【第4話 塔が「ご主人様大好きです」って言い始めた】
湖の中央にそびえ立つ黒い塔は、まるで生き物のようにゆっくりと息づいていた。
高さ百メートルを超えるその巨体は、古代の石材でできていて、表面に刻まれた文字が青く輝いている。
リシアは湖畔からそれを見つめ、首を傾げた。
「……え、何これ。でっかいお城?」
アーテリアが静かに説明した。
「『水禍の塔』……古代文明が作った究極の水制御兵器です。封印されていたものが、ご主人様の魔力で目覚めたんですよ」
塔の頂上から、再び機械的な女性の声が響いた。
『確認。主たるリシア=アクアリット。私の全機能を捧げます。ご主人様♡』
「…………は?」
リシアの顔が引きつる。
塔の声は続けた。
『愛情モード:オン。ご主人様の命令を最優先。世界の水を操り、敵を滅ぼします。ご主人様大好きです♡』
「大好きって言うなああああ!! 塔が!!」
リシアは頭を抱えて叫んだ。
周囲にいた人々——皇帝の残党、商人、冒険者たち——は全員固まっていた。
皇帝はびしょ濡れのまま震えながら呟く。
「……古代の魔導兵器が……小娘に媚びを売っている……?」
塔の声は無視して続けた。
『機能一覧を開示します。
第一機能:水脈制御——大陸全土の地下水を自在に操る。
第二機能:気象操作——雨雲を呼び、洪水や干ばつを起こす。
第三機能:高圧水砲——圧縮水レーザーで山を削る。
第四機能:生体水分干渉——敵の体内の水を操り、沸騰させる。
……追加機能:ご主人様専用リラクゼーションモード。湖畔温泉生成中♡』
突然、湖の縁が泡立ち、温かい湯気が立ち上った。
「温泉……?」
リシアが近づくと、確かに熱いお湯が湧き出している。
「……へぇ、いいかも」
彼女はつい足を浸した。
「あ、気持ちいい……」
アーテリアがにこにこ。
「ご主人様、塔も私も、あなたのためなら何でもしますよ」
そのとき、遠くから馬の群れの音が聞こえてきた。
「使節団だ! 近隣諸国から!」
商人たちがざわつく。
まず最初に到着したのは、小国「ドライア王国」の王女だった。
金髪の美少女で、馬車から降りるとリシアに駆け寄る。
「あなたが湖を生みし聖女様! わが国は水不足で滅びかけています! どうか、塔の力で助けてください!」
「え、塔の力? 私知らないよ……」
次に、大国「インプライア帝国」(さっきの皇帝とは別の帝国)の大使が来た。
厳つい男で、騎士団を引き連れている。
「この湖と塔は戦略的要衝だ。我が帝国が管理する! 抵抗するなら戦争だ!」
皇帝(びしょ濡れ)が慌てて叫ぶ。
「待て! この湖は我が帝国のものだぞ!」
カオスが加速する。
リシアは温泉に浸かりながらため息。
「……めんどくさい」
塔の声が響いた。
『ご主人様、敵対者を排除しますか? 生体水分干渉、準備中♡』
「やめろ!! 沸騰させるな!!」
使節団たちが青ざめる。
そのとき、塔の内部から低い振動が伝わってきた。
ゴゴゴゴゴ……
アーテリアの表情が固くなる。
「……塔の最深部……“もう一人の支配者”が目覚めかけています」
塔の基部が開き、暗い階段が現れた。
中から、かすかな光と……少女の声が聞こえてきた。
「…………誰……? 私の封印を解いたのは……?」
リシアは温泉から立ち上がった。
「……また美少女? マジで?」
塔の深部から、新たな波乱の予感が漂う。
第4話 終わり。
【次回予告】
塔の最深部に眠っていたのは、人魚の姫君!?
「ご主人様のハーレムが増えましたね♡」
諸国が本格的に動き出し、リシアの周りは大混戦。
でも本人は「温泉入って寝たい」モード。
第5話『人魚姫「私もご主人様のもの♡」って言い出した』
お楽しみに!




