057 エリザベスさんとイサベルさんにオリメ商会設立を持ちかけられた
マリアさんとステファニーさんは馬車の中でずっと話をしていた。エチゼンヤさんの屋敷に帰ってきても話し足りないみたいだ。夕食を食べてすぐにスパに案内し、ステファニーさんとマリアさんでお風呂に入ってもらった。
今日はステファニーさんはマリアさんに割り振ったスパの部屋で一緒に休んで寝物語だ。百年単位の話があるから数日は一緒だね。ちょっと寂しい。
朝になると、オリメさんが呼んでいる。ステファニーさんの下着から全て作ったのでと取次を頼まれた。
なんとオリメさんとアヤメさんは、イサベルさん、ベネディクトさん、ルシアさんの下着を頼まれて作ったそうだ。どうりで部屋に篭っていたわけだ。
本店女性陣はお風呂の脱衣所で下着にびっくりしたらしい。ヨシツナさんとローレンツさんは僕の下着をみて作ってもらいたいし、女性には頼みづらいしでイサベルさんを通して依頼があったそうだ。
生地は自分の店から持参した生地を使用したと言っている。巾着袋型収納があるからね。大量に持ってきたらしい。
イサベルさんはきちんと料金を払ってくれたそうだ。デザイン料込みで大金だったらしい。ステファニーさんの服は感動の再会のお祝いで無料と言っていた。
朝食後、エリザベスさんとイサベルさんに呼ばれた。オリメさんとアヤメさんも一緒だ。エリザベスさんが切り出した。
「オリメさん、アヤメさん。あなたたちの服のデザイン力と裁縫、刺繍の技術を含め総合的な服を作る才能に驚いています。服の世界に変革をもたらす可能性が確実にあります。女性用下着、男性用下着、爆発的に売れるわ。一点もののアフタヌーンドレス、イブニングドレス、インフォーマルウエアも私が作ってもらったものをイサベルに見せたわ。仰天ものよね。それと普段着。今までにないデザインと着心地よ。私とイサベルで話したのですが、このままこの力を埋もれさせるのはあまりにももったいなく、私どもが出資して、新しい総合的な服の商会を立ち上げませんか。オリメ商会なんてどうかしら」
「急に言われてもーーー。下着はシン様のデザインですし、ドレスもシン様のアイデアをいただいて作っています」
「下着はそうですけど、ドレスはただ四方山話をしただけですから、オリメさんとアヤメさんの才能です」
下着の話は恥ずかしいね。でもしょうがないね。イサベルさんがこっちを見た。
「シン様、あの女性用下着はどうやって思いついたのですか。どうしても女性の体を知り尽くしているように思われるのですが」
「私も最初下着を見たときそう思った。シン様は何人の女性の体を触り尽くしたのだろうかと」
エリザベスさんにも言われてしまった。
アカがニヤニヤしている。助けて。ダメなの。そうなの。
「あれは神様から、この世の女性に美しくなってもらいなさいとお告げがあり、デザインが頭の中に降りてきました」
「ふうん。そう。余り浮き名を流さないでよね。マリアが悲しむわよ」
全然信用されてないな。
「この頃ルシアが楽しそうにスパに通っているのよね」
イサベルさん、そんな疑わしそうな目で見ないで。何もありませんから。
「私は側室、愛人なんでも良いからおそばにおいてほしい」
ああ、オリメさんそれを言っちゃあ、火に油だ。
「それ見なさい。もう増えそうだわ。いっそのことシン・オリメ商会にする」
「イサベル、それは正妻に聞いてみなくちゃね」
「え、お義母さん、シン様に正妻がいるの?」
「今日晩餐会だから一緒に行くでしょう。その時の楽しみよ」
「僕はちょっとステファニーさんとマリアさんを連れて王都を散策してきます。オリメさん後はよろしく」
逃げましたよ。もちろんアカ、ブランコ、エスポーサ、ドラちゃんも一緒だ。市場でコシでは見ない野菜類を購入した。
塩が高いね。ステファニーさんは、国土が海に接していないので全量輸入だから高いと教えてくれた。自前の塩を求め岩塩を見つけようとしたが見つからなかったそうだ。
あれこれ購入していると泥棒と声がする。みすぼらしい格好をした小さな子供が捕まっている。
「あれは孤児です。親を亡くし、親類縁者もないか、頼れないかすると孤児になってしまう。だいぶ前になりますが、教会で孤児院を経営していて、国も補助金を出していました。ところが教会への補助金を教会が私し、孤児は補助金を得るための道具にされてしまいました。やむを得ず、補助金は打ち切ったのです。孤児院も閉鎖されました。今は貧民街に暮らしているようです」
ステファニーさんが説明してくれる。
「国は何か手を打たなかったのですか」
「恥ずかしながら、役人に孤児院をやらせて見たのですが、同様のことが、いや権力をかさにもっと酷い事が行われて、結局は孤児院を維持することが出来ませんでした」
「あの捕まった子はどうなるんですか」
「大人の泥棒ならいざ知らず、食うに困ってやむを得ずやっているので売れ残りの野菜でも渡して解放でしょう」
「本当だ。野菜をもらって解放された」
「自分たちが死んだら自分の子供もああなるだろうと思うととても衛兵に突き出せません」
「貧民街は何処ですか」
「ここから近いです。行ってみますか」
貧民街に行って見た。建物とは言えないような掘立て小屋が並んでいる。
道端にボーッとして座り込んでいる大人がいる。
少し歩くとやや道幅が広いところに出た。人が集まっている。神父服を着た人が炊き出しをやっているようだ。
「ハビエル神父です。時々ああやって炊き出しをしてくれています。教会からは無能呼ばわりされていますが」
具が少ないね。ほとんどスープだ。アカ何か足してやって。具が増えた。ハビエル神父がこちらを見た。勘がいいね。こちらにやってくる。
「ありがとうございます。お名前をお聞かせていただいても」
「シンと申します」
「神の祝福をと言いたいところですが、神はいるんでしょうか?あなた様の方がよほど神らしい」
拝まれてしまった。逃げよう。
「何も出来ませんが、またいつか」
「はい。お会いできるのを楽しみにしています」
一人二人は救うことができるけど難しいな。
時間が大分たった。戻ろう。




