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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第一部

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072 宰相殿、陛下にスパエチゼンヤの取り潰しを進言しようとしたが陛下から先制パンチをくらう

 宰相殿は、今日は国王陛下に会い、エチゼンヤの傍若無人な行状をぶち撒けてやろうと、アポの再確認をすると、丁度王妃様も先の国王夫妻も同席していると聞き、喜び勇んで陛下の執務室に入った。


 「丁度良いところに来た。此方も話があってね。そっちはなんだい?」

 「私の方は急ぎではないのでどうぞ陛下から」


 「そうかい。エチゼンヤの件なのだけど」

 シメシメ陛下から切り出してくれた。流石に気に障ったんだろうと思う宰相。


 「スパエチゼンヤというのができてね」

 よく知っている。取り潰しの話だろうとほくそ笑む宰相。


 「両親とうちの奥さんと行ってみたんだ」

 おや、風向きが少し違うようなと思う宰相。


 「あそこは素晴らしいよ。奥さんを連れて行ってきたまえ。シン様とドラゴン様と入魂だと聞いているので開業前だが頼めば入れてくれるだろう」

 大逆風だと思う宰相。


 「庭園も美しいわ。滝の爽やかさ、木々の緑の美しさ。深遠な自然の美しさが滲み出る石を使った庭園。心が洗われるような水のせせらぎ。良いわ。あなた作ってちょうだい」

 「無理いうな。シン様の作だぞ。神の知恵が詰まっている。同じようなものは作れるかもしれないが、そこに神のお造りになった庭の深遠な思想、美はない」


 おやおや、なかなか国王陛下もわかってらっしゃる。いや、そうじゃないと焦る宰相。


 「宿泊施設も素晴らしいわ。大自然に抱かれて眠れるのよ。今まで城壁に囲まれた家が密集したところしか住めないと思っていたけど、何の危険もない森の中で、美しい鳥の声を聞き、可愛い小動物を愛で、神の世界に遊んでいるようだったわ」

 「美しい森、清浄な空気、鳥の囀り、時折姿を見せる可愛い動物たち、小川のせせらぎ。夢のようだったわ」

 「全くだ。森の中で気が休まるというのは初めての体験だった。森の中は危険で、冒険者が命をかけて野宿するものだと思っていた」


 「それに、シン様デザインのあの下着。今も着てるわ。急いで替えをオリメに発注しなければね」

 「ああ、あのトランクスというのも良いな。夜着も離せん。一緒に発注しといてくれ。ベッドはなんとかならないものか」

 「それを言ったら、お義父さん、あのトイレ。王宮に戻ってガッカリしたわ。あれこそなんとかならないものかしらね」

 先の国王陛下夫妻と現国王陛下夫妻がスパエチゼンヤをほめたたえている。


 ダメだこれはと辞去しようとすると、呼び止められた。


 「いままでのは限られた層向けの話だ。スパエチゼンヤのすごいところは、銭湯があることだ。大衆が安い料金でお風呂を楽しめる。大衆が清潔になり、大衆の生活習慣そのものを大変革させる力を持っている。それに大衆食堂。生きて行くのに必要なものが過不足なく食事に入っているそうだ。それに大衆でも頑張れば入れるスパ。それから庭園が開放されている。今まで美というものに接することのなかった大衆が初めて美の世界に触れることになる。大変だぞ。世界が変わる」

 もう嫌と思う宰相。


 「なんとかシン様とエチゼンヤ殿に報いないとな。よく考えておいてくれ」

 「それにしてもシン様ご夫妻は神々しいわね。本物の神様にお会いするのは初めてね。もうシン様とならどうなっても良いと思ったわ」

 先の王妃の発言に深くうなずく王妃。

 危険な発言に焦る先の国王と現国王。


 「それにあのバングルとネックレス。神の輝きよね。見たことないわ。あなた何とかして」

 「あれは神の世界の輝きだからどうにもならない」


 「ドラちゃんのアンクレットも同じ輝きよ。そういえば宰相と本部長はあのドラちゃんとドラニちゃんのお友達よね。今度聞いといて」

 くそ、ゴードンの野郎め。陰であの二匹のご機嫌をとっているに違いない。

 なんでもゴードンの所為にする宰相である。


 「あの二匹」

 すぐ全員の咎める視線が、圧力がとんでくる。


 「あのお二方は神の眷属で、どうにもなりません」

 「マリアもバングルをしてたって言うわよ」

 「マリア、マリア様も神の眷属です」


 ついに言わされてしまった。これで奴らを追及出来なくなった、ゴードンの野郎のせいだと、あくまでも責任をゴードンになすりつけようとする宰相であった。


 「ところで用件はなんだい」

 とぼける国王。


 「いえもう用は済みました。失礼します」

 辞去する宰相に室内からの笑い声が追い討ちをかける。心がノックアウトされた。


 執務室に戻るとゴードン野郎がお茶を飲んでいる。秘書にこの野郎にお茶を出すなと睨むと、お友達でしょケチと睨み返された。


 「よ、元気か。探してたようだけど、俺も忙しくてな。エリザベス様にスパエチゼンヤの大手門の守衛を頼まれてな。信頼出来る冒険者を今日から送り出すことになった。結構な仲介料を頂いてエチゼンヤ様には足を向けて寝られなくなったよ。あはは。で、用はなんだい」

 「もういい。帰れ」


 「仕事ばかりしてないで、行ってみろよ。スパエチゼンヤに。伸び伸びするぞ」

 「お前なんぞはドラゴンに喰われてしまえ」

 「ドラちゃんとドラニちゃんも慣れると可愛いぞ」


 「帰れ。裏切り者」

 「はいはい。帰るよ。お前も神とその一族には逆らわない方がいいぞ。先の国王陛下の弟君にもな。忠告したからな」


 「秘書さん、お茶、美味しかったよ。これみんなで食べてくれ」

 「皆さんゴードン様から頂いたわよ」


 くそ、ゴードンめ、賂を堂々と渡した。秘書嬢もつるんで俺への当てつけだな。


 こうなったら俺が視察に行ってアラを探してやろう。女湯はさすがに行けないからといって、コイツらはダメだな。家内を呼ぼう。アイツは辛辣だからな。

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