冒険者になる 08
アンナと一緒に洋食屋で夕食をとっている時、
明るいランプの下、彼女はワインを片手に、私たちの話を楽しそうに聞いてくれていた。
「へぇ~、薬草採取はすぐに終わったんですね。でも……スライム討伐の方が楽しかったんですか?」
「はい……」私が苦笑して答える。
「せっかくスキルを持っているので、モンスター討伐も挑戦してみたいと思って」
アンナはぱちりと瞬きして、すぐに笑顔を浮かべた。
「討伐したい気持ちは分かりますが、安全には十分に気を付けてくださいね。それと、これから討伐をメインにしていくなら装備を整えたほうがいいかもしれませんね。明日、鍛冶屋さんを紹介しますよ。《ヘルマン鍛冶店》っていうんですけど、品揃えが多くて変わった武器も置いてあるんです」
「変わった武器?」
夏那が目を輝かせると、アンナは声を立てて笑った。
「ええ。売れ残りも多いみたいですけど、だからこそ面白いものが見つかるかもしれないですよ。」
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そうして翌日、私たちはその鍛冶店を訪れることになった。
朝の通りは賑やかで、行商人の声や荷車の音が響き渡っている。昨日よりも少し気持ちが落ち着いてきたのか、私たちは周囲の景色を楽しむ余裕が出てきていた。
石造りの立派な建物の前に着くと、鉄製の看板に大きく《ヘルマン鍛冶店》と刻まれている。扉を押し開けると、炉の熱と鉄の匂いがどっと押し寄せた。
「いらっしゃい」
カウンターから出てきたのは、体格のいい男だった。顔は強面だが、声は意外に柔らかい。
「冒険者か?」
「はい、昨日登録したばかりです」未紀が答えると、男はうなずいた。
「なら、どんな武器を探してる?」
「えっと……」夏那が真っ先に手を挙げる。
「私は体を動かすのが得意だから、回転しながら打撃を与えられるような武器が欲しいんです」
「ほう……なるほどな」
店主は少し考えてから、棚の奥から銀色に輝く金属製の棒を取り出した。
「これは《トンファー》って武器だ。回転させて打ち込むのに向いてるが……珍しすぎて、誰も欲しがらなくてな」
夏那が手に取ると、自然に体が動いて軽々と回してしまった。
「わっ、これすごくしっくりくる!」
未紀と伊緒が驚きながら見守る。
「ふむ、やっぱりお嬢ちゃんには合ってるみたいだな」
「私は……音を使うのが得意で。だから音が鳴る武器がいいなぁ~」
伊緒が頬に手を当てると、店主は「音?」と眉をひそめた。
そして奥から小ぶりな杖を持ってきた。白と金を基調とした洋風のデザインで、先端には小さな輪がいくつも取り付けられている。振ると、シャリンと澄んだ音が響いた。
「これは……錫杖みたいな形ですね。確かに音が鳴りそうです。」未紀が冷静に分析する。
伊緒は目を輝かせて抱きしめる。
「わぁ~! これなら私にぴったり~! 振るだけで楽しいし!」
最後に未紀が口を開いた。
「私は魔法が主なので、攻撃は最低限で構いません。軽く扱えるものがあれば」
店主は壁際の棚から、細身で軽そうな木製の杖を取り出した。先端はやや湾曲していて、余計な装飾のない質素な造りだ。
「魔法を使うなら《ロッド》だ。軽いから扱いやすいし、一応攻撃もできる。護身用には悪くないな」
未紀は試しに構え、ロッドを振ってみる
「……ちょうど良いですね。これにします」
こうして三人とも、珍しい武器を手に取った。
「どれも売れ残りでな。だが、目利き次第じゃ宝にもなる。まとめて銀貨二十枚でどうだ?」
大金だ。手持ちの銀貨を確認しながら、私たちは顔を見合わせる。けれども、今後のことを考えれば、必要な投資だとすぐに納得できた。
「はい、お願いします」
金貨二枚を支払い、新しい武器を抱えて店を出る。
「いやぁ、良い買い物したね!」
夏那はトンファーを軽く回しながら笑う。
「私のは音が鳴るし~、振ってるだけで楽しい~」
伊緒はワンドを振ってシャリンと音を響かせる。
「私はこれで最低限の身を守れます。これで討伐依頼にも挑戦できますね」
未紀がロッドをつきながら、真面目な顔で言った。
こうして三人の手には、それぞれの個性に合った武器が光っていた。




