C級昇格依頼 04
全身が光に包まれた瞬間、私の体は嘘のように軽くなった。
手足の感覚が研ぎ澄まされ、指先の一本一本まで意識が通る。
地に縫いとめられていた重さが消え、代わりに「動きたい」という衝動が全身を駆け巡った。
――動ける。
――まだ、もっと動ける!
「はぁっ!」
爆発するような加速。空気を裂いて、一瞬で二人のそばに到達する。
渾身の力で糸を払うと、硬いはずの蜘蛛の糸が紙のように弾け飛んだ。
次の瞬間、背後から巨大な脚が振り下ろされてきた。
私は反射的に地を蹴る――いや、それだけじゃない。空中でさらに、空を踏んだ。
あり得ないはずの一歩を、私は自然に踏み出せた。
足先に力を込め、蹴り上げる。
分厚い甲殻がひしゃげ、巨体が宙に浮いた。
そのまま跳び上がり、今度はトンファーを両手に握りしめて振り下ろす。
――ドガァッ!
蜘蛛の体が地面に叩きつけられる。
休む間もなく空中を蹴り、反対側へ。
背に回り込んで、トンファーを回転させながら連撃を叩き込む。
骨が砕けるような衝撃音が、次々と響き渡った。
速い。自分でも驚くほどだ。
殴って、蹴って、回って、また殴る。
私の動きは止まらず、蜘蛛はただ揺さぶられるままになっている。
前の《身体操作》の頃も、私はよく戦えていた。
漫画で見た格闘や武術の動きを真似して、体で再現できるようになった時は、それだけで夢中になれた。
でも、それは所詮「模倣」だった。
今は違う。
考えた瞬間、体が勝手に動く。蹴る角度、トンファーを回す軌道、全てが頭に浮かぶより先に形になっていた。
――これは誰かの真似じゃない、私だけの舞だ。
再び蜘蛛が脚を振り下ろしてくる。
私は宙を蹴って反転し、空中で一回転してからトンファーを叩き込んだ。
力任せではない。軽やかで、楽しさに任せた一撃。
蜘蛛は大地に崩れ落ち、脚を痙攣させる。
その姿を見下ろしながら、私は息を荒げた。
――自由に動ける。
――私は、もう止まらない。
ユニークスキル《飛躍遊演》。
それは、体を動かせる喜びそのものを武器に変える、私だけの舞台だった。




