493 星外飛来生物殲滅作戦参加者後日談 (8)
フロランス・ハミルトン侯爵と孫のカイルの活躍(1)
わたしフロランス。お父さんは宰相。この間の殲滅作戦で、私が狐面を被って棒を振るっていたから、数々の難事件を解決している狐面裸足幼女が私だって疑っているみたい。でも裸足でなかったから、裸足でない、裸足でないと言って信じたくないみたい。どうでもいいけど。
さてまた夕方になってあたりが暗くなってきた。今日は出かけないことにしようかな。私が解決しなければならない大事件がそうそう起こるわけではないだろう。
二階から外を眺めている。いつもと同じ。薄暗くなると混んでくる。暗くなるとみんな店の中だ。
遠く中心街の方を見る。あれ、何だか少し赤いよ。火事みたいだ。狐面を被る。観察ちゃんが窓から入って来た。転移した。
火事の現場の近くの屋根の上から下を見る。みんな集まっている。もうほとんど消えたみたい。ボヤだったのだろうか。
火の気がないのにおかしいと言う声が聞こえる。
放火なのかな。
衛兵隊長が見回りを厳しくすると言っている。
観察ちゃんがあちこち映像を記録してくれている。しばらくみていたけど、人がだんだん減って行って、ボヤを起こした家の人だけになったようだ。しばらく観察ちゃんと屋根の上から見ていたけど、変わりはないな。
とりあえず帰ろう。観察ちゃんに送ってもらって、部屋に戻った。
翌日の夜、いつもの通り外を眺めている。あ、また中心街が少し赤くなっている。
すぐ観察ちゃんと出動。昨日と同じ。ほとんど消えかかっている。
昨日もそうだけど、火事の規模は大したことはない。放火には違いないだろう。
観察ちゃんがあちこち映像を記録してくれている。
衛兵が見回ってもボヤが起きるか。衛兵もそんなに数がいないしね。見回りも大変だな。
火事になったら、周りの家を壊すほか手がないからね。ボヤでよかったよ。
今日の火事は昨日とあまり離れていないところだ。
衛兵が言っている。
「2件続けて近くで放火が起こった。多分3件目も近くだろう。明日は重点的にこの近くを見回る」
ふうん。そうなのか。そうすると他は手薄だね。
あれ、ハミルトンの坊ちゃんがいる。周りはハミルトンの18人だな。総出動だ。ふうん。やる気になっているね。
観察ちゃんに送ってもらって部屋に戻る。
放火事件の三日目。
今日は早めに出動しておこう。放火があれば多分この辺あたりという場所の屋根の上に陣取る。
あれあれ、下はハミルトンの18人があちこちに隠れている。衛兵の巡回も頻繁だ。これでは犯人は来づらいだろう。やっぱり来ない。ということは、やるとしたら手薄なところだね。
後ろから火の手が上がる。思っていたところとだいぶ離れたところだ。転移する。すでに犯人はいない。あちこちから人が出て火を消している。すぐ消えるくらいの火だ。
衛兵もハミルトンの18人も駆けつけてくる。何が目的なのだろう。これでは衛兵も疲れてしまう。
観察ちゃんがあれこれ見てから私は部屋に帰った。
それから2日続けて放火があった。いつも場所は予想が外れる。
もちろん現場に行ったけど収穫はなかった。私も一日見張っているわけには行かないしね。困ったね。
朝起きて朝食後、ドラちゃんが来た。シン様が用があるらしい。お母さんに言って出かけた。シン様の用だから遅くなるかもしれない、遅くなったら夕食は出してくれると言っておいた。遅くなっても大丈夫だろう。
神国に行ってシン様に会った。
「観察ちゃんの記録から、五回の放火現場にいつもいた人がこれだよ」
絵に書いた人物画をもらった。二人だ。方向を変えていくつかのポーズをとった人物画だ。一人につき一枚だ。
「ハミルトンの坊っちゃんのカイル君とハミルトンの18人と一緒に見つけたら」
私は名探偵なんだけど、シン様から言われたのではしょうがない。
「うん。そうする」
「いま、ちょうど公爵とカイル君が剣の稽古をしているようだよ。行ってみるかい?」
「うん」
「ドラちゃん、ドラニちゃん、観察ちゃん、送っていって」
ドラちゃんに乗って空の旅だ。私は空の旅が好きだ。気分良好。王都の近くに来たら転移だ。公爵邸の庭だ。公爵とカイル君が稽古をしていたが手を休めてこちらを見ている。
「こんにちは」
「はい、こんにちは」
「私はシンズチルドレンのフロランスといいます。カイル君に協力してもらいたくて来ました」
あれ、相手は歳上なのにカイル君って言ってしまった。
「何かい。東屋があるのでそこで座って話そう」
公爵だ。
ドラゴンに乗って来たからね。粗略には扱えない。みんなで東屋に行く。
「王都で5日続けて放火がありました。ご存知でしょうか」
「知っている。5日続けて放火だから、庶民の不安が高まっている。そろそろ解決しないと危ない。宰相が衛兵だけだと手が足りないから、昨日から近衛兵も投入した」
「シン様が、5回の放火現場に同じ人が来ていた。その人物の発見にはカイル君とハミルトンの18人に協力してもらったらと申しております。ご協力いただけますでしょうか」
「もちろんだ。協力しよう」
「お祖父様、協力するのは僕です」
「おお、そうだったな」
「もちろん、僕も18人も協力します」
「ありがとうございます。それで二人の人物画がこれです」
シン様にもらった人物画2枚を公爵に差し出す。
公爵は一度恭しく押しいただいてから絵を見た。
「ほう、これは良く描けている。本物のようだ。それに前後左右斜めからみた人物が描いてある。見間違えないだろう」
公爵は何か考えている。
「これはもらっていいの」
「いいよ。私は、観察ちゃんの画像が頭の中に入ってくるから大丈夫だよ」
「この男は見たことがあるぞ。まってくれ。思い出す」
侍女長さんがお茶とお菓子を持ってきた。ドラちゃんとドラニちゃんはニコニコだ。私もだけど。バーサさんだと観察ちゃんが教えてくれます。執事長はウォーレンと言うんだって。もうすぐ出てくるだろうと観察ちゃんの予想。
「あれ、この画の人に見覚えがあるわ。どなただっかしら。思い出せない。執事長に聞いてみましょう」
振り返ると、ウズウズしていたらしい執事長がすぐ来た。
「この人覚えている?」
「それは、ですね。顔は覚えていますが。ええと」
ボケ三老人であった。
「とりあえず18人をアジトに集めます」
目立たない観察ちゃんがカイト君と転移していった。
「貴族の執事かなあ」
「お父さんに聞いてみようかな」
「お父さんは貴族かい?」
公爵が聞く。
「トラヴィスと言うんだけど、貴族かなあ」
「宰相はトラヴィスさんだわ。もちろん貴族」
「そうなの。その宰相のトラヴィスだよ。私はトラヴィスお父さんと花街の女将さんの子だよ」
「ひょっとして、噂の狐面裸足幼女というのはフロランスちゃんのことかい?」
「あたり。お父さんには隠しているわけではないけど黙っているの」
「はははは。面白い。黙っていよう」
ニコニコと執事長と侍女長が頷いている。
「「「思い出した」」」
三人とも思い出した。
「トビアス商会の店長だ。もう一人はわからない」
公爵が代表して答える。他の二人も同じと言っている。
「ということはどういうことだ。トビアス商会は調度品を扱っている。あまり品が良くない。うちにも売り込みに来たが断った。一部の貴族には人気だ」
「近衛兵を街中に投入したのでしょう。だったら貴族街と王宮は手薄と言うことでしょう」
バーサ探偵が発言する。
「狙いは貴族街か王宮か。そうするともう一人は盗賊の一味かもしれない」
ウォーレン探偵も発言する。
「よし。本部をアジトに置こう」
あれあれ、老人組が張り切ってきた。わたしのお株がうばわれてしまう。いいか。ここは花をもたせよう。
「馬車を用意してくれ。御者はウォーレンだ。バーサ、倅殿の執事に3人で出かけてくると言っておいてくれ。やつらボンクラだから何も気が付かないだろう。なんとか言われたらスパエチゼンヤに行ってくるとでも言っておけばいい」
「じゃあ、私はドラちゃんとドラニちゃんとアジトに先に行っているね」
「わかった。すぐ行く」




