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ある日突然、庭に若い娘さんがいた2

同居人が出来て早くも1週間。

ようやくティリミナさんは魔法がない世界を理解してくれた。たぶん。

かわりに電気がある。という理解をされているが、電気でなんでも出来るわけでは無いんだぞ。


「まあ、さすが電気!」

が最近の口癖だ。リスペクト凄い。クルクル踊り出しそうなテンションだ。


「部屋を暖かくしてくれる箱も凄いし、」

「えあこん、だよ」

「食べ物を冷たくしてくれる箱も凄いし」

「れいぞーこ!」

「この遠くの人を映してくれる箱も凄いし」

「てれびのことかな?」

「火を出す箱も凄いわっ」

「こんろは、がすだってコキチがいってた」


どうしよう、ティリミナさんが全部箱で一括りしてる。

それよりも

「ジンクは頭が良いなあ」

良い子良い子と頭をガシガシ撫でると目を細めながらエヘヘと嬉しそうにはにかむ。

かわゆい。

ジンクティルはジンクと呼んで欲しいとのジンク自身からのお願いによりこちらで。



「ティリミナさんもそろそろ落ち着いて。瞬間移動出来る魔法の方が凄いぞ」

「あら、魔法は凄いけど使える物が少ないのですわ。最新の魔道具なんて、150年前に発明されたこの収納指輪ですのよ。でももとは収納鞄だったのを小型化しただけであまり進化ではないのよねぇ。いえ、便利なのだけれど。」

いやー部屋暖かくするより転移とか指輪収納とか本気で凄いんだが。

この1週間、2人はこの世界に慣れるべく色々なものに興味を示した。

2人してノートに書き書きしてる姿は本当に微笑ましかった。


そもそも、ふたりの事情は未だに詳しく聞いていない。聞いても分からなさそうだし。


ただ、立ち居振る舞いや、家事一般が不慣れな様子からきっと良いところのお嬢さんだったのだろうとは思う。

今は少しずつ庶民の生活を覚えているところだ。

異世界のだけど。


掃除、洗濯、炊事。


「服を洗ってくれる箱も凄いですわ〜」

「せんたくき、ぼくもすきー」

我が家のドラム式洗濯機の中でぐるぐる回る服たちを見るのが楽しいらしい。2人してしゃがみこんで見守っている。

洗濯機が回っている時は大抵あそこにいる。


「ピーッとなったら洗濯物を干してくれよー」

「「はーい」」


その間に軽く掃除機をかけておくか。

ゴーっという掃除機の音に最初はビックリしていた2人だが、もう慣れっこだ。

いや、洗濯機に夢中すぎるだけかもしれんが。


「コキチさん、干せましたわ!」

自慢気なティリミナの声に庭へ向かう。

物干し竿にずらりと並ぶ3人の服。

ああ、こういうのなんか良いなあ。

しみじみ感じる1人じゃない感。


「上手に干せてるじゃ無いか。」

その言葉にエヘンと胸を逸らすティリミナさんをみてつい意地悪を言ってしまう。

「最初は酷かったもんなぁ」

「最初の頃のことは忘れてくださいまし!」

「あはは。無理だな。」

酷いですわーと唇を尖らせるティリミナさんをよそに

「コキチ、ぼくもぼくもがんばったよ」

背伸びしながら右手を上げてアピールするジンクティル。かわええ。


「うんうん。ジンクもティリミナさんに服を上手に渡してたもんな。」

「うんっパンパンってできた!」

「おお、それも出来たのか凄いじゃ無いか」

えへんとティリミナさんとそっくりな自慢気な様子に笑みが漏れる。

頭をガシガシ撫でながら褒めるとニコニコのジンクティルが口元に手を当てウフフと笑う。


「えへへーこんどは、ほすのもやる!」

干すのかぁ。届かないなぁ。

「じゃあ明日はハンガーを物干し竿に掛ける担当をしてもらおうかな。出来るか?」

「できる!」

良い子だ。まだまだ軽いジンクティルを抱き上げて右腕に乗せてやれば良い感じに物干し竿の高さだ。

「こうすれば、掛けれるな。上手に掛けれるように頑張ろうな」

「うん!」

そんな、ほのぼの生活を過ごす日々。


今日は午後から麓に買い物に行く予定だ。

ティリミナさん達ははじめての俺以外の現地人との出会い。どうなるかな。


「まあ、まあ、凄い箱がありますわー」

案の定。車に大興奮のティリミナさん。

乗る前からこれだ。

乗ったらどうなるんだろう。動いたらもっと凄そう。ちょっとワクワクする。


結論、黙った。

「かあさま、だいじょうぶ?」

両手を組んでギュッと握りしめてガタガタ震えるティリミナさん。

「だ、だだだだいじょぶよ」

大丈夫ではなさそうだ。

ジェットコースターが怖い人みたいな感じなのかな?

「コキチ、とまる?」

「うーん。少し止めてもいいけど、また進むぞ?」

おそらく車を止めて欲しいのだろうが、こんな山の中で降りてもどうにもならん。

「一度、家に帰って俺だけで買い物してこようか?」

帰りのことも考えると引き返した方がいいかな?

「いく」

「ジンクは行きたいか、ティリミナさんは?」

「がんばります」

「あ、はい。頑張れ」

2人とも買い物には行きたいらしい。

じゃあ、このまま進むぞー。



「異世界こわいですわー」

ようやく踏めた地面にホッとした様子のティリミナさんはしみじみと異世界についての意見を述べる。

転移とかいう怪しい移動方法より怖くは無いと思うのだが。



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