第15話 ミサイル
異星人との対話は終わった。
失神したスタッビーは残念だったけど、ウィルとキアーナは異星人と話もした。
緑色した異星人について、みんなでテーブルをかこみ話していたときだった。
つけていたTVのようすが変わった。
アナウンサーがさけんでいる。
「あー、宇宙船に変化があります!」
巨大なつぎはぎだらけの鉄のかたまり。そんな宇宙船のひとつに、カメラがズームインする。よく見ると、上部に小さな円筒のようなものが、ゆっくりとでてきた。
「なんだろう、あれ」
ウィルがつぶやいた。
「なにかの発射台かな?」
ぼくも答えながらTV画面を見つめる。
しばらく見ていると、とつじょ爆裂音がした。次に騒音とともに煙をあげてなにかが発射される。
発射されたなにかは、煙を吐きだしながらすさまじい速さで上空にのぼっていく。やがて、雲をつきぬけ見えなくなった。これは、どう見てもあれ。
「ミサイルだ!」
ぼくの言葉に、ウィルが反応した。
「おかしい、さっきは先制攻撃をかけてくる感じじゃなかった」
「どこかの国が攻撃したとすればどう? 迎撃ミサイルなら可能性あるわよ」
ウィルとキアーナが話している。ふたりの会話にスタッビーも入った。
「どこかの国の攻撃って、またアメリカの核攻撃か!」
「いや、他国もありえる」
ウィルの指摘も正しい。そう思う。アメリカの領空だったとしても、宇宙人を攻撃するという理由なら、ありえない話ではないと思う。
「……ピッ」
ぼくの腕の通信機が小さく鳴った。
なにかの表示も点滅している。
「……ピピッ」
音が増えた。これって?
「オー・マイ・ガー!」
スタッビーがさけんだ。
「待って待って、ここに飛んでくるの?」
キアーナが立ちあがって、ぼくから離れる。
ぼくも立ちあがった。
「どうしよ、どうしよ!」
まったくどうすればいいか、わからない。
「タッツ、その腕時計、取れないのか!」
ウィルが言った。ぼくは引っ張ってみるが、びくともしない。
「無理だよ!」
ウィルは顔をしかめ、部屋を見まわした。
「オマガッ!オマガッ!」
スタッビーは短く神をさけびながら、机の下にもぐりこんだ。
ぼくも逃げたいけど、ミサイルの目標はこれ。左腕にまえにだし、ぼくはうろうろ歩き回った。
どうすればいい、どうすればいい?
「ちょっと待って待って、追いかけてこないで!」
キアーナは、うろうろするぼくから逃げまどいながらさけんだ。
「……ピピピッ」
音が増えた。まちがいなく近づいてる。
ぼくは三人を見た。だめだ、ここじゃだめだ!
図書館から飛びだす。とにかく走った。
廊下を走り、本館に入る。
「屋上だ!」
階段を猛スピードであがった。
「いや、ちがう。それじゃ校舎が壊れる!」
ぼくは馬鹿だ。階段を駆けおりる。
「……ピピピピッ」
どんどんアラームの音が増えてる!
まずい、間にあわない。
建物の正面からでるのは遠い。一階におりると、廊下の窓をあけて中庭にでた。
「そうか運動場だ!」
運動場なら広い。
「タッツ、プールだ!」
背後から声。ウィルだ。ぼくを追いかけてきたのか!
「プールがわかんない!」
「ついてこい!」
ウィルはさけんで、ぼくのさきを走った。
「ピピピピッ……ピピピピッ……」
アラームの鳴る間隔まで早くなった!
プールまでもつのか!
「うあー!」とさけびながら夢中で走った。
もうすこし、もうすこしだ!
「ピピピピピピピピピピピピピピ」
腕の通信機はもう、連続で鳴っている。
プールに着いた、と思ったそのとき!
「ピーーーーーーーーーーーーー」
腕のアラームが鳴りひびいた。
空を見上げた。丸いなにかが見える。それはぼくの上にふってくる。
「終わった」
思わずつぶやくと同時に、腰に衝撃がきた。
「ターッツ!」
ウィルがぼくにタックルしてきた!
ふたりともにプールに落ちる。水のなかで、ぼくらは見あった。
まるいものが、ぼくらのまえに沈んできた。ところどこがピカピカと点滅している。
そいつは、ぼくらのまえで止まると「フッ」と電気が切れた。
水面までもがき、なんとか泳ぐ。プールサイドへ手がついた。よじのぼり、コンクリートの床に立つ。ふいに水を吐きだした。げほげほと咳もでる。
「ウィル!」
まわりを見た。ウィルがいない。
ウィルが水しぶきをあげて水面からでてきた。白い球体を持っている。
ぼくはプールサイドから手を差しのべた。ウィルが球体を差しだしてくる。
球体を両手で受け取ると、ウィルは自力でプールサイドにあがった。
「なんだったんだ、そいつは」
ウィルが言った。
ぼくは球体をくるくると回してながめてみた。
よく見ると、ピカピカと光っているところがある。
その光る箇所をさわると、まるい球体に切れ目が入った。そしてすこしの煙とともに、ぱかっとフタのようにひらく。
なかを見ると本が入っていた。
「Charter of the Galaxy」
本の表紙には、英語でそう書かれていた。銀河憲章だ。