086 ゴードン神国外交官は東奔西走 忙しい
冒険者組合本部長改め、ゴードン神国外交官は王宮を出てスパエチゼンヤに向かう。
スパエチゼンヤの門番の冒険者に冒険者組合は今日辞めたよと教えた。
エチゼンヤさんに会って国交樹立できた事を報告し、アングレア王国とスパーニア王国に建国宣言書を届けるためバトルホースの借用を申し出て、快く了承してもらった。
シン様には携帯で、リュディア王国は建国承認し、国交も樹立できたこと、エチゼンヤからバトルホースを借り、アングレア、スパーニア王国に向かうと報告した。
「さて東奔西走というから、東からいきますか」
アングレア王国をめざして街道を東へ。さすが元極級冒険者。バトルホースの能力を100%引き出し東へ疾走するのであった。夕刻アングレア王国王都に着いた。
王宮の衛兵にエリザベスさんの手紙を見せると王宮内の応接室に通された。高官らしき爺さんが出て来たので、エリザベスさんの手紙を渡す。
「おお、まさしく王女様の手跡だ。お転婆での。お付きの者を困らせておった。さ、陛下がお待ちじゃ。こちらへ」
案内されて行った先にも爺さん。国王だろう。エリザベスさんの父君ならこういう歳か。
爺さんが爺さんに手紙を渡す。手紙を読む国王。建国宣言書も渡した。
「ゴードン外交官殿、身分証の線指輪とはどのようなものじゃ」
「これでございます」
「おお、なるほどのぉ。確かに見たことのない輝きじゃ。爺、建国承認の会議を招集しておくれ。エリザベスがいうんじゃから間違いはなかろう。明日、午前中会議を開くから今日は泊まって、エリザベスの話を聞かせておくれ」
会議の手配が終わったらしく爺さん高官が戻って来た。
「エリザベス様はシン様のお陰で今はだいぶ若返ってお孫さんくらいには見えると思います。元々こちらから持参した鞭を振るっていましたが、今はシン様から貰った鞭を喜んで振っています」
おうおうと爺さん二人。
婆さんが出て来た。
「あなたたち私に黙ってエリザベスの話を聞いてーー」
怒られている。王妃様だろう。
それから夕食までエリザベス様のこと、ローコー様のこと、ヨシツナさんのこと、イサベルさんのこと、曾孫のこと、一段落すると、シン様のこと、建国宣言書に署名されていたアカ様のこと、仲間の白狼、ドラゴンのこと、マリア様、ステファニー様、二百人衆のことなど、洗いざらい話させられた。
外交官とは大変な仕事だな。何を話して良いか、どこまで話して良いか考えるだけで大変頭を使い、気疲れする。冒険者はその点楽だった。
夕食は大変美味しかった。気分は持ち直した。
翌日、昼前、爺さんたちに呼ばれ、国家承認したこと、それを認めた手紙を預かった。
婆さんからまた来て話を聞かせておくれと頼まれてしまった。外交官は忙しい。
忘れるところだった。シン様に携帯で報告した。
預けておいたバトルホースに跨って爺さんたちの見送りを受け、一路スパーニア王国へ。
途中、通過点のスパエチゼンヤに寄ってエチゼンヤさん夫妻と会い、概要を話し、エリザベスさんにはアングレア王からの手紙を渡した。一泊。翌日、馬を替え、日の出とともにスパーニア王国へと飛ばす。夕方には着いた。
スパーニア王国でもアングレア王国と全く同様のことが行われた。ただし、こちらの国王夫妻はエリザベスさんのお子さんのヨシツナさんの嫁さんの親だから、爺さんではない。シン様には携帯で報告。
翌日は一泊して馬を休め、翌朝、預かった手紙を線指輪に収納し、滅びの草原に踏み入れシン様がいる地をめざす。
休養十分、気合いを入れて走る元極級冒険者とバトルホースとが醸し出す危険なオーラに、魔物も獣も慌てて避ける。
「おお、大きな森が見える」
魔の森まで草原だったのではと思ったが、指輪が森を指す。バトルホースも迷わず森を目指す。
森に入る時、膜を通り抜けた感じがした。スピードを落とし森の中を進む。先が見通せないほどの深い森だ。驚くべきことに、小鳥の声がする。動物の鳴き声がする。魔物に追われ人に狩られ、滅多に聞こえなかった声だ。やっと先が見えて来た。数十キロはあったぞ。森が切れる。
緑の丘陵、点在する森、小川、湖。飛び交う小鳥、走り回る小動物。子供の頃読んで貰った神話の世界そのものだ。確かに神国だ。
小鳥や小動物を驚かせないようにゆっくり進む。湖の向かいにスパ棟がみえる。バトルホースは湖を突っ切るつもりだ。ゆっくり泳いで行く。水は冷たく気持ちいい。足をかすめて小魚が泳いで行く。
ああ、神の国だ。俺は許されて神の国に至ったのか。涙が出て来た。
バトルホースが嘶く。陸のバトルホースが嘶きを返す。シン様が出て来た。バトルホースが水から上がる。シン様の前で思わず片膝をついて報告した。
「アングレア、スパーニアの二国とも建国を承認しました。これが二国からの親書です。それからイサベル様宛の手紙を預かって来ました。こちらはリュディア王国ブライアント国王陛下からの建国承認、国交樹立の親書です」
「お疲れ様でした。スパで疲れを癒してください。宿舎はその間に用意します」
ドラちゃんとドラニちゃんを呼んで、ヨシツナさん夫妻を連れてきてくれるよう頼んだ。ついでにエチゼンヤさん夫婦も呼ぼう。
ドラちゃんに人化してドラニちゃんに乗って行ってもらい、迎えに行ってもらうことにした。
ドラちゃんは、「オッケー」と言って人化してドラニちゃんに飛び乗ってスパエチゼンヤとエチゼンヤ本店まで迎えに飛んで行った。




