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ジョガレガルト神群

 そこは日本の閑散とした村落であり、家はまばらにしか建っておらず、村人がどんな仕事をして暮らしているのかわからなかった。その村は、農業の村というわけではなく、ほとんどの村人が神官をやっているという宗教都市だった。

 私は非営利法人「文化保存係」の調査官である。人類にとって重要であるのに、滅びようとしている文化を調査して記録し、その文化を存続させることが仕事である。しかし、その村人しか知らないような文化を研究することが果たしてどれくらいの価値があるのか、私は時々、自分の学問に価値を見出せなくなることがある。

 村人たちは私の調査に協力的ではなく、その村の神話を訪ねると、「詳しい話は誰々が知っているよ」と話しをはぐらかし、誰々と教えられた人物を探し出して聞いても、その誰々は村の神話などよくは知らないので、話は誰々から聞いてくれと答えることが何回もくり返された。

 しかし、私は丁寧に調査を続け、その村人たちの神殿を独力で歩きまわって探し出した。村人が村に複数存在する神殿のことを教えたがらないのは、私にはよく伝わってきた。村人からすれば、その村の神話を調査する私は排除したい部外者であるのだろう。その村の神話がどのようなものなのか。村の部外者には教えることができない神話なのか。それを私は突き止めなければならない。

 神殿には、私の身長より高い爬虫類の神像があり、人血を爬虫類の神像に捧げるという供物の習慣を村人は今でも行っているようだった。

 爬虫類の神像は複数あり、爬虫類の神像の一体は「ギャンチャ」という名前の神だということはわかった。私が神殿の神像にたどりついてしまったことを知った村人は、他の爬虫類たちすべてに名前があると私にいった。

 いったいどういう歴史があって、この村で爬虫類の神々が崇拝されるようになったのか、それを私は調べなければならない。村の郷土史資料館を調べたり、神官に質問したりしながら、私は少しずつこの村の神話を調べていった。

 そして、とうとう私は村人に隠されていた「ジョガレガルト祈祷書」を発見したのである。そこには、この村の神話の由来が記録されていた。「ジョガレガルト祈祷書」の成立年代は、シュメール神話よりも、エジプト神話よりも、古い神話であるということが事実であるのだと私は判断しなければならなかった。この国の村になぜそんな古い神話が伝わっているのか。それは文書を読み進めていかなければわからないことであった。

 恐ろしい。恐ろしい。この村の神々は私には良くないものだ。複数の神殿にある爬虫類の神像たち。それは、爬虫類たちの神々なのだ。爬虫類の神々は、人類を守護しない。爬虫類の神々は爬虫類を守護する。

 この村は、爬虫類の神々を崇拝して、それに従っているのだ。なぜだ。なぜだ。私はこの村の神々を調査して、激しい当惑に襲われた。この村は、恐ろしいほど古い時代の信仰を伝えている。どうか、この村が人類の滅亡の原因とはならないことを願う。そのためにはどの神々に祈ればよいのか。人類の神々に祈るのか。それとも、爬虫類の神々に祈るのか。私は、いつか爬虫類の神々に祈るようになってしまうのだろうか。

 私は、この村の神話を書きまとめると、急いでこの村を脱出した。こんな村には居られない。しかし、この村の秘密を知ってしまった私は、爬虫類の神々に狙われるのではないかと、そんな思いにとらわれてしまった。私はこの村を訪れて以来、夜、悪夢を見るようになった。


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