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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第一部

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095 神聖教国教皇がウルバノ大司教の手紙により神国建国を知る

 神聖教国

 ピオーニ教皇の秘書官が教皇宛の手紙を整理している。

 大至急とか重要とか親展とか、やたら赤で大書してある手紙があった。

 「なんだこれは」

 差出人を見るとリュディア王国駐在のウルバノ大司教からだ。

 ウルバノ大司教は、教皇の親戚だとかでやたら尊大で秘書官の間では評判が良くなかった。普通便なら一番下に放りこむところだが、これだけ赤で色々大書してあるのを放置してもまずかろうと教皇に届けることにした。


 「教皇様、ウルバノ大司教より大至急・重要・親展と書かれた手紙が届いています」

 「どれ」

 手紙を受け取って読む教皇。

 「なんだと、神を詐称する者が出現し、滅びの草原に神国を建国した。そんなバカな。あの地は神の怒りに触れた地だぞ。何を寝ぼけている。あの地は神以外どうにもならないはずだ。どうにかなるなら、あんな広い丘陵地帯、俺が貰う。何、リュディア王国に続いて、アングレア王国、スパーニア王国が神国を承認しただと。どうなっている。そんなことは聞いてないぞ。信じられない。ウルバノはボケたか」


 「ギーベル首席異端調査官を呼べ」

 秘書に怒鳴った。


 ギーベル首席異端調査官がやって来た。

 「教皇様、何の用でしょうか」

 「この手紙を読んでくれ」

 調査官は一度読んで、さらに繰り返し読んでいる。


 「どう思うか」

 「事実としたら我が神聖教を無視しています。それどころか、新たな神を作り上げ、神聖教を否定していると考えられます」

 「そうだな」

 「至急調査し、関係者を捕え、神を詐称する者は火炙りの刑にしなければなりません。この世には我が神聖教の神のみがおわすのであって、それ以外の神はあり得ません」


 「国王はどうする」

 「事実としたら、国ぐるみの行為と思われます。当然国王は破門でしょう。三国は海岸がなく、岩塩がとれません。我が国に塩を頼っています。罰の一つとして塩の販売をやめたらどうでしょうか」

 「えぐい策だな。塩だけに。三国の慌てふためく様が見たいな。よし、塩を直ちに販売停止しろ」


 「一応、会議を開いて決したことにしないと、それが元で戦争になると手続き上まずいかと存じます」

 「細かいやつだ。秘書に言って、総務、外務、財務、司法、特務、軍務の責任者を至急呼んでくれ。お前も会議に出ろ」


 会議が招集された。

 ウルバノ大司教の手紙が回覧される。

 ピオーニ教皇が発言する。

 「みな、忌憚のない意見を述べてくれ」

 教皇は会議がすんなり終わると思っていたが、予想に反して誰も発言しない。

 「誰か発言しないか」

 誰も発言しない。教皇に目で促されたギーベル首席異端調査官が発言した。

 「神を詐称する者は捕らえて火炙り、三国の行為は神聖教国に対して反旗を翻したも同様、国王は破門、国には罰を与えるべきと思います」

 「余もそう思う。皆もそう思うだろう」

 誰も発言しない。


 キレた教皇。

 「総務から順に発言しろ」

 「ウルバノは神を詐称する者と言っているが果たしてそうか」

 「神国が滅びの草原に建国したということは、建国者は神か神の許しを得た者に相違ない」

 「神の御技で次々と新しい物を生み出しているようだ」

 「人は神を裁けない。神が人を裁くのみ」

 「リュディア王国にあるスパエチゼンヤはすべての国民に開かれており、まさに神の恩寵だと言われている」

 「この世界のものとは思えぬ巨大なドラゴン2体が飛び回っており、人はもとより、この世界の魔物ではとうてい太刀打ちできないと言われている」


 教皇はワナワナ震える。

 「お前ら、お前ら。神はこの神聖教国と共にあり、我が神聖教国に刃向かうものは神に刃向かうものだ」

 「教皇様。我々が信じていた神は、いつ顕現されましたか。されていない。お言葉もない。歴代教皇が神のお言葉と称するものを述べていたが、それは神の言葉だったのか」

 「リュディア王国に顕現された、シン神様、アカ神様、眷属の白狼様、ドラゴン様は本当に神とその眷属であったと聞いている」

 「白狼、ドラゴン、とても敵わない。まさに神軍だ」

 「お前ら、お前ら、破門だ。出ていけ」

 「神職は神に仕えるものです。教皇に仕えるものではありません。破門というなら、我々は出て行きます」

 「どこへ行く」

 「宗教者として、世俗を捨て、初心に帰り、神の奇蹟を辿る巡礼の旅に出ます」

 「世俗を捨てるならお前ら何も持ち出すな」

 「もとよりその覚悟です。この足で巡礼に出ます」


 出て行ってしまった。会議室からスタスタと外へ。神の奇蹟が楽しみだと言いながら。

 後に6聖人旅立ちの日と言われるとは思ってもみない6人であった。


 教皇と首席異端調査官は会議がすんなり終わると思っていた。このような終わり方をするとは思っても見なかった。

 沈黙が支配する。


 「教皇様、教皇様に楯突く悪人6人が出ていきました。我ら一同教皇様に忠誠を誓います」

 良識ある聖職者6人に抑えられていた者が我が世の春が来たと教皇の元に集った。

 教皇は持ち直した。

 「直ちに手のものに三国の異端調査に向かわせろ。責任者はこのギーベル首席異端調査官だ」

 「それと三国に対して塩の輸出を直ちに停止しろ」

 「塩の輸出停止の通告はどうしましょうか」

 「そんなものは通告しなくて良い。何か言ってきたら、神を畏れぬものに売る塩はないとでも言っておけ」

 「承知しました」

 「よし、直ぐかかれ」

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