表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/499

054 エチゼンヤ本店に間諜がいた

 朝、ルシアさんが朝食の準備が出来たと呼びに来た。雨が降っているね、今日は。雨に降られた記憶がないな。濡れてしまう。


 アカに少し大きくなってもらってマリアさんとルシアさんを乗せようとするとルシアさんが遠慮する。どうもスカートが原因らしい。取り敢えず簡易バリアを屋敷との間に張って移動だ。エチゼンヤさん一家も一緒だ。


 屋敷に着くと、雨の中と言いかけたヨシツナさんが我々が濡れてもいないし雨具も持ってないので?という顔をしている。


 「一時的に雨除けのバリアを張りました。もし了承頂ければ屋敷とのあいだに簡易通路を作りたいのですが」

 「あなた、そうしてもらいなさい。この雨は一日中やみそうにないわ。スパ研修に支障があるわ。それにスパを使わせていただいて申し訳ないから私が指揮して侍女を連れ午前、午後と掃除に伺わせて頂きます」

 「それはお前が」

 ヨシツナさんが言いかけると、イサベルさんがニコニコとして言った。

 「何か?」

 哀れヨシツナさん、尻窄みになってしまった。目が笑ってないもんね。


 「ワシもエリザベスも便利だからそうお願いしましょう」

 ローコーさん、倅の危機に助け船を出した。イサベルさんはトイレ狙いだね。中々の策士だ。しょうがない。


 「イサベルさん、研修の引率も大変でしょうから、二階の部屋一室をお使いください。執務でも、部屋の設備などの確認など、いつでも自由にお使い下さい」


 ヨシツナさんが恨めしそう。大盤振る舞いしようかね。

 「ヨシツナさんもどうぞ。夫婦一緒で使える部屋もありますし」


 「あなたはあなたで忙しいでしょうから迷惑でなければ別室でお願いできませんかしら」

 うはは、エリザベスさんに負けず劣らずだよ。フラれたね、ヨシツナさん。


 「わかりました。別室でそれぞれ研修ということで。後でマリアさんに案内させます。掃除は大丈夫です。そういう作りになっています」


 「シン様、ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いいたします。さ、朝食にしましょう」

 エチゼンヤさん、賢くもイサベルさんには何も言わない。エリザベスさんでだいぶ勉強させられたらしいね。


 さて、朝食になった。アカが怪しい侍女が居ると言っている。なるほど怪しい波動だ。ありがとう。屋敷と本店を調べてみる。いるいる。アカと答え合わせだ。全部で女性4人男性1人。合っている。さすがアカだ。


 「朝食が終わったらヨシツナさんとイサベルさん。少し王都の事をお聞きしたいのでお時間を頂きたいのですが」

 「今日は王宮に」

 「あなた、まだ時間があります。お義父様の恩人の依頼を断るなんて人非人です」

 イサベルさん、察したね。


 「じゃスパ棟の僕の部屋でお話をお聞かせください」


 「あなた、私たちも参加させていただきましょう。久しぶりの王都です。何か変化があるかもしれません」

 おおエリザベスさんも察した。この嫁姑は双子なんじゃないか。

 エチゼンヤさん、そうかなと首を捻っているが、反対はしない。

 

 僕の部屋に来てもらった。完全防諜だからね。お茶はマリアさんが淹れてくれた。

 果樹園の果樹を劣化袋に一度入れ、マリアさんに渡すと、皮を向いたり切ったりして出してくれた。

 イサベルさんがおいしそうに食べる。何か良くないことがあると察していても食欲があるというのは大物だね。エリザベスさんも食べている。


 「実は、先ほどアカから屋敷に怪しい人物がいると注意があり、調べたところ女性4人男性1人いました。1人は先ほど朝食で給仕をしていました。他は、屋敷に1人、店に3人です」


 「給仕していた娘はわかったわ。あなたが採用した娘ね」

 「この人たちです。給仕の女性はあってますか」

 渡した名簿をみてイサベルさんが旦那を睨みつける。


 「みんなあなた推薦の採用者よ。女4人は、鼻の下を伸ばして優秀な女性だと言っていたわね」

 「いや、その、友達がいい娘がいるというんで」

 「その友達とやらに送り込まれた間諜じゃない。男一人は、未亡人さんの子供という触れ込みだったわね。未亡人さんはどうしたの」

 「国に帰ったとかで居なくなった」

 「会いに行ったんでしょう。一人で」


 ヨシツナさんピンチだぞ。どう切り抜けるか。

 イサベルさんが含み笑いをした。

 「男はローレンツに、女はベネディクトとルシアに気にかけるように言ってあったわ。あなたの行動も付随して入って来るのよ」

 あ。バレてら。深く追求しないところが懐が深いというか、怖いねえ。


 「今日シン様にご指摘いただいて、確信が持てました。今日中に吐かせましょう。お義母さま直伝の鞭を使うのは久しぶりだわね」


 そしてトドメの一言。

 「今後女性は私も面接します。侍女については採用を含め人事権はすべて私ということでよろしいわね」

 ヨシツナさんに拒否権はない。ただ頷くだけだった。


 エリザベスさんの追撃。

 「良い嫁を貰ったわね。安心だわ。鞭も新しく作ってやりましょう。金属製多節鞭、あれは良いわね」

 苦い顔をして俯くヨシツナさん。同病相憐むのエチゼンヤさんが肩をポンポンと叩く。

 ウキウキしてイサベルさんは屋敷に戻って行った。


 その日のうちに全員の調書が取れた。女性は推薦者の間諜、男性は王宮に出仕する貴族の間諜と分かったので、すぐさま各地のエチゼンヤ支店に強制異動となった。


 「盗賊、魔物、獣が出るからねえ。無事に着けるかしら」

 とのイサベルさんのご発言があった。クビにしないということはそういうことだったのか。怖い怖い。

 支店に着く前にこの世から消えるんだろうな。イサベルさんは本店の表も影も握っているね。どこかの鞭をもった女王様と一緒だ。


 影は一応エチゼンヤさんが頭領になっているが、実質頭領はエリザベスさん、副頭領はイサベルさんだな。イサベルさんは今回で表の権限も拡大したね。次期女王様まっしぐらだ。


 かわいそうだな、ヨシツナさん。一本いっとく?青毒蛇ドリンクを飲ませた。


 さてエチゼンヤ間諜騒動もイサベルさんの活躍で終わり、王都の一日が終わった。昨日もそうだがなかなか忙しいぞ王都は。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ