閑話 未紀の休日
その日はアンナに誘われて、街の中心にあるアクセサリーショップを訪れた。
扉を開けると、ガラス棚の中に煌めく宝石や、壁際に整然と並ぶ装飾品が目に飛び込んでくる。
「わぁ……きれいですね」
未紀が思わず声を漏らすと、アンナは微笑んだ。
「でしょう? 私もよく眺めに来るんです。冒険帰りの女性たちが立ち寄るお店なんですよ」
棚をひとつひとつ見て回る。
金の細工をあしらった髪飾り、繊細な模様の指輪、透明な石を埋め込んだネックレス……。
どれも洗練されていて、光の角度によって表情を変える。
「これ、夏那さんに似合いそうですね」
小さな紅い宝石をあしらった髪留めを指さすと、アンナが楽しそうにうなずく。
「確かに。伊緒さんには、こちらの軽やかな鈴付きのイヤリングなんて良さそう」
二人で顔を見合わせて笑った。
未紀自身も心を引かれる品はあったが、財布の中身を思い出し、そっと手を離した。
「……いつか、買えるようになりたいですね」
「ええ、その時がきっと来ますよ」
お店を出ると、甘い香りに足が止まった。
露店でクレープのような生地に果物とクリームを包んだ菓子が売られている。
「せっかくだから、食べていきましょうか」
「はい!」
二人は並んで腰掛け、焼きたてのお菓子を頬張った。
外はもちもちで、甘酸っぱい果物の汁がじゅわりと口に広がる。
「……おいしいです」
「でしょう? ここ、私のお気に入りなんです」
顔を見合わせて微笑み合い、二人でゆっくり食べ終えた。
その後、帰り道の店で小さなお菓子を包んでもらった。
「これ、夏那さんと伊緒さんに」
「ふふ、喜びそうですね」
そう言って、未紀は包みを大事に抱えた。
その足取りは軽く、どこか弾んでいた。




