084 アカが神国の中心地の環境を整え、楽園の地となした
二百人衆とバトルホースが自分たちの国で安心して眠りについた頃。
煌々と輝く月明かりの中、アカがすっくと立った。月明かりを受け、いや、昼を欺かんばかりに自ら光を放っている。女神様だ。広場の中心に手を翳した。ポコポコ水が湧き出てくる。たちまち池となりこんこんと水が湧き続け、池から流れ出て1キロほど先に溜まり出した。
アカが再び手を翳した。水が溜まり出した所を起点に狭いところで幅10キロ、広いところで幅20キロくらい、最も深いところで100メートルほどの窪地が出来る。水がどんどん貯まる。窪地の底からも水が噴出してきた。すごい湧出量だ。あっという間に水が窪地に一杯になり湖となった。湖の水は溢れ出し、川となって流れて行く。
さらにアカが手を空に翳すと様々な魚や水生動物が降ってきて湖に飛び込んで行く。魔物はいない。水生植物は生えて来た。昔湖だったのだろう。
ドラちゃんとドラニちゃんがあちこちに木の実を撒いていく。よし雨を降らせよう。芽出ろ、芽出ろ。森ができ、アカが小さい湖を作る。湖から流れ出る水で小川もできる。アカが魚や水生動物、水生植物を小さな湖に小川に降らせる。森に草原に様々な小動物を降らせる。緩やかな丘陵地帯で森、湖、草原が散在しているのどかな地帯になった。その先は環状の森だ。我々がいるところを中心に、半径50キロの円内がのどかな地帯で、それを取り囲む環状の森だから閉塞感は全くない。
たった1時間のことであった。マリアさん、ステファニーさん、オリメさん、アヤメさんは見ていてどっと疲れたようだ。みんなで寝よう。
朝、小鳥の声で目が覚めた。魔物じゃなくて小鳥だ。今朝は皆人化を解いて通常モードだ。宿舎の二百人衆も小鳥の声で目覚めたようだ。外に出て来てびっくりしている。
昇り初めた太陽が湖の漣に反射してキラキラ輝いている。森からは小鳥の囀りや、小動物の息吹が伝わってくる。リスが木の実を差し出して来た。お礼なんだろう。受け取っておこう。リスは近くの木に登っていった。せっかくだから貰った実は泉の脇に埋めた。すぐ芽が出て来て育ち初め、実がなった。リンゴだった。一つもいで食べてみる。美味しいね。一個さっきのリスさんにあげよう。登って行った木の枝に置いておく。リスが二匹やって来てヨイショヨイショと運んでいく。
二百人衆が跪いた。
「一夜にして自然を成した神の御技に触れ、我々一同驚き、神に仕えることを喜びとするところです。何なりとお命じくださいませ。我ら一同命をかけて遂行します」
困ったな。忠誠が極まってきた。
「二百人衆は10人か20人くらいずつ、当面スパエチゼンヤで働いてもらいたい。残りの人はここで暮らす体制としたい。最初は短い間隔で交代し、仕事やリュディア王国のことを覚えて欲しい。今はまだリュディア王国と国交が開かれていないので、全員ここで暮らしてほしい。国交が開かれ次第、エチゼンヤで働くことを開始したい」
「承知しました。それまで何をしたら良いでしょうか」
「この地は昨晩アカが整え楽園の地となった。見ての通り、何でもできる。まずは畑を作り小麦や野菜を植え食料を増産したい。湖の魚は昨晩入れたので数年様子を見て増え出したら少しずつ漁をしても良い。それからぐるっとこの地を取り巻く環状の森を含めた内側では狩猟はしないでほしい。環状の森は外部からのバリアの役目もしている。大切にして欲しい。またバリア内には魔物、危険な動物は入ってこられない。今いる小動物にとってもこの地を楽園とし、我々と共生したい」
「狩猟は、ここを取り巻く森の外に出て魔物を狩って欲しい。線指輪の収納は時間停止なので狩った魔物は収納。ここで魔肉を消費したり、国交が開始されれば街で売ったりしたい。魔物といえども必要以上には狩らないで欲しい。必要最低限にして欲しい。彼らがいるからこの滅びの草原に誰も入ってこられない。彼らもそれなりに役目がある」
「それから牧場を作りたい。馬、牛、羊など飼育したい。馬はゆくゆく全員が騎乗して移動できるくらいに増やしたい」
「次に、衣類の制作も行いたい。今のところ生地はオリメさんの実家に依頼するつもりだ」
「各人得意なことも不得意なこともあるだろう。まず得意なことやりたいことを書き出してステファニーさんに出して欲しい」
「今日から暫くはこの環境に慣れて欲しい。あちこち見て回って欲しい。当面環状の森からは出ないようにお願いする」
「それから一家に一台、携帯を渡す。使い方はこれからマリアさんとステファニーさんに講習会を開いてもらうのでよく聞いて使ってみて欲しい」
あれ、ステファニーさんに携帯を渡したっけ。こっそり渡しておこう。
「そうそう、今日から学校を再開する。講習会の後からお願いする。夜学も引き続き開講する」
子供がゲッという顔をしている。ふふふ、逃すものか。だから最初に学校を建てたんだ。
「二百人衆の世話担当はステファニーさんとする。副はマリアさん。何かあればステファニーさんとマリアさんにお願いする」
慕われていた国王一家の王女様だからね。二百人衆が喜んだのはいうまでもない。
大体のことを言って、マリアさんとステファニーさんに振ってしまった。




