表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/40

第21話 お祭りの準備

 次の日。


 いつものように図書館で調べものをしていた。


 司令官から腕の通信機へ連絡があり、例の白い球体ミサイルが飛んできた。


 今回は中庭でミサイルを待つ。


 飛んできたミサイルは地面にぶつかる寸前、理屈はわからないけど急ブレーキがかかった。ころりと地面にころがる。


 あんなにさわぐ必要はなかったというわけだ。


 球体のなかをあけ、書類を確認する。ぼくのサインの下に、司令官のものと思われるサインがあった。


 マーキング、と呼ばれる拇印ぼいんもあった。半透明な固まったもの。これが司令官のツバなんだろうか。


 そんなこと考えていると、視界のすみに黒服の男を見つけた。


 はいはい、とぼくはスマホを取りだし連絡をする。


「ギャザリング参謀議長、いまぼくに近づいてくる黒服の男」

「ああ、まちがいない。さっさと、わたしてくれ」

「了解しました」


 近づいてきた黒服に書類をわたす。


 なんてことはない、ぼくは書類配送サービス。フェデックスとおなじだ。


 地球の代表というから、つねに気が重くなっていた。でも郵便配達員ならば、ぼくでもつとまる。


 そう考えていたのだが、甘かった!


 書類のやり取りをすればいいと思っていたのだが、そうではない。


 むこうとの話しあいは、すべてぼくがおこなうのだった。


 第一戦がベースボールに決まってから、激務のような毎日がきた。


 試合日時の設定、球場はどこか。そこまでの移動は、異星人でも可能なのか。


 また異星人の選手はどこから会場に入る、いや、相手ベンチに水は必要なのか?


 あらゆることを、ぼくが聞かなければならない。


 解決しなければならないことがあまりに多かったので、途中からウィルたち三人にも手伝ってもらった。


 ウィルの家が、どこかのイベント会社の事務所みたいになった。決まったことを壁に貼る。決まってないこと、思いついたことは、ホワイトボードに書いておく。


「ESPNだって?」


 ぼくはおどろいて声をあげた。受話器を持っていたウィルがうなずく。


 ウィルの家に設置された電話は四つあり、すべてがアメリカ政府とのホットラインだ。


「今回の試合を独占放送させてくれってさ」

「政府がいいなら、なんでまた」

「ESPNが放送権料について、むこうと交渉したいそうだ」

「ええ?」


 ぼくの疑問に、キアーナがすぐ説明してくれた。


「銀河憲章で、そこも決まってるのよ。戦いにおいて利益がでる場合、かならず50%ずつの取り分になるって」


 そんなことまで規定されてるんだ!


「いいわ、わたしがでる」

「助かるよ」


 放送権とかなんて、なにを聞いて、なにを話せばいいかもわからない。


 日に日に、問いあわせは増えていく。


 ありとあらゆる所から、宇宙人への連絡希望や問いあわせがあるらしい。


 そのため、アメリカ軍は専用の窓口を作った。名称は「アメリカ軍宇宙人交流窓口」というものだった。


 メール、電話、ファックス、手紙。そこで検査され、許可されたものが、ぼくらのところにくる。それをぼくは、グリーン提督にすべて聞かなければならない。


 検査済みの書類も山のようにくる。メジャーリーグの協会、各種のイベント会社。


 ESPNのことは、キアーナとグリーン提督がやり取りした。ぼくが同席していれば、グリーン提督も地球人と話すことができる。


 ちなみに、キアーナは放映権料をESPNの歴代最高額を勝ち取ったらしい。全世界同時中継。たしかに、視聴数すごいことになるだろうな。


 そして放映が決まったら、なにがくるか。広告だ!


 どの広告がNGなのか、それも聞かないといけない。地球でも国によったらタバコの広告はダメとか、いろいろある。


 まったく、これほどグリーン提督に聞くことや、連絡事項が多いとは思わなかった。


 でもそうか。ぼくら四人は、これが地球をかけた戦いだと知っている。しかし世間はちがう。地球人VS宇宙人の親善試合。


 それも地球側はメジャーリーグのオールスターだ。お祭りにならないわけがない。戦いへの準備というより、お祭りの準備となった。


 日を追うごとに、着々と試合の詳細が決まっていく。


 試合会場はなんと


「ドジャーズ・スタジアム」


 となった。カリフォルニア州の大都市ロサンゼルスにある巨大スタジアムだ。56,000人の座席数をほこる。


 ここでひとつ問題が発生。むこうの司令官、グリーン提督も「試合が見たい」と言うのだ。


 また、観客席も確保してほしいというのだ。そのためのチケット料金はESPNの放映権料で支払うと。


 100人分ほど用意すればいいだろう、と思ったら、希望は2,000人分。


 巨大な宇宙船には、いったい何人が乗っているのだろう。


 司令官の席はセキュリティの問題から、政府要人が観覧できるVIPルームだ。敵の司令官ではあるが、ここは最大の注意が必要になる。


 地球人のだれかが司令官を攻撃し、あのグリーン提督がもし亡くなると即刻、地球の負けになる。


 そしてグリーン提督がくるとなると、自動的に、ぼくも試合観覧に参加となった。


 ウィルとスタッビーも試合を見たがったので、人数に入れる。


「私は無理、かれらとなんて怖いわよ!」


 めずらしくキアーナが言った。


「通信した時は堂々としてたのに?」

「あれは映像でしょ!」


 なるほど。あれかな。子供のころ、空手チャンピオンだった女の子が、ヘビのおもちゃで泣いた。あれとおなじだろうか?


「でも、キアーナがこないと、アメリカ政府と対等に話せないよ」

「いやよ。宇宙人も地球人も腐るほどいるのよ。どうやって身を守るの!」

「そこは、三人がいるじゃないか」

「三人って、あなたたち?」


 ぼくら男子三人で見あった。うん。ウィルは護衛の役ができそうだけど、見るからに弱そうなぼく。そしてちょっと太めで背も小さいスタッビー。護衛は無理か。


 護衛、と考えて、ある人が思いついた。


「プロの護衛をつけるよ」

「アメリカ政府の人はいやよ」

「いや、ぼくの知りあいだ」


 そこまで言って、ようやくキアーナの了承を得た。


 それからも準備に追われ、あっというまに試合当日がきた。


 いよいよ、その日がやってきた。


 地球防衛戦争の第一戦、ベースボールの開幕だ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ