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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第一部

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074 宰相殿の受難

 翌朝花街から出勤するともう古狸がいる。まずくないか、古女房が早朝家に帰って来て俺がいなかったらまずい。冷や汗がスーッと背中を流れ落ちる。


 古狸が近づいて来た。良い匂いだ。いかん、まだブツの効果が残っている。古狸がグッと顔を近づける。鼻腔を香水の匂いが擽る。下半身が。思わず腰を引いて手近のソファに腰掛ける。

 宰相殿の腰辺りに古狸はお茶をこぼした。あらまあごめんなさいとハンカチを取り出し、お茶をこぼした辺りを拭こうとする。

 目の前の胸の谷間に目が釘づけになる。しゃがむとスカートの奥が。これはエチゼンヤの下着か。破壊力がかぼちゃパンツの比ではない。意に反して下半身が暴れん坊将軍になってしまった。ハンカチでお茶をこぼした辺りを拭われる。腰から全身に刺激が伝達される。ああ、と頭を垂れた。コイツを送り込んだ公爵のしてやったりという顔が目に浮かぶ。


 古狸は他の秘書嬢のところに行って、チラチラとこちらを見ながら小声で話している。向こうを向いた隙にサッとソファを立ち、カバンを引っ掴んでズボンの前に持ち、今日は具合が悪いので帰るといいおいて馬車も呼ばず走り去るのであった。哀れ宰相。


 昨日の花街に飛び込む。

 「女将助けてくれ」

 「朝だからまだみんな寝てるわ。もう少し待ってね」

 「いやそうじゃない。下着とズボンがあるか」

 「どうしたの。あらまあ、若者みたいね。元気なこと。奥へいらっしゃいな」


 女将の部屋だ。昔と変わらぬ。ズボンと下着を脱がされた。

 「まだ元気ね。この頃ご無沙汰なのよ」


 のし掛かられた。頭では助けてくれと思うが反応してしまう将軍様。女将の昔の顔と身体を思い起こしながら耐えるのであった。将軍様が駆け抜ける。また戻って来て駆け抜ける。昼ごろまで将軍様はかけ続けた。


 「女将さん」と声が部屋の外から掛かる。女将は簡単な打ち合わせをしてズボンと下着を洗濯に出した。ちょっと考えて他の服も洗濯に出した。親切である。


 食事が部屋に二人分運ばれて来る。服は女将の夜着を借りた。前で合わせる寝巻きだ。


 夜は、寝物語だ。シン様のこと、アカ様のこと、壁を入り口と心得ているドラゴンのこと、ローコーのこと、ゴードンのこと。話は尽きない。


 朝になった。女将が甲斐甲斐しく世話をしてくれる。トゲトゲした古女房、シン一家とエチゼンヤに引っ掻き回される職場。帰りたくないと思うのであった。

 今日は病欠と花街の者に王宮まで届けを持って行ってもらう。自宅には仕事が忙しく帰れないと連絡。一日中女将と四方山話をして過ごした。留連である。


 夜になった。

 「ねえ、まだあるんでしょう?」

 「何が?」

 「噂のあれよ。青・毒・蛇」

 「あれはーー」


 逃げなければ。あれ、服が洗濯から戻ってきていない。もう出来ているはずだ。服がなければ逃げられぬ。

 昨日、女将が少し考えて服を洗濯に出したのはこのためか。親切ではなかったのか。女は怖い。


 「洗濯に出した服の中に入っていたのよ。これ」

 「ーーーー」

 「ねえ。若返ったと思わない」

 確かに少し若返っている。まさかアレが巡り巡って女将に作用したのか。そんなバカな。

 女将がにじり寄って来る。後がない。あ、瓶の蓋を開けた。

 「ねえ。私の身体、若返ったでしょう。もう一回すればもっと若返って、あなたを楽しませることができるわ」

 もう一回で済むならいいけど、済まないから問題なのだ。

 「飲んでね。二人のために」

 飲まされてしまった。


 遠くに行ったと思っていた将軍様が駆け戻って来る。早い早い。来るな来るな。女将に手を掴まれて胸元へ。張りがある。しかも柔らかい。手に馴染む。昔のようだ。顔のシワも少なくなった。

 「産みたくても産めなかったあなたの子が産めそうだわ」

 将軍様が到着した。えらく勢いが良い。駆け抜ける。一回ではすまない。すぐ戻って来る。駆け抜ける。勢いは一向に衰えない。花街の夜は更けていく。


 翌朝、来客があった。悪童連のゴードンである。

 「よう。やっぱりここにいたか。随分スマートになったな。もう帰って来い」

 「やだ」

 「そうだ。お前の秘書の古狸な。あいつについてエチゼンヤが色々知っていてな。本人に聞かせたら震えていた。すぐ退職して故郷に帰った。公爵の領地ではないぞ」

 「ーーーーーー」

 「あまりぐずっているとお友達のドラゴンが迎えに来るぞ」

 「帰る」


 「女将、世話になった。ローコーは来てないが、昔に返ったようだな。女将も若返ったし」

 「楽しゅうございました」

 「おう、またな。じゃ連れて行くわ」

 花街を出て辻馬車を拾う。


 「辻馬車も懐かしいな。自宅まで送っていこう」

 「ーーーーー」

 「クヨクヨするな。お前は昔っから考えすぎる。お前の奥さんは、シン様、シン様と浮かれていたから、お前が帰って来ていないことに気づいてなかったぞ。適当に話を合わせておいたから大丈夫だ」

 「ほれ自宅に着いた」


 「シン様ーーー。なんだあなたか」

 「ほらな、大丈夫だったろう。早く着替えて仕事に行こう」

 「ああ」

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