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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第一部

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050 人外武闘派暴走集団エチゼンヤ一家の活躍

  次の二日間は何事もなく過ぎた。

 もう全旅程の半分くらいこなしたかな。明日は両側から森が迫っている峠越えだそうだ。出そうだね。魔物、獣、盗賊、どれが出るか楽しみだな。

 峠を越えると緩やかな起伏の丘陵地帯になり、更にその先は徐々に平地になり、ポツポツと村が散在するようになり、やがて王都に着くそうだ。明日が山場だね。


  さて山場の日です。

  「野宿地は状況を見て決めましょう」

  エチゼンヤさんからの今日の行動予定を聞いて宿を発つ。


  野太刀さんが来たので最初の日と同じ陣形で進む。休憩、昼食と過ぎ、峠前の最後の休憩でエチゼンヤ商会改め、武闘派集団エチゼンヤ一家と化す。


  すなわち馬車を4頭立てから1頭立てに変更。バトルホースになったので1頭で上り坂でも十分。外れた6頭にはエチゼンヤさん、エリザベスさん、セドリックさん、アンナさん、侍女さん二人が騎乗。

 エチゼンヤさんは刀の大小。エリザベスさんはロングソードと血塗られた金属製多節鞭、セドリックさんはバトルアックスとショートソード、アンナさんは薙刀と刀、侍女さんは二人とも弓と刀だ。

 馬車に乗っているのは、オリメさんとアヤメさんのみだ。どれだけ戦いたいんだろうね。 御者さんもショートソードを装備した。


 武装集団がドドドドッ、ドドドドッと蹄を轟かしてかけていく。我がバトルホースはこの速度でかけ続けられるらしい。走り出す前に馬車の揺れを抑えるように念じた。乗っている方はたまったものではないからね。今はほとんど揺れない。馬車を引く馬が喜んでいる。何も引いてないような走りだ。


 前を行く馬車はブランコのウオンウオン(どけどけ)という吠え声と腹に響く重低音の轟に慌てて道を避ける。暴走族だねまるで。皆さんには谷川の水を休憩の時にポタポタしたからね。バトルホースと人馬一体になる体力がついたんだろう。


 峠の麓の野宿地には何組か泊まるようだ。馬も人間も気力十分だから野宿地を横に見て峠道にかかる。おおいるいる、少し先から魔物、獣がいるね。頂上付近には盗賊団だな。魔物を物ともせず張り込んでいるからかなりの強者だろう。


 エリザベスさんがロングソードを引き抜き、「ハッ」と気合いを入れる。上り坂なのにバトルホースのギアが上がる。その後をみなさん遅れずについていく。もちろん馬車も。


 魔物も獣も蹂躙された。斬られ、殴られ、射られ、馬蹄に踏みつけられた。一行の速度は一向に落ちない。人外武闘派暴走集団エチゼンヤ一家だね。こちらは出る幕がない。いいんだけど。


 おっと盗賊集団に遭遇した。暴走集団に突っ込まれたけど、盗賊団のプライドがあるんだろうね。それと人数をたのみにしているんだろう。逃げない。


 おお、エチゼンヤ一家が喜んでいる。峠の頂上に陣取って殲滅戦を始めた。はいはい、馬車は見ておきますよ。どうぞご存分に。わが善良なるシン一家は馬車の周りを固めている。ブランコ、欠伸をするんじゃない。戦いたいって。ダメダメ、一瞬で終わってしまう。

 矢が飛んできた。マリアさんが謎金属のショートソードで乱戦に参入した。いや綺麗だね、キラキラと。


 人数が多いね。仕方がない、ブランコとエスポーサに参戦してもらおう。外側から削ってもらう。逃げ出す者はドラちゃんのレーザーで蒸発だ。ぱぱぱとレーザーが発射される。レーザー弾丸だね。三人蒸発した。


 お、反対側に逃げる奴が何人かいる。アカが前足を振る。何か光ってハイスピードで飛んでった。自動追尾レーザー弾丸のようだ。レーザーが曲がるんだよ。全員爆散した。蒸発がいい?やってみるね。そうかい。あ、今度は蒸発した。怖いね、自動追尾レーザー弾丸。爆散も蒸発もあり。じゃ凍らせて。いいよだって。あ、氷の彫刻ができた。石をぶつけてみよう。粉々になった。


 別に足を振らなくてもいいらしい。対象の中に弾丸を入れることもできるんだそうだ。内側から爆散だ。証拠も残らない。怖いね。ドラちゃんもブランコもエスポーサも目を見張っている。尊敬の眼差しだね。アカは最強だ。


 戦闘は終わったようだ。みんな集まってくる。


 アジトも殲滅してしまおう。ブランコ、エスポーサ、匂いを辿ってアジトを殲滅してきて。ウオン、ウオン(わかったー、わかりました)と2頭がかけていく。目星はつけていたらしい。一直線に山の頂上に向かっていく。ドラちゃんが後を追って飛んでいく。


 爆発音がする。静かになった。山の頂が少し沈んだ。見なかったことにしよう。あれはアジトごと三人で消し飛ばしたね。力技だ。ウオン、ウオン、キュ(やった、やった、やった)と帰ってくる。その間に盗賊の死体はアカの謎レーザー弾丸で物陰の死体も含め全部蒸発した。


 人外武闘派暴走集団エチゼンヤ一家さんも我が一家に尊敬の眼差しだ。


 「いつもこんなに盗賊が出るのでしょうか」

 エチゼンヤさんに聞いてみる。

 「まさか、それでは交通が途絶えてしまいます。主要街道は国軍の兵が定期的に巡回しています。地方街道は冒険者組合、領兵が巡回しています。さっきの盗賊団は、ちょうど兵の巡回の合間に荒稼ぎしようと集まったのではないでしょうか。荒事は双方とも死者が出ますので、盗賊といえども普通は荒事はやらずに、いくばくかの通行料を取っているみたいです。我々は取られたことはありませんが」


 エチゼンヤさんと話をしていると、オリメさんとアヤメさんが馬車から降りてきた。

 「何もお手伝いできなくてすみません」

 「オリメさんとアヤメさんは我がエチゼンヤが依頼した縫い子さんです。本分が違います。王都に着くまでゆっくりとし過ごしてください。さて皆さんの活躍のお陰で盗賊団は殲滅できました。魔物は後続の人たちが魔石を取るため片付けてくれるでしょう。麓まで降りて野宿しましょう」


 エチゼンヤさんの言葉で隊列を整え峠を下る。魔物も獣も盗賊も何も出てこなかった。恐れをなして逃げて行ったんだろう。

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