076 大陸に着いて石碑を発見し、マリアさんの国人の子孫と邂逅した
さて一週間が過ぎ大陸への出発の日。
門でみなさんの見送りを受けて、アカに僕とオリメさん、ブランコにステファニーさん、エスポーサにマリアさんが乗って丘まで走る。墓石にお参りし、巨木に挨拶して、出発。
ドラちゃんとドラニちゃんに大きくなってもらって、ドラちゃんに僕とアカとオリメさん、ブランコ、ドラニちゃんに、マリアさんとステファニーさん、エスポーサさんが乗って飛び上がる。コシの街をぐるっと一周する。エチゼンヤさんの皆さんが気づいて手を振ってくれている。冒険者組合が慌ただしい。今回は受付嬢に会わなかったな。支部長さんはコメカミをヒクヒクさせているのだろうな。お土産でも買ってくるか。
下から気づかれないくらいの高度をとってゆっくりと飛んでもらう。小さな国をいくつか過ぎ、すぐに海岸を通過した。海上を飛ぶ。高度が高いから海の魔物も出てこない。一時間ほどで大陸の海岸に近づいた。人気のないところに降りてもらう。今日はここで一泊することにした。少し高台に登って、テントを張り、洗面棟を出した。ブランコとドラちゃんとドラニちゃんには周りの安全確認をしに行ってもらった。マリアさんによると、生き物はこの大陸でも王国と変わらないそうだ。
すぐ偵察隊が帰ってくる。特に異常はなく、人気もないという報告だ。マリアさんとステファニーさんとで料理をしている。姉妹でやっているのでオリメさんは静観だ。テントは、マリアさんとステファニーさんが一つ使った。話が尽きないだろうからね。あとは僕のテント。オリメさんも一緒。僕の右にアカ、左にオリメさん。何でこうなる。そのほかはいつもの通りの場所だ。
何事もなく朝が来る。あったら困るよ。
今日はマリアさんが船出した村に行ってみる。それから逆にたどって行く予定。村の近くまではアカ、ブランコ、エスポーサに分乗し、村の近くになったら、アカも、ブランコも、エスポーサも小さくなってもらう。小さいと警戒感が薄れるからね。
少し海に突き出た岬に碑が建っている。こんなところに碑とは珍しいな。寄ってみよう。
石碑が風雪に晒されて少し傷んでいる。花が添えられている。まだ新しい。石碑は直してやろう。元の通りになれ。コーティングもしてやろう。
なんて書いてあるのかな。
この地より我らのマリア王女様が十年前十名の忠臣と共に隣の大陸コシの国へと出航された
我ら家臣 国民一同 お供する事かなわず慚愧の念に堪えない
願わくは彼の地で幸せを得ん事を
◯年◯月
旧家臣 旧国民有志一同
碑にマリアさんの顔が刻んである。碑の裏には建立者一同の名前が書いてある。
マリアさんとステファニーさんが名前をなぞりながら泣いている。それぞれ事情があり付いていけなかったんだろうに、後悔してたんだな。かわいそうに。
碑文を見ると動乱は十年経った時点では収まっていたと考えられるね。生活が落ち着いて心の中にわだかまっていた後悔の念が碑を作らせたんだろう。
ここから見ると荒海の向こうに大陸が霞んで見える。碑を建てた人たちはここに来て大陸を望みマリアさん一同の無事と幸せを祈っていたんだろう。
カサっと音がした。花を抱えている女の子とお爺さんがこちらを見ている。マリアもステファニーさんも気がついたようだ。
おお、とお爺さんが平伏した。女の子はキョトンとしている。
マリア様だよと女の子に告げる。お孫さんだね。
マリア様だーーと女の子はかけて来てマリアさんに飛びついた。マリアさんはしっかり受け止め女の子をギュッと抱っこしている。お爺さんは涙を流しながら笑っている。
少し落ち着いたのでテーブルを出し座って貰う。
お爺さんが話し始めた。
「私は家臣の子孫です。国に攻め入られあの峠を越えてから我ら国民は結局帝国に探し出され根絶やしにされました。いつの日にかマリア様がお戻りになるかもしれないと二百人ほどが帝国の手を逃れこの地に住み着きました。この地は峻険な山に囲まれ自然の恵みもほとんどなく打ち捨てられた地だったので帝国の手も及びませんでした。今は貧しいながら仲良く暮らしています」
「苦労をかけましたね。何もできずすみませんでした」
「こちらこそつき従えず申し訳なく思い続けていました」
「こちらは私の姉ステファニーです。私とは別々に海を渡りました。つい最近再会できました」
「おお、ステファニー様も生きておられたか。王族の方はマリア様だけ生き延びたと話に聞いておりましたが。それは本当に良かった」
またおじいさんは泣き始めた。
「王女のステファニーです。マリアのことを思ってくれてありがとう。みなさんに会わせていただけますか」
「もちろんですとも。さ、こちらへどうぞ」
岬から見える集落に案内される。確かに貧しいね。どうしようか。マリアさんとステファニーさんの国人の子孫だからね。スパエチゼンヤも人が足りないからな。エチゼンヤさんとここの皆さんが良かったら連れていこう。
「ここが我らの集落です。二百数十人が暮らしています。みんなを呼びましょう」
女の子がかけて行く。




