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業界の闇(?)の扉

作者: 海堂 岬

「おー、これがヒ素! 」

プラスチック製の透明なバッグを見つめる目からは、好奇心が溢れ出している。

「そうですね。正確には有機ヒ素です。本物の毒物です。抗がん剤です」

苦笑まじりに医者がこたえた。


「殺人事件の定番アイテムですよ。アガサ・クリスティの推理小説とか」

「病院で殺人事件を話題にするなんて」

「作り話ですよ」

「抗がん剤だから、相手殺すのが仕事だから当然なんだろうけど。推理小説のお決まりアイテムを抗がん剤にして人の体に入れようなんて、よく思いついたよね」

感心しているのは、毒物を点滴されている当の本人だ。


「そうですね。きちんと品質管理されていますし、身長体重に合わせて投与量を計算して、臨床試験で副作用は調べてありますから。気をつけて使えば問題ないですよ。多分ね」

「そこで多分って」

「百万人が問題なくても、その次の一人には問題があるかも知れません。それはあなたかもしれない。きっかけが事故という薬もあります。第一次世界大戦のとき、貨物船の事故で積荷の毒ガス兵器の中身が漏れました。積荷の中身を知らなかった船員も町の人も汚染され被害が拡大しました」

「そこから薬が出来るってのがどうにも」


「頭のネジが何本外れてるかなんて想像できませんよ。心臓病のニトログリセリンは爆弾工場の従業員の血圧が低いことで思いついた薬ですし」

「爆弾の材料や毒ガスを薬にするなんて、先生のお仲間大丈夫? 」

「そもそも、ペニシリンはカビ由来です。他にもヘビ毒由来の薬や、金とかプラチナがはいっている薬もあります」


「先生も頭おかしいじゃん」

「私はそういった人たちが作ったものを、ありがたく有効活用しているだけの人です」

「じゃぁ、こういう雑誌にのってる怪しげなサプリって、どう思う先生」

医者は差し出された雑誌に踊る、全てが治るという文字に顔をしかめた。


「殺人事件の定番アイテムを人に点滴する業界です。効果があるなら薬にしますよ。ウサギ、ネズミ、馬由来のものもあります。牛やカツオやブタも使ってますし」

「先生、業界の闇の扉を俺にあけてくれなくていいから」

「根拠はありますよ」

「おーこわ。まぁ、根拠あれば何でも薬にする業界なら、サプリを見逃すわけ無いか。ヒ素点滴するくらいだし」

「アガサ・クリスティ先生にこの光景見せたいですね」

「先生、通報されるよ」

「エルキュール・ポワロ氏が灰色の脳細胞で無実を証明してくれますよ」

短編にお付き合いをいただきありがとうございました。


 夏の暑さに負けました。

「お客様はマジでときどき神様です」の投稿ですが、さらに延期いたします。


 あまりの暑さにホラー作品で涼んでおりましたら、ホラー作品(短編)の構想が降ってきてしまいました。現在、そちらを仕上げて、とあるところに応募予定です。


 ホラーが寒くなるころに、戻って来ることができたらと思っております。

 

 カクヨムから短編を予約投稿で転載しております(月曜日午前7時)。


この先も、お付き合いをいただけましたら幸いです。

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