080 二百人衆のオリエンテーション
二百人衆、いつのまにか呼び名が二百人衆になった。二百人衆は、5班にわけ、時間差で宿舎を出発し、スパエチゼンヤを一周、鍛錬の一環として駆け足で王都へ。王都で冒険者登録。冒険者組合では二百人衆のために臨時受付を作って処理してくれた。その後エチゼンヤ本店を見学、同屋敷で食事、王都一周して帰る。
5班をブランコ、エスポーサ、ドラちゃん、ドラニちゃんが交代で先導した。四十数人がオリメさんが最初に作った服を着てワッセワッセと駆け足するものだから目立つ目立つ。
ブランコは二度先導した。ウオンウオンと言いながら喜んで先導していたからいいんだけど。
スパエチゼンヤに帰ってきたら魔の森の泉の水に谷川の水をポタポタしたものを飲んでもらってスパ。汗を流してさっぱりしたところで、もう一度同じ水を飲んでもらう。
翌日はコシ。金属板に乗って嘆きの丘へ行く。墓参りして、金属板に乗って上空へ。遠く大陸が見える。海岸に荒屋が残っているだけで、最早何も残っていないし、誰もいないが故郷だ。思うところもあるだろう。食い入るように見つめている。
嘆きの丘からエチゼンヤ支店まで駆け足。支店の皆さんに挨拶。僕は板長さんにお土産として皆がとった海産物を巾着型収納袋に入れ袋ごと進呈する。眷属の収納袋は皆時間停止にしたから腐らない。海産物は鮮度が大切だからね。
板長さんに海鮮丼を作ってもらった。嗅ぎつけて来たよドラちゃん、ドラニちゃんとブランコが。しょうがないみんなを呼んでおいで。いつものメンバーにステファニーさんが混ざっている。はて、こはいかに。まあいいや、みんなで食べる。おいしいね。
二百人衆は、食堂で交代で食べてもらう。同じ海鮮丼だ。海の近くにいても沖に行けなかったということだから、小魚、エビや貝しか手に入らなかったろう。驚くぞ海鮮丼。
帰りは金属板だけど、東西街道をたどって、盗賊、魔物などを見つけたら討伐しよう。二百人衆には、刀を一本ずつ進呈した。シン金属ではないけど、この世界にはない金属だ。切れないものはないだろう。モリがいいという人が何人かいたから刀と交換でモリを作って渡した。
過剰だろうけど、1箇所10人くらいで戦ってもらった。シン一家が交代で盗賊や魔物が逃げないように周りを固めて、二百人衆に戦ってもらった。怪我はないのでまずまずだね。子供はどうしたかって。参加ですよ。参加。体力に応じて刀、脇差、匕首などを渡した。決して前には出ないで戦い方をみてもらった。
時々マリアさんとステファニーさんが見本を見せる。ステファニーさんは嬉々として鞭で盗賊の股間を狙っている。エリザベスさんの教育がいいね。アジトを吐かせるとか言っているけど、二百人衆も引いている。マリアさんは剣で光跡を煌めかせながら、スパスパだ。二人ともまったく参考にならない。
盗賊、魔物などの討伐の合間は金属板で移動だから、どんどん進む。盗賊も魔物も小規模だね。魔物は魔石をとった。冒険者組合に持って行って業績にする必要があるしね。めんどっくさい。
自分で国でも造ろうかな。そうすれば身分証明書を発行できるから、冒険者である必要はない。
場所は滅びの草原なんてどうだろう。あそこなら誰も所有者はいないし、強いて言えば世界樹所有の土地となるかな。アカが作ってもいいと言っている。
滅びの草原の所有を宣言して、遊牧じゃないけど、スパ棟と宿舎を持ってあちこち行って、増えた魔物を狩り、魔石と魔物の肉を売っても生計は成り立ちそうだ。農業をやってもいいね。畜産業も可能だろう。
統治できるのは、アカとエスポーサ、マリアさん、ステファニーさんしかいない。あれ4人もいる。じゃ少し忙しいかもしれないが、信者だけなら国が出来るかもしれないな。国を作る目的はただ慕うものたちみんなと穏やかに暮らしたいだけなんだけどね。
などと考えているうちに、王都が見えてきた。これから先は魔物も盗賊も滅多に出ないから、駆け足で行きますか。
金属板を下ろし、スパエチゼンヤの門前までヨーイドン。これブランコ、張り切っちゃ勝負にならないだろう。二百人衆は結構早いって、そうかい。ほんとだ、もうずいぶん先に行っている。駆け足がまだ早くない子供は親がおぶっているよ。それでもみんなと走っていく。あ、護摩の灰が出た。蹂躙された。そろそろ走ろうかね。ドンと言ったらブランコが飛び出しそうだから、いくよ皆んな。
やっぱりブランコは飛び出した。いつも先導をしているからね。先頭がいいみたいだ。まあ、いいか。二百人衆に追いついた。先頭になった。スピードは落とした。エスポーサの教育がいいのだろう。いい具合に二百人衆を先導していく。偉い偉い。聞こえたみたいだ。ウオンと嬉しそうに鳴いている。いい子だな。
さて門前についた。みな平然としている。体力がついたね。今日も本部長がいる。いいのかね。
「よ、みんな元気になったな。それに業物と見える刀、モリ。これじゃアカ様や眷属の方が出なくても、近衛兵などあっという間に二百人衆に殲滅されるな。これから王宮に攻め込んでも夕食までには完全制圧でき、夕食はゆっくり食べられる。半日かからないぞ。二百人衆が無手でも敵いそうにない。これだけの戦力を抱えてはシン様の力を過小評価している貴族がうるさいぞ」
「そうかもね。何か考えなくちゃね」
本部長どうしたことか大分親切だ。それにちゃんと戦力を見抜いている。
アカが、危機察知能力で生き抜いてきたから、仲間になりたいんだと言っている。なるほどな。
本部長と別れて宿舎まで駆け足。みんなにあの水を一杯飲んでもらって、今日は後は自由時間で自炊とした。材料は巾着型収納袋に入れて代表に渡した。




