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呪いの書

 読むとどんな呪われ方をするかわからない危険な本がある。絶対に読むのはやめておいた方がよいとされる。その書物を手に入れるのは、どんな権力者でも不可能だとされる。禁書の第一に挙げられる本。

 その書物一冊で金山が買えるという。ありえないほど高価な本だ。その書物は、どこの図書館にも一冊も所蔵されておらず、その本を手に入れようとした好事家は、命の危険はもちろんのこと、どんな苦しい死に方をするのか覚悟した方がよいという。

 その書物の原著が何語で書かれているのかはっきりしない。有史以来、多くの民族の手を経て書き加えられ続けた本であるので、その書物は統一された言語では書かれていない。そのため、その本を翻訳するのは、妨害がなくても、極めて困難である。まして、最も読むべきではないとされる本なのだから、その本を翻訳しようとする者への妨害は想像を絶するほど激しいものである。

 命を捨てる覚悟、自分に不幸が起こる覚悟をしなければ、その書物を手に入れようとすることはやめておいた方がよい。読まない方がよい本というものはあるのだ。普通の人生を生きる者が読む必要はないのだから、読まなければよい。この禁断の書をみんなが読んだら、世界が変わることもあるかもしれない。しかし、それはあまりにも現実離れした架空の話だ。その本を読まないことで現代社会は成立している。それを崩壊させかねない危険な本である。

 どのような人物なら、その本を読むのか。呪いの書を読むのは、おそらく、武闘派であり、書庫にこもるような読書狂ではない。もし、呪いの書を読んだ読書狂がいたら、その人は武闘派に転向した方がよい。

 その本を翻訳するために、有志三十人の若き学生が人生を賭して、ひとりも成し遂げられなかったという。その後、さらに有志千人の学生を集め、人生を賭して時代をかけて翻訳しようと目指し、ようやく、この国の言語に翻訳する一冊を得たという貴重な本である。値段は金山が買えるほどであり、価値は種族の命運を買えるほどにあり、影響力はその書物を読むこれからの人々に託されている。

 その本がどのような本かというと、「外なる神が敗北した記録」なのだ。この宇宙とは別の法則に従い生きているという、この宇宙の外からやってきた外なる神たち。その神たちは、遥か太古に地上にやってきて、大地の神々を倒したという。その旧支配者たちが敗北した記録を民族の垣根を越えて書き記した書物。それがその呪われた書である。その書物は、外なる神とその下等神族によって抹消されるように狙われ、入手は極めて困難になっている。その書物を手に入れた者はみな不幸になり、その書物を読んだ者はみな発狂するといわれ、その書物を手に入れようと目指しただけでも不幸になるといわれる危険な書物である。

 旧支配者と戦う覚悟がなければ、読もうなどとしない方がよい。恐ろしい本なのだ。内容が確かなものなのか気になる。真作もあれば、偽作も出まわっているだろう。

 その本を私はこれから読むのだ。ついに手に入れた。幸運によってか、不運によってか、私は呪われた書を手に入れた。読んで考えたい。外なる神について。


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