C級昇格依頼 06
街へ戻った私たちは、冒険者ギルドへ直行した。
扉を押し開けると、昼下がりの喧騒の中でアンナが気づき、ぱっと笑顔を見せる。
「おかえりなさい! 依頼は無事に終わりましたか?」
「はい。ダークスパイダーの群れを討伐して、ボスの魔石も持ち帰りました」
未紀が答えると、周囲の冒険者たちがざわめいた。
机の上に並べられた魔石の数々、そしてひときわ大きく輝く紫色の魔石を見て、アンナの顔が驚きに染まる。
「これ……B級相当ですよ!? C級の依頼の範囲を超えています」
すぐに他の職員も集まり、鑑定を済ませた。ざわざわとした空気の中で、アンナは小さく息をつき、そして真剣な表情になった。
「よく無事に戻ってきましたね……でも、無謀すぎます。危ないと思ったら必ず退くこと。索敵は怠らないこと。一人が怪我をすれば、三人とも命を落とす可能性が高まりますから」
厳しい言葉に、私たちは肩を落とす。けれど、その後に続いた言葉は柔らかだった。
「……それでも、本当によく頑張りました。依頼達成、そしてC級昇格です。おめでとうございます!」
「やったぁ~!」
「やった!」
「……ありがとうございます」
三人の声が重なり、達成感が胸を満たしていった。
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その夜。
私たちは街の小さな食堂に集まっていた。アンナも一緒だ。
「C級昇格のお祝いですよ!」と彼女が笑顔で杯を掲げると、私たちも自然に笑みを浮かべて乾杯した。
焼きたてのパンに肉の煮込み、香草を効かせたスープ。温かな料理が次々に運ばれ、胃袋だけでなく心まで満たされていく。
「でも~、本当に死ぬかと思ったよね~」
伊緒がスプーンを持ちながら苦笑する。
「うん。でも……それ以上に、二人を失う方が怖かった」
夏那が真剣に言う。
「だから、もっと強くならないとって思った」
未紀もこくりとうなずく。
「鍛錬を重ねれば、危険を減らせます。三人で生き延びるために、もっと努力しましょう」
静かに交わされた決意の言葉。
しばしの沈黙が落ちたが、アンナがふっと表情を和らげた。
「ところで、せっかく昇格したんですし、もっと街の楽しみも知ってほしいですね」
アンナが微笑むと、伊緒がぱっと身を乗り出す。
「楽しみ? なになに~? おいしいお店とかあるの?」
「ええ。ギルド近くに《月明かり亭》っていう小さなレストランがあって、そこはチーズ料理が絶品なんです」
「チーズ!? 絶対行きたい~!」伊緒が目を輝かせる。
夏那も身を乗り出す。
「他には? 戦うのも楽しいけど……やっぱり遊びたいなぁ」
「なら、吟遊詩人の公演なんてどうです? 夜になると広場で音楽や物語を披露してくれるんですよ」
「吟遊詩人……いいですね。休養を兼ねて聞いてみたいです」未紀が静かに笑う。
さらにアンナは、首元の小さなペンダントを指で示した。
「あと、街には可愛いアクセサリー屋さんも多いんです。これは《フェリス工房》のものなんですよ」
「わぁ~、きれい!」伊緒が身を乗り出す。
「アクセサリーかぁ……私、髪飾りが欲しいな」夏那が頬を染める。
「……私も、指輪をひとつくらい欲しいかもしれません」
未紀が小さく呟くと、みんなで笑い合った。
冒険の緊張から解き放たれたひととき。
美味しい料理と、街での小さな楽しみを分かち合う会話が、夜更けまで続いていった。
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この話で第一章は終了です。
今後は閑話をいくつか挟んでから、第二章を投稿していく予定です。
第一章は「見せ場までだれたくない」と思って短くまとめましたが、その分、少し駆け足になってしまったかもしれません。
第二章ではこの反省を活かし、日常の描写をもう少し広げていきたいと思っています。
これからも読んでいただけると嬉しいです。




