始まり
前書きと言っても何も書くことないんですけどこれが処女作です。一話目書きますよろしくお願いします。
ザーザーとラジオの電波が悪い時みたいに記憶から流れる
「あんたなんか!!あんたなんか!!」
「生まなきゃよかった」
何回聞いたことがあるだろうか。母さんはどうやら俺を生んだのを後悔しているらしい、
それはそうだ。こんな出来損ない、母さんの期待に応えることができない人間。
なんで僕なんか生まれてきたんだろう、、、僕がいなくなったら母さん喜んでくれるかな?
きっと喜んでくれると思う。この人生いっぱい母さんに迷惑をかけた、もう終わりにした方がいいだろう。そう思い、今病院の屋上にいる。この前熱中症で倒れてしまい入院中のところだ、看護師さんに外の空気を浴びに行くと言いほんとは入ってはいけない屋上に来た。
風が気持ちいい、天気は悪くない、ちょっと雲が懸かっているだけだ、昨日と同じだ、昨日出来なかったことを今する。
そう思い屋上の手すりを跨ぐ。
今まで生きた心地がしない感じがした。今までの人生ってなんだったんだろう。
記憶の中に幸せな思い出が浮かんでこない、浮かんでくるのは母さんが常に僕に対して怒鳴り声をあげてるところ、他の男を家にあげて遊んでいるとこ、借金取りが家に来てひたすら誤っているとこ、昔の記憶が蘇る。
「名前は、、そうだな、、広い海のように心が広く誰かを助ける存在になるような名前、
洋介だ。」
オギャアーと元気な声が病院の部屋の隅から聞こえる。
僕は2010年12月15日に生まれた。その日はちょうど雪がちらほら降り始めた頃だった。
その時母さんが寒くならないように毛布を包んで抱いてくれたのを聞いた。これから楽しい人生になるだろう、みんなが未来に希望を持っていた。
最初はどこにでもいるような暖かい家庭を持った家族だと誰もが見てわかる感じだった、けど僕が4歳くらいだった頃。
小さい頃だから全く記憶がない、けどお父さんとお母さんが喧嘩していたのが覚えている。
僕はわからなくて喧嘩はダメ!と止めた。そしたら母さんは僕に抱きついて泣いてた。父さんは玄関に荷物をまとめて家を出た。
それっきり、父さんは帰ってこなかった、その頃から母さんはちょっとずつおかしくなっていったのかもしれない、いつも家では「あなたはいなくならないでね」と抱きしめてくれた、その頃は母さんの温もりが暖かいと思い嬉しかった。が、しかしそんな時間も束の間だった。保育園から帰ってくると母さんは知らない男の人と家で裸になっていた。お風呂に入るの?と尋ねると母さんは急いで着替えてきて僕を引っ叩いた。当時の僕はわけがわからなくて大泣きした、その日は男の人が帰るまで外にいることになった。そこからだ、お母さんの興味が僕から無くなっていくのが肌で感じだ。母さんの帰りがだんだん遅くなっていった。ある日は深夜、ある日は朝帰ってくるなど、母さんはお仕事が忙しいと言い僕に言い聞かせていた。僕は、母さんは僕のためにお仕事頑張っているんだ。と思って、夜寂しくても我慢してた、一緒に夜ご飯食べる時間がなくなってきたのも我慢した。一緒に布団で寝れない時も我慢した。土日母さんがいない日でも我慢した。一緒に登校することが少なくなってきたのも我慢した。一緒に母さんが迎えにきて手を繋いで帰るのも我慢した。母さんは僕のために頑張っているんだ。と思い我慢してきた、我慢、我慢、我慢、、我慢、、、
ある日突然としてその日は訪れた。
今日は一人で保育園から帰って家に着くとすぐに玄関からガチャリと音がした。
「ママ?ママ!帰ってきたの!」と僕は玄関に駆けつけた。ギィ〜と扉が開く。出てきたのはあの日母さんと裸でいた男の人だった。その後に母さんが出てきた。
「ママおかえり!今日はおりがみつくったんだ!みてこれしゅりけん!ちょっと形よれてるけど、、ママに作ったんだ!」
「あとさ!あとさ、、、」
言っても母さんはこちらに目も向かず隣の男の人と一緒にスタスタとリビングの方へ向かう。母さんが僕に見向きもしないから勇気を出して言った。
「ママ、、その人だれ、、?」
と聞くと母さんは振り向いて僕に数日ぶりに言葉を発した。
「あんたまだいたの?」
「え、、、?」
言葉が出なかった。ショックでいる僕を気にせず
「なぁ今日夜どこ連れてってくれるん」
「今日は高級寿司屋行くわよ。もう予約したから」
「いいじゃん、家寄らなくてもよかったな、今から行こうぜ。」
「よかったぁ〜好みじゃなかったらどうしようかと考えていたわ〜」
「センスあんじゃん。店でまた指名してくれたらサービスしてやるよ」
「わぁ!いいの!ありがとう〜涼君の一番は誰にも渡さないんだから」
と言い家を出ていった。
「ママ行かないで!」
の一言が出なかった。
なんでだろう、なんでだろう、、、
その日はただ茫然として終わった。
次の日からだ。母さんは帰りが極端に少なくなっていった。
最初は寂しかった。
保育園の帰りに保育園の人に聞かれた。
「大丈夫?ママ最近迎えきてないけど、、」
「うん!大丈夫!ママ仕事が忙しいんだ!自分一人で帰れるよ!」
と言っていつも帰り道の方へ駆け出す。
「大丈夫」って言い聞かせるしかなかった。
夜ご飯は作り置きがあった。目玉焼きなど簡単に作れるもの、けどいつしかそれも無くなってきて、カップラーメンなど誰でも作れる食べ物を食べるようになっていた。ある日は夜ご飯食べない日もあった。お金なんてないから。そういう時は空腹感が出た時はお腹を叩いて我慢していた。
そうしているうちにどんどん時間が経ち小学生になった。最初は楽しかった。友達もできて給食もおかわりできて家にいるよりよっぽど楽しかった。夜はたまに友達の家のご飯食べて帰っていた。
そうして時間が過ぎていったある日、友達とお別れをしてから家に向かうとお母さんの車があった。
ママ帰っているんだ!そう思い急いでアパート2階を駆け上がり家の扉を開けた。すると怒鳴り声が聞こえた。知らない男の人の声だ。お母さんはその人に向けて正座をして頭を下げていた。僕は母さんがいじめられてると思い、男に向かって体あたりをした
「母さんをいじめないで!」
男はびくりともしなかった、まるで学校の壁に体当たりしているみたいな、そんな感覚で、僕は後ろに後退してしまった。
何かにぶつかったと思った男は僕の方を向いてきた。すると呆れた表情で男は母さんに言ったんだ。
「お前こんな姿子供に見せてええんか?」
と言い頭を掻く男
「、、、はぁぁ、、お前さんがうちらにちゃんとお金返してくれればこんなことしないんだけどなぁ」
「本当に申し訳ありません、、、、来月にはちゃんと返しますから!絶対に!どうか!今回は見逃してくれませんか、、」
「ったく、、このやりとりは何回目なんだよ!おい!」
と男は椅子を激しく蹴り上げた。
僕は怖くて動けなかった、、母さんがひたすら頭を床につけて謝っているところを見ていることしかできなかった。
「今回は子供の前だからな、特別に見逃してやるよ、来月返さなかったら今度こそ取り立てるからな」
と言い男は出ていった。
男が出て行ってから数秒時間が止まっていた。けどハッと気づいて
僕はすぐ母さんのそばに駆け寄った。
「ママ大丈夫?」
と背中をさすった
お母さんが心配だった。お母さんのことをよくもいじめやがって。僕のお母さんが何をしたっていうんだ。いじめは良くないって先生から教わらなかったのか!と男に対して怒りが込み上げていた。けどあの頃の僕は知らなかった。なんでいじめられているかなんて。
声をかけた瞬間母さんは僕の手を振り解いた。
「うるさい!!!!」
「え?」
「あんたなんか、産まなきゃよかったんだ!」
思考が止まる
「あんたにお金がかかるせいで、私は自由になれないんだよ!」
バチン!!と音がした。僕は頬を叩かれたことに気づくのに数秒かかった。
「なんで、、なんで、、?ママどうしちゃったの、、?」
そうだ、ママはあの男のせいでおかしくなっているんだ。あの男がなんか言ったから、と思った。思いたかった。その思考が入る前にママ既に壊れてた。
「あんたのせいで、、そうだあんたのせいだ。全部!私がこんな目にあっているのも全部!
あんたのせいだ!」
と言いもう一度叩いた。
「やめて!ママ!ごめんなさい。僕いい子にするから!」
「全部、、全部!お前なんか産んだせいで、、」
この日の夜は母さんの気が済むまで何度も叩かれた。お母さんに手を出されたのは生まれて初めてだった気がする。
次の日になったらあざだらけになっていた。学校ではどうしたの?大丈夫?と聞かれたが、笑顔で誤魔化した。
その日からだ。母さんは僕を叩くようになった。前まで怒ることはなかったのに、些細なことで怒るようになった。だから僕は母さんが怒らないように慎重になった。母さんが家に帰ってくる前に家を綺麗に掃除したり、夜ご飯も図書室の本を借りて勉強した。だから自分で作って母さんを喜ばせようとした。最初はオムライスを作った。見た目がぐちゃぐちゃになっているのを覚えている。頑張って作ったんだ。母さんも喜んでくれるはず、と思い
「ママ!これ自分で作れたんだよ!食べてみてよ!」
と言うと母さんは一口食べてくれた。食べてくれたことに僕は嬉しかった!けどそれも束の間、母さんは一口食べた後生ゴミにオムライスを捨てた。
ショックだった。頑張って作ったのに、でも一口食べてくれただけでも嬉しかった。だから頑張った。母さんの好みを作れるように、何度も試行錯誤してみた。何度も作って振る舞っていくうちに母さんも二口三口と食べる回数が増えてるのがわかった。この調子で頑張ってまた一緒に食べたいな。そう思っていた矢先、
いつものように家でお母さんの帰りを待っていた。すると、すごい剣幕で帰ってきて僕を叩いてきた。
何度も、僕はやめてと言ったがやめてくれなかった。
なんで叩かれてるかわからなかったが教えてくれた。
どうやら僕にお金がかかるらしい、私の金で学校に行かせてる恩を返せと、
僕は何も言い返せず、ずっとごめんなさいを言うばかりだった。そして最後に僕が作ったご飯を投げつけられた。オムライスだった。最初に作った。今度は上手にできたと思って楽しみにしていたオムライスだった。その瞬間分かった。あぁ母さんは僕のこと愛してないんだ、、、
その出来事以来僕は感情がおかしくなった。喜びがわからなくなった。いつも母さんを怒らせないためにはなど考えていた。哀しみもわからない。母さんに怒られるのが当たり前になっていたから。楽しみがわからない。母さんに褒めてもらったりご褒美をもらったりされた記憶がないから。怒りがわからない。反抗したことがないから。怒られてばかりでいつも謝っていた。気づけば僕は感情がわからなくなっていた。何に対しても、わかりました。やごめんなさいが口癖になっていた。そのせいなのか学校でもいじめられるようになった。でも母さんに怒られることと比べると大したことはなかった。
懐かしい記憶。
もう思い出すこともない記憶。何故今思い出したのかはわからない、けど僕はいらない存在だった。
もう楽になる。
下を見る、
これくらいの高さだったら余裕で楽になれるだろう。
屋上の端に足を乗っける、
もう疲れた、、、これで終わるんだ、
そして足から飛び降りた。
飛び降りた瞬間目の前が真っ暗闇になる。
あぁ、終わったのか、と心の中で思う。
すると右手から強い衝撃と同時に声が飛んでくる。
「、、、丈夫、、!大丈夫だぞ!」
「今助けてやるからな!ふんっ、、、」
その男の子は僕の右手を掴んで引っ張ろうとしてた。
訳がわからなかった。
なんで、、?何してるんだろうこの人は、なんで僕なんかを助けるんだろう、そんな必死に、、、
もう体が脱力していて体がいうことを聞かない、ずっと彼の手に支えられて病院の真下を眺めている。
「おい!あと少しだから待ってろ、、助けてやるからな、、」
「もうちょっとだ、、あとちょっとだ、、、ふん!!」
と勢いよく引き上げられた。
男は疲れたのか地面に大の字で伸びている、、
見たら自分と同い年くらいの男の子だ。訳がわからなかった。咄嗟に声が出る。
「なん、、で、、なんで助け、、たん、、です、、か、、」
と聞くが彼から返答がすぐには返ってこない。
「なんでって、、ちょっちょっと待って、、一回一呼吸させて、、」
と流石に急かしたのか少し時間を置く。しばらくしてから男の子が重い腰を上げる。
「で、、?なんだっけ?なんで助けたかだっけ、、?」
「、、はい」
「いや、、まぁ、、普通に助けるだろ、、目の前に飛び降りそうな人いたら」
「、、僕は、、死にたかったんです!、、終わりにしたかったんです!、、あなたが邪魔するから、、なんでそれを邪魔するんですか、、、」
と大声を出した。沈黙が流れる、
それはそうだ。
せっかく人を助けたのにその助けられた人が邪魔するなって言うんだから。なんとも言えない気持ちなはずだ。
沈黙の後僕は再び鉄の手すりの方へ向かった
「お前が!!」
と大きな声が聞こえる。
「俺と同じ死にたいって!!!思っているって思ったから!!!」
と彼の足が止まり、こっちを振り返ってくれた。
「やっと目があったな」
と目が合うと彼は安心した表情を見せていた。
「とりあえずこっち来いよ。地べたが痛いけど、、とりま座ろうぜ」
とコンクリートの痛い地面に二人で胡座をして向き合った。
「俺さ、病気なんだ」
と淡々と彼は話す。
「俺さ、どうしても治らない病気にかかっちまって、ほぼ寿命が決まっているもんなんだ。だから今までの俺は一人でどうせ死ぬまでの間、病気で周りに迷惑をかけるくらないならいっそのこと一人で死のうかなって思ってたんだ。」
「でもさ、、ちょっと思ったんだよなぁ、、俺このまま死んでも別に何もならないなーって」
「ただ俺がこの世界からいなくなって、親は悲しむ、、かも、、そうだな、、悲しんでほしいな、、でもただそれだけ、、それだけなんだよなぁ、、って思ってさ、俺、今まで生きてきた中で何をやってきたかなって、、考えたら、、」
と目線を上にあげながら喋る彼。
ちょうど日差しが雲で隠れ彼の顔に影が差し込みよく表情は見えないが僕からは泣くのを我慢しているように見えた。
「.........何もやってないんだよなぁ」
とボソッと言う。
「だから!こんなもん作ってみた!」
と彼は僕の前に一つのノートを出してきた。
「これは、、?」
と不思議に思って尋ねた。
「これは人生終わるまでやりたいことノート!!」
と青いキャンパスノートを出してきた。
「これにさ、俺の死ぬまでにやりたいことを書いていくの」
とノートを開く、そこには何も書いてない真っ白なノートだ
「まぁ、まだなんも思いついてないから何も書いてないけどさ」
とおちゃらけた言い方で話す彼
「このノートに俺が思いつくまでのやりたいこと書きまくって、やりたいことやって、思う存分満足したら!」
と勢い良く言い立ち上がる、そして僕がさっきまでいた鉄棒のところに行き両手を広げて話した。
「思いっきり死のうと思う」
とはっきり言った。
「俺は、人生でやりたいこと全部!全部やり切ってほんとに満足して、やりきったって!そう思えるようになったら飛び降りでも首吊りでも何でも!後悔がないような生き方で死ぬんだ」
すごい清々しい表情をして、もう覚悟を決めている顔をしている。でもそれは僕とは違くて、明るくて、これから何でもできそうな、そんな風に見えた。
「.............いいなぁ」と自然に口から言葉が出ていた。何でそんなに、死ぬことに対して元気でいれるんだろう、、僕も、、どうせ死ぬんだったら、、こんな風に明るくなって、、幸せそうに死にたいな、、
「でさ、同じ死にたがり同士、ここで会ったのも運命だと思うのよ」
とこっちに歩み寄ってきた。
「だから俺と一緒にこのノートを埋めていかないか?」
とノートを差し出してきた。
「え?」
と一瞬戸惑う僕に間髪入れずに彼は僕の顔に頭を近づけて話す。
「このまま!何もしないってのも勿体無いじゃん?人生!もっとこれから色々あるかもしれないし?あと俺一人は流石に寂しいんだよね!!二人だとさ!一人ではできないこといっぱいできるかもだしさ!どう?」
「いや、、僕なんかが、、」
「僕なんかって何だよ!俺は、お前だから誘っているんだよ。ほら名前は?俺は春山槭樹!」
「、、久喜洋介って言います」
「そっか、、じゃあ洋介な!!俺と死にたがり共同戦線!これからよろしくな」
と手を差し伸ばしてくれる。
その手が僕の目には希望の手に見えた。これからの人生、もしかしたら、ほんとにもしかしたら、楽しいことがあるかもしれない、そう思うと手を握る以外考えがなかった、これからどんなことが起きるんだろう。そう考えているうちに手を握り自分の腰を立ち上げた。
そういえばこの目の前にいる春山槭樹はどんな病気なのか気になった、
「春山は、、」
と言うと間髪入れずにまた口を開く
「その春山って呼び方やめよ!せっかく俺ら共同戦線組んだんだから!名前呼びしようぜ」
「わかった、、槭樹はさ、、どんな病気なの、、?」
「んーーーーあーーそれはなー」
と一瞬間が空く
「アルツハイマーっていう病気」
少しでも読んで続きを読みたい人が少しでもいれば嬉しいです。初めてながら書いてみました。頑張って更新できるように投稿します。