494 星外飛来生物殲滅作戦参加者後日談 (9)
フロランス・ハミルトン侯爵と孫のカイルの活躍(2)
やれやれ、なんだか老人探偵団になってしまったぞ。観察ちゃんはトビアス商会の場所は知っているそうだ。観察ちゃんがすぐ監視を初めたと言っているが、公爵一味にやらせよう。観察ちゃんはこっそりね。
公爵のアジトについた。広いね。隣近所の敷地の倍はある。通りから見ると隣近所と同じだけど、奥が深い。アジト向きだね。
そっと庭に着陸。ドラちゃんとドラニちゃんは帰った。こっちこっちと観察ちゃん。ついていくと玄関だ。カイル君がドアを開けて待っていてくれる。
中に入ると、もう10人くらい集まっていた。
「もう少しするとみんな集まるよ。紹介はそれからでいいね」
「うん。いいよ。そのうち、公爵と執事長、侍女長が来るよ」
「爺さん、婆さん連中か。いいけどさ」
アジトでは大分カイル君がフランクな話し方だ。いいけどさ。
アジトを見て回っているうちに、カイル君の友達全員と馬車がついた。
公爵が挨拶しようとした。
「お爺さん、いらない、いらない。名前だけ」
「そ、そうか。ハ、ハロルドだ」
「会議室に行こう」
会議室は大きなテーブルがあって周りに椅子がおいてある。ここで普段作戦会議をするらしい。みんな席についた。
カイル君が話し始める。
「自称ハロルド、僕のお爺さんだよ。隣はウォーレンとバーサだ。時々アジトに来ているから知っていると思うけど。それから、フロランスちゃんだ。よろしく」
引き続き18人の紹介があったけど忘れた。
「それじゃわかったことを話しておこう」
公爵が話し始める。
「まず、この5日間、夜間に放火があった。みんな知っているね。犯人はわからない。犯人の探索と放火の対策のために衛兵の他に昨日から近衛兵も投入された。今は貴族街と王宮は手薄になっている」
すこし間をおいて話を続ける。
「シン様から5回の放火現場にいつも同じ人がいるとお知らせがあった。この絵だ」
知っていると言う声がいくつか上がった。トビアス商会の店長だった。
「犯人と決まった訳では無いが、5回偶然が重なるとは思えない。何か関係していると思われる」
「それじゃまずはトビアス商会の監視だね。他に手がかりはないし」
カイル君が続けた。
「僕の家が近いよ。基地にすればいい」
商家の子供だろうね。
「じゃ、彼の家に10人。連絡要員も入れて10人だよ。行ってくれるかな。なにか動きがあったらアジトまで連絡して。夜は危ないから3人で来て」
商家の子供をいれて10人が出て行った。
「待て待て、俺も行く」
ハロルド爺さんが意気込む。
「いいけど、待遇はハロルド爺さんだよ」
「もちろん。それで結構」
ハロルド爺さんもついて行った。こっそり爺さんに危なくなったら観察ちゃんを呼んでねと言っておいた。
残りは18人のうちの8人と執事長と侍女長と私。それと本部長のカイル君。さて私はどうしようかな。
婆さん爺さんを連れて王宮に行こうかな。決めた。婆さん爺さんをお父さんに押し付けてこよう。
「カイル君、爺さん、婆さんを王宮の警備に連れていきたいんだけど」
「どうぞ、どうぞ」
カイル君二つ返事だ。厄介払いとも言う。
「多分、王宮か貴族の屋敷を襲うと思う。だから王宮で待機していてほしいんだけど」
「わかった。いいぞ。悩んでいる宰相の顔を、いや手伝おう」
執事長が王宮待機を引き受けてくれた。
「宝物庫あたりが危ないと思うよ。それか上級貴族の派手な調度品がある屋敷だろうね」
名探偵の私が教えてやる。
「質実剛健のハミルトン家には派手な調度品はありません。宰相の家にもありそうもないです。宰相はしぶちんだとの噂です」
さすがバーサ探偵。よく知っている。お父さん、しぶちんなのね。
「近衛兵を引きずり出したのならやはり王宮じゃないでしょうか」
バーサさんが続けて意見を述べた。
もっともだね。面白いことになりそうだ。やっぱり二人をお父さんに押し付けてこよう。
「じゃ、ちょっと行ってくるね」
カイル君に言って、3人で観察ちゃんと王宮前広場に転移。受付を通っていこう。あれ、爺さん婆さんは街着で変装だからどうするかな。線指輪でも見せればいいか。
執事長が受付に何とか言っている。線指輪を見せた。侍女長も見せる。私も見せる。無事通過。
多分いるのは宰相執務室だね。観察ちゃんがそうだと言っている。こっちこっちと案内してくれる。
秘書さんがいるところを通っていくのね。行ってみよう。
コンコン。
「はい」
「フロランスといいますが、宰相はいますか」
「フロランスちゃん?」
「花街の女将の子です」
「はい。わかりました。すこしお待ち下さい。とりあえず中にお入りください。そちらの方は?」
「お付き」
「そうですか。こちらでお待ち下さい」
なんだか見たことのあるようなお付きの方だと思いながら宰相執務室へ。
「失礼します。フロランス様がお見えですが」
「靴を履いていたか?」
「???もちろんお履きです」
「通せ」
「お付きの方が2名いらっしゃいますが」
花街の女将がつけてくれたのだろう。
「よい。通せ」
「こちらでございます」
執務室に通された。
「なにか妖怪?いや用かい?」
「それがね。放火事件があるでしょう?」
「ああ、今対策を練っているが」
「シン様がね」
雲行きが怪しくなってきたと宰相。
「放火現場5箇所に毎回いる人の似顔絵をくれたのだけど」
「有り難いことだ。こちらで探そう」
「二人いてね。一人はわかって監視中」
大変雲行きが怪しい。
「だれが監視しているのかい?」
「それがお爺さんと孫と孫の仲間の18人」
「お爺さんというのは知り合いかい?」
「ドラちゃんの知り合い」
黒雲むくむくだ。嵐になりそうだ。
「それでねお父さん」
危ない危ない。なにかねだるときの口調だ。
「ここにいる人達の主人なの」
はて、おれは街の人達は良く知らない。
「ハミルトン家の執事長 ウォーレンと申します。隣は侍女長 バーサです」
二人共背筋をピシッと伸ばしてのたもうた。豪雨、雷雨、大風だ。
「な、な、なんで」
「話せば長くなりますが、省略して、現在公爵がお孫さんの知り合いと、放火犯かもしれないトビアス商会の店長とトビアス商会を見張っています」
やばい、やばいぞ。
「それでねお父さん。公爵の推理だと、5日間放火をして、衛兵と近衛兵を街中に引っ張り出したから、今日は、警備が手薄になった、というか、警備が手薄になるようしむけた王宮か上級貴族の屋敷を襲うだろうという話なの」
「今、近衛兵は出払っている」
「そうでしょう。そうでしょう。人手不足でしょう。それでねお父さん。この二人が手伝ってくれるって言うからおいていくね。じゃあね」
「待て」
さっさと出て来た。




