9. 初めて見る外の景色。
ずっと俯いていたくなくて、でもどこへ視線をやっていいのか分からなくて。またバルコニーの方を視線をやろうとしたらイケメンさんに「休みますか?」と言われた。
さっきもお話読んでもらった後横になるか聞かれたけど…そんなに私顔色悪いのかな?
鏡はこの部屋にある。
ずっと見えてた。いかにも高そうな大きな鏡台が。
ベッドの上にずっといて欲しいと言われてから一時間も経ってないけど…
「あの…」
「はい」
「鏡を見に行っても…?」
ダメだって言われるのを覚悟で聞いた。するとイケメンさんは立ち上がり私を軽々と抱き上げた。
っ!またお姫様抱っこだ。
イケメンさんはお姫様抱っこのまま鏡台の前まで連れてってくれた。
そこまで病弱そうに見えるのか…
体の角度を変えて鏡を正面に見た。
鏡に映ったのは紫っぽくも水色っぽくも見える髪。そしてそれと同じ色の目をした私。
…うん。分かってた。髪の色が変わってたのは。
なにかにつけ視界に入ってきて、引っ張ったら痛かったからこれは自分の頭に繋がってるな、って思ってた。
目の色が変わってるのは今初めて知ったけど、”最初の御使様”がそうだったって言ってたし、異世界人はこの色になるのかもしれない。
目の大きさも鼻の形も、全部前の世界の私と変わらないのに、髪と目の色が違うだけなのに、自分で自分を褒めるのもあれだけど、神秘的だなぁと思う。
って、そんなことを見るために来たんじゃない。
「あの、もし私の顔色が悪そうに見えるならこれが私の通常の顔色なので心配しなくて大丈夫ですよ?体調も全然いいし、やっぱり外見にバルコニーに行きたいんですけどダメですか?」
「ダメと言うより…心配なんです」
「じゃあ…抱っこしてください」
私はそう言うと座ったまま手を広げて出した。
イケメンさんは固まったように止まる。
ここまでも抱っこでなら連れてきてくれたし、自分で立って移動しないならいいのかと思ったけど…
やっぱり運べなんて図々しかったかな…
「ごめんなさい、やっぱり嘘です。大丈夫です。我慢します。ベッド戻ります。…って、あれ?」
椅子から立ちあがろうと思って手を下げようとすると下げかけた手を掴まれ一瞬で私はまたイケメンさんにお姫様抱っこされてた。
一人で立ち上がることさえ許されないとは…
イケメンさんの顔を見上げるけど、顔が背けられてよく見えない。
やっぱり怒ってるのかなぁ…
またベッドの上に下ろされるんだろうなぁと思っているとベッドとは違う方へイケメンさんは向かう。バルコニーだ。
既に開かれていた窓から外へ出ると綺麗に手入れされた広い庭園が見えた。その奥にはヨーロッパ風の家がたくさん。”ヨーロッパ風”なだけで私のいた世界のヨーロッパとは違うだろうけど…でも、どっちにしろ…
綺麗…
その言葉につきる景色だった。