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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第一部

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077 ステファニーさんとマリアさんの両親が亡くなった峠に、国王夫妻の墓、王族の墓、国民の墓、鎮魂碑を作った

 お爺さんのお孫さんが集落に向かって走って行く。

 「マリア様だよーーー。マリア様が帰ってきたよーー」


 家から人が飛び出して来る。全員出て来たみたいだ。

 「マリアです。みなさんこの地を捨てた私のことを思ってくれてありがとう」


 「とんでもない、我々こそマリア様に付いていかず日々後悔していました。マリア様のことを忘れないよう碑を作りお顔を刻ませていただきました。毎年マリア様が出航した日に皆で碑のもとに集まって偲んでいました」

 「ありがとう。こちらは姉のステファニーです。峠の手前で生き別れましたが、向こうの大陸で再会できました」

 「ステファニー様も生きておられたか。マリア様以外王族は全滅したと思っていたが、良かった。良かった」


 みな、涙ぐんでいる。それにしても体格が悪い。海岸に近いところで漁をするより他ないんだろうな。あとは山の恵みが多少というところか。腹一杯食べてもらいたいね。


 「ステファニーさん、マリアさん日が落ちてきたので夕食にしましょう。板長の料理をお腹いっぱい食べてもらいましょう。ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃん、沖で魚をとってきて」


 ブランコが海に突入して行く。泳げたんだね。犬かきだ。潜った。何かと戦っている。勝ったみたい。でも魔物に獲物は奪われてしまったようだ。がっかりしている。もう一度潜った。ドラちゃんもドラニちゃんも勢いつけて海中に潜って行く。三人とも大きな魚をとったらしい。戻ってくる。村人はびっくりしている。

 後で魚をとって板長さんやスパエチゼンヤへの土産にしよう。海鮮丼、いいねえ。


 海岸に流木で火を焚き、上に金網を出して捌いた魚を焼く。テーブルを出して板長さんの温かい夕飯を沢山出した。水は魔の森の水だ。


 ステファニーさんが挨拶して、無礼講だ。みんな食べたこともない料理に驚いている。魚も焼けたようだ。魚を食べながら、お爺さんが話す。

 「沖に出れば大きな魚が沢山いるのはわかっていたが、魔物が出没するので浅瀬で漁をするより他はなかった。漁の仕方はマリア様が船を購入した隣村の人たちに教わりました。その人達もここでの暮らしに見切りをつけ、出て行ってしまいました」


 皆さんよく食べた。出したものほぼ全て食べてもらったのでお開きにして、スパ棟を出しスパに入ってもらった。女性は王族と一緒に入れて感激していた。男は王族がいないので当然そういう感激はないがスパには驚いていた。


 翌朝、今日は峠まで行こう。

 村人に腐らない料理の材料を一週間分くらい提供して、ドラちゃんとドラニちゃんに分乗して一旦海に出て村を囲む山々を迂回して内陸に入った。


 人の気配が全くない。ただ緑の森が続くだけ。山脈に行き当たり、マリアさんの記憶を頼りに峠を目指すも緑に覆われてなかなか見つからず、やっと見つけて降りた。今はもう峠から下る道も登ってくる道も自然に還っている。

 マリアさんとステファニーさんが呆然としている。どちらを見ても人の生活の気配が全くない。


 アカが実を取り出した。エスポーサが足で岩をポンすると岩が細かくなった。ドラちゃんがフッとすると砕けた岩が土になる。ブランコが少し掘ってアカが実を埋めた。水をやろう。芽出ろ、芽出ろ。芽が出てどんどん大きくなる。嘆きの丘と同じ木だね。ドラニちゃんは偵察に出かけた。人は見当たらないよーーと帰ってきた。


 マリアさんとステファニーさんに聞いた。

 「ご両親の墓をこの木のそばに作るのはどう?」

 「お願いします。それと王族の墓、国民の墓、この地で亡くなった全ての人の鎮魂碑もお願いします」

 建てた。ご両親の墓一基、王族の墓一基、国民の墓一基。ご両親と王族の墓には名前を彫り込んだ。動乱で亡くなった全ての人達のために鎮魂碑を作った。


 ドラちゃんとドラニちゃんが何処からか花を見つけて来て、マリアさんとステファニーさんに渡した。

 アカとエスポーサが僕とオリメさんに花を渡してくれた。ブランコ?木を薙ぎ倒し岩をポンポンして辺りを平らにしている。遊んでいるのか分かって平らにしているのか定かではないが、しっかり岩の破片を踏み固めて一枚岩のようにしているので何も生えてこないだろう。


 献花をして祈る。墓が光った。多くの人の幻影があらわれた。先頭は国王夫妻だろう。その後ろに王族。さらに宰相らしい人に続き国民だろうな。多くの人達。少し離れて服装もバラバラな人達。動乱で亡くなった帝国や隣国の人達だろうね。


 国王が口を開く。

 「みんなありがとう。お陰で天に還れる」

 「ステファニー、マリア、シン様と幸せにね」

 王妃様にウインクされてしまった。


 「皆のもの、海岸沿いの村に二百名ほど我らの子孫が残っている」

 ウォーと声がした。泣いている。絶滅したと思ったんだろうな。

 「その者たちはここにいらっしゃる、樹乃神様に託そう。我らは一緒に天に還ろう」

 「さよなら」「ステファニー」「マリア」「ステファニー様」「マリア様」「お幸せに」「子孫たち」「さようならー」

 口々に別れを告げながら天に還ってゆく。

 

 次に将軍らしい人と高官らしい人が近づいて来た。

 「鎮魂碑のおかげで我ら恩讐を超えここに集い天に還れる事になり申した。御礼申し上げる」

 「もう恨みも何もない。今は天に還れる喜びのみ。誠にありがとうございました」

 「ものども続け」「参ろうぞ」「さらばでござる」「さようなら」

 彼らも天に昇って行った。

 

 あたりは清浄の気に満ち、そよ風が頬を撫でる。

 「行ってしまったね」

 ステファニーさんが天を仰ぎながら

 「何があったかわからないけど、もう知る必要もないわ」

 マリアさんが故郷の地を眺めながら

 「もうこの地には執着も怨念も何も残っていない。自然に還った土地ね」

 「集落に戻ろう」

 ドラちゃんと、ドラニちゃんに分乗し、故郷の地の上空を巡り、今度は迂回せず最短距離で海岸の村に戻った。

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