092 馬二百頭を送り出し、まったりする
翌朝、いつも通り、ドラちゃんとドラニちゃんはへそ天で寝ている。そっとどかして起きる。今日は行ってくるねとアカ。頼んだよ。勿論携帯で先方には連絡した。
朝食は部屋に持って来てくれた。オリメさんが作った制服を着ている。帰ったら教えてやろう。喜ぶよ。
ゴードンさんがやって来たので、ブランコ、エスポーサ、ドラニちゃんに頼む。
「昨日の話の通り、ゴードンさんと二百頭を国に連れ帰ってね。頼んだよ」
みんな返事をしてくれた。さて今日は門前で楽しみがあるんだったね。エチゼンヤさんの手の者の話では、門前に侯爵と大司教の私兵が集まって馬を返せと言っているらしい。楽しそう。楽しみはゴードンさんに対応してもらおう。
お馬さんには、たっぷり食事と人参、水をあげた。
ゴードンさんに魔の森の水の水筒を渡しておこう。みんな持っているからいいんだけど、あったら安心だ。途中お馬さんにもあげてもらうからね。飼い葉も桶も収納に入れてもらう。ゴードンさんの食事もね。ブランコ、エスポーサ、ドラニちゃんは自分で食事と水は持っているからいらないと伝えておく。
出発だ。こっそりアカ、マリアさん、ドラちゃんとエチゼンヤさん夫妻とで二百頭の最後尾の馬、数頭に乗せてもらって見にいく。
門前にだいぶ兵が集まっているね。でも馬の数の半分くらいだ。見切りをつけて逃げてしまったのかな。ゴードンさんに因縁をつけている。
「お前の乗っている馬は俺の馬だ。返せ」
「そうだ俺の馬もいるぞ」
「俺の馬もだ」
口々に言っている。
「何だと。変な言いがかりをつけるな。これは神様の馬だ。お前たちの馬ではない」
「俺の馬だ。証拠にここに焼印がーーー」
「焼印がどうした」
「あるはずなのに」
「変な因縁をつけていると衛兵が来るぞ。この馬泥棒め」
「焼印がない」
「焼印がない」
全員で必死に焼印を探すが無い。
「ここに鞭跡がーーーー無い」
「ここに切りつけた跡がーーー無い」
ゴードンさんが見物人に語る。
「皆さん、この馬泥棒たちは、この間押しかけた侯爵殿と大司教殿の私兵だ。今度は白昼堂々馬泥棒をしようとしている。焼印、鞭跡、切りつけた跡がどうこう言っているが、皆さんも見ていた通り、そんなものは神様の馬にはない。大方虐待を続けた馬に逃げられて、馬を手に入れようと馬泥棒を働いているに違いない。私はすでにこの国のものでは無いのでこやつらは皆さんにお任せする」
ハルバートを取り出し、前に突き出し、行くぞと号令をかける。
ウオーンとブランコが思いっきり吠える。兵は尻餅をついた。うまく兵だけに衝撃を与えたね。他の人は遠吠えに聞こえただけだね。うん、成長した。
ブランコが走りだす。ゴードンさんもカッコいいね。ハルバートで前方を指し駆けていく。二百頭が続く。エスポーサは殿。ドラニちゃんは前に行ったり後ろに行ったりして馬がばらけないか見ている。みんな良い子だね。心配ないな。
ぎゃっと悲鳴が聞こえる。兵が石礫をぶつけられている。見物人の後ろから投げるものだから投げた人が特定できないね。よく見ると前と後ろが時々交代している。踏ん反り返って威張って悪いことをしていたんだろう。石に打たれている。誰も助けようとしないね。額から手足から露出しているところから血を流している。シャツもズボンも血が滲んできた。よほど憎まれていたんだね。這って逃げていく。
さてショーが終わったのでアカとドラちゃんに使いに行ってもらう。アカが門前でドラちゃんに乗って飛んでいく。逃げる兵が急に陽が翳ったので空を見れば巨大なドラゴンが頭上をゆっくり飛んでいく。腰が抜けた。這っていて腰が抜けるのは器用だな。今度は匍匐前進だ。
ドラちゃんは兵を越えると高度をとって飛んでいった。
マリアさん、エチゼンヤさん夫妻と笑いながらスパに戻る。途中で転移した。長いからね大通り。エチゼンヤさん夫妻は周りの景色が消えて目の前にスパが現れてびっくりしていた。数歩歩いたらスパだ。
二百人衆の20人をエチゼンヤさん夫妻に引き渡して暇になった。
今日はマリアさんを除いてみんな出かけてしまった。いつも一緒にいたのにいなくなると大変寂しい。
キュ、キュ、キュと鳴き声が聞こえて来た。空耳かな。だんだん大きくなる。
ドラちゃんが飛び込んできた。しっかり抱きしめる。アカがご主人様が寂しがっているから先に帰ってやってって言ったの、そうなの。嬉しいよ帰って来てくれて。アカは明日になるの、残念だけどドラちゃんが帰って来たからまだ良いか。しっかり抱っこする。キュキュと言って体を擦り付けてくる。よかったよかった。
今日はせっかくだから旅館泊まりだ。夕食はエチゼンヤ夫妻がやって来て一緒に食べた。
お風呂は旅館の内風呂だ。ドラちゃんと入る。しっかり洗ってやる。暫くぶりだねドラちゃんと入るのは。
マリアさんが参入して来た。オリメさん謹製の僕デザインの下着を着ている。
「シン様、背中を流しましょう」
いつもは逃げるのだけど、今日は何となく洗ってもらうことになった。背中を洗ってもらうのは気持ちが良いね。おっと、油断していると前まで洗われてしまう。慌てて湯船に浸った。マリアさんも入ってくる。下着は着たままだけど。だけど。
「良い湯ですね。こうしていると夫婦みたい」
ピッタリくっつかれる。僕は、11歳モードなんですけど。
ドラちゃんもくっついてくる。両手に花ですよ。暫く窓の外を眺める。窓の外は森。木から木へムササビが飛ぶ。いつの間にか来たんだね。小動物が増えてくれると良い。梢の先には星空だ。空気が澄んでいるから手が届きそうに近くに見える。綺麗だね。のぼせて来た。出よう。
私はもう少し入っています。下着を脱ぎ出した。危ない危ない。逃げる。
ドラちゃんが何でって言っている。そりゃ、ええと、ええと。のぼせたから。
部屋に戻ると携帯が鳴った。ゴードンさんだ。無事に着いたという報告。開け放たれている窓からキュキュと鳴き声がする。ドラニちゃんだ。飛び込んできた。しっかり抱きしめる。エスポーサが寂しいだろうから行ってやりなって。大人だなエスポーサ。
マリアさんが風呂から出て来たので、ドラニちゃんを風呂に入れる。まだドラちゃんは遊んでいたので、ドラニちゃんを洗って、ドラちゃんに預ける。暫く遊んでおいで。
あれ、マリアさんと二人っきりになった。ベッドに引っ張り込まれた。和洋折衷だからね。ベッドだ。それは良いんだけど、今日は二人だからね。ドーテーの危機か。
「たまにはこういうのも良いわね」
「うん」
と当たり障りのない返事をしておく。
ドラちゃんとドラニちゃんが飛んできた。暖かい空気の塊を作って空気をぐるぐる回して温風扇風機だ。くるくる宙返りをして遊んでいる。乾いたね。ストンとお腹の上に着地。すぐ寝てしまった。僕も寝よう。マリアさんがピッタリくっついてくる。当たっているんですけど。引く気はなさそう。寝てしまおう。




