冒険者になる 06
翌朝。窓から差し込む柔らかな光で目を覚ますと、部屋の木の香りと温かな匂いが漂っていた。
階下に降りると、おばちゃんが笑顔で皿を並べてくれる。
「おはよう。今日はパンとスープ、それから鶏肉の燻製だよ」
テーブルに並んだのは、こんがり焼かれたパンと野菜の入ったスープ。三人で食べ始めたとき、外から甲高いニワトリの鳴き声が響いてきた。
「……え?」伊緒がスプーンを止めて、目を丸くする。
「どうしたの?」私が首をかしげると、伊緒は小さく笑った。
「いまの……ニワトリ? 初めて聞いたんだよね〜。思ったよりにぎやかな声なんだね〜」
伊緒の表情は驚きと少しの嬉しさが混ざっていて、私と未紀は顔を見合わせて微笑んだ。
朝食を済ませ、冒険者ギルドへ向かう。
通りには商人たちの声が飛び交い、焼きたてのパンの香りが漂っている。剣や槍を背負った冒険者たちが忙しそうに行き交っていて、街全体が朝から活気にあふれていた。
「みんな、朝から元気だね〜」
「暗くなると危険だからでしょうね。日中に動くのが基本なんですかね」未紀が落ち着いた声で説明する。
ギルドの扉を開けると、昨日の受付嬢がにこやかに迎えてくれた。
「おはようございます。今日は依頼を受けに来たんですね?」
「はい。初心者でもできるものをお願いします」未紀が代表して答える。
差し出された依頼書には「薬草採取」と書かれていた。
「街の近くの林で採れる薬草です。危険度は低いので、初心者にお勧めの依頼ですよ」
三人で顔を見合わせる。
「いいじゃん! 私たちでもできそうだね!」
「うん〜。なんだか遠足みたいで楽しそう〜」
「では、この依頼にしましょう」未紀が頷いた。
依頼を受けた後、三人で街の商店を回ることにした。
「薬草、どうやって持って帰る?」
「確かに……袋とか持ってないですね」未紀が真剣に考える。
そこで雑貨屋に立ち寄り、リュックやポーチを見比べた。
棚には色とりどりの布製バッグが並んでおり、思わずテンションが上がる。
棚いっぱいに並んだ鞄を前に、私と伊緒は「どれがいいかな〜」と迷っていたが、未紀が一歩前に出た。
「私が大きなリュックを持ちます。私は攻撃できないので、二人は動きやすいものを選んでください」
そう言って、未紀は水色の大きめのリュックを手に取った。
「じゃあ、私はこれにする!」
私は赤いポーチを腰に当てて、にやっと笑う。
「どう? めっちゃ冒険者っぽくない?」
伊緒は黄色の小さめのリュックを背負って、くるっと回った。
「軽いし、これなら走っても邪魔にならないね〜」
「これで準備完了だね!」