冒険者になる 09
翌朝、私たちは冒険者ギルドへ向かった。
受付にはいつものアンナがいて、にこやかに迎えてくれる。
「おはようございます。昨日は武器を買う予定って聞きましたけど、調子はどうです?」
「無事に買えたんですが、実はまだちゃんと使えてなくて……」
未紀が少し恥ずかしそうに答える。
「できれば練習してみたいんですけど、どこか場所はありますか?」
アンナは顎に指を当てて考え、すぐに笑顔を見せた。
「それなら、ギルドの横に小さな広場がありますよ。新人の練習に使う場所だから、自由にどうぞ」
「ありがとうございます!」
広場は木柵に囲まれた空間で、土が踏み固められ、所々に木製の人形や標的が置かれていた。私たちは自然と胸が高鳴る。
「よし、じゃあ試してみよっか!」
夏那が一歩前に出て、手にしたトンファーを構えた。
銀色のトンファーは、思っていた以上に手に馴染む。試しに軽く回してみると、手首を返すたびに滑らかに回転し、そのまま腕の延長のように動いた。
「うわっすごい! 思った通りに動く!」
体を回転させながら標的に打ち込むと、乾いた音が響く。くるくると身体を回しては殴り、踏み込みながら連撃を繰り出す。力任せではなく、回転の勢いを乗せる分、自然に攻撃が繋がっていく。
「はぁ、はぁ、すごくしっくりくる。これなら、戦えそう!」
夏那の顔は汗で光っていたが、その瞳は喜びに満ちていた。
「次は私ね~」
伊緒がワンドを片手に持ち、軽く振ってみせた。輪が揺れ、シャリンと音が響く。
「音魔法を乗せてみるね~」
彼女がワンドを下に振り下ろすと、鈴の音が地面に広がるように響いた。瞬間、周囲の空間の反響が耳に飛び込んでくる。
「わっ すごい~! 遠くの位置も分かる……木の人形の細かい形も分かるよ!」
音の反射を掴むことで、目で見る以上に物の配置が理解できるようになっていた。
次に彼女は標的に向かってワンドを突き出す。鈴が鳴り響くと同時に、鋭い音の衝撃が前へと走った。
「えいっ!」
音が集中して木人形を叩きつけ、乾いた衝撃音を響かせる。
「わぁ~! 音撃みたい~! これなら喉を酷使しなくても、魔法を飛ばせる!」
伊緒は楽しそうにくるくる回り、シャリンシャリンと音を響かせながら的を次々と叩いていった。
最後に未紀がロッドを手に立った。
木製で軽く、手に馴染む杖を握り、彼女は深呼吸して構える。
「……軽いので、振りやすいですね」
未紀はロッドを振り下ろす。軽さのおかげで軌道が素直に伸び、突きや払いも自然に繋がる。次に横へ払うと、空気を切る音がして、手応えはしっかりしていた。
そして彼女は目を閉じ、静かに聖魔法を唱える。
「――《バリア》」
ロッドの先端が淡い光を放ち、彼女の前に半透明の防壁が展開される。光が杖を媒介にすることで、前回より輪郭がくっきりと安定していた。
「効果が高まっているのが分かります」
彼女は驚いたように小さく息を漏らす。
「すごい! 武器と魔法がぴったり合ってるんだ!」
夏那が目を輝かせる。
「うんうん~、未紀ちゃんにしかできない感じだね~」
伊緒も頷きながら笑った。
未紀はロッドを握り直し、再び突きや払いの動作を繰り返す。軽さと魔法の媒介、両方の特性を確かめながら、少しずつ慣れていった。
それから夕方まで、私たちはそれぞれの武器を試し続けた。
夏那は回転を活かした連撃の動きを磨き、伊緒は音の広がりと集中を切り替える練習を繰り返した。未紀はひたすら突きと払いを反復し、軽さのおかげで振り方が次第に安定していった。
日が傾く頃には全員汗だくで、土の上に座り込んだ。
「ふぅ~疲れたけど楽しい!」
「はい。まだまだ課題はありますが、少し前に進めましたね」
「みんな、武器が似合ってるよ~」
笑い合いながら立ち上がり、宿へと帰る。
こうして、新しい武器との最初の一日は、練習と汗に包まれて終わった。




