖を包囲し始めている
・さっきのびしょ濡れ皇帝が、別働隊を連れて再来襲
・さらに、砂漠の向こうから謎の黒マント集団(闇ギルド?)が接近中
塔の声が冷静に報告。
『外部勢力、合計五カ国相当。総兵力約三万。
ご主人様、排除しますか? 推奨:生体水分一瞬蒸発モード♡』
「やめろって!!」
リシアは頭を抱えた。
ミレーヌが優しく肩に手を置く。
「ご主人様、お疲れですね。まずは休みましょう。
私がマッサージします。どこでも、好きなだけ♡」
アーテリアも負けじと。
「私もお手伝いします。全身水流マッサージ、気持ちいいですよ♡」
「……私、ただ水飲みたかっただけなのに……」
湖畔の喧騒はますます大きくなり、
新たなる美少女二人を従えたリシアの、
のんびり(?)世界破壊生活は加速していく。
第5話 終わり。
【次回予告】
五カ国の連合軍が「湖と塔をよこせ!」と迫る!
リシア「めんどくさいから、ちょっと津波起こす?」
アーテリア&ミレーヌ「ご主人様の命令なら喜んで♡」
第6話『連合軍、湖を見るなり撤退を決意する』
乞うご期待!




