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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第四部

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488/499

488 星外飛来生物殲滅作戦参加者後日談 (3)

 ハミルトン公爵邸

 庭で孫と剣の稽古をしているハミルトン公爵。

 双方とも剣のスピードが前と格段に違う。


 「おい、早くなったな」

 「はい。お祖父様。シン様の戦いを拝見してから後、早くなりました」

 「そうだな。俺もだ。それに体のキレも力も段違いだ。疲れもない。これならどんな魔物とも戦えるぞ」

 「はい。今度はシン様の戦いに参加させてもらえそうです」

 「うむ。次回は参加させていただこう」

 自信満々の二人である。


 キュ、キュ。空からドラゴン様が二人でやって来た。

 調子に乗った公爵。

 「一手ご指南を」

 「いいよー。かかってきな」

 ドラゴン様が棒を取り出した。

 公爵と孫がかかっていく。

 ポン、ポンと叩かれた。ふたりとも木刀を落とした。肩も落ちた。伸びかけた鼻がくじかれた。

 「がんばるんだよー」

 ドラゴン様が飛んでいってしまった。


 観察ちゃんが見ている。シン様の戦いを見学して、公爵も孫も可愛い小動物の正体に気がついていた。


 「一手ご指南を」

 懲りない公爵と孫である。

 観察ちゃんが枝を取り出した。

 公爵と孫がかかっていく。

 観察ちゃんがぴょんと飛び上がってポン、ポン。ふたりとも木刀を落とした。またまた、肩も落ち、そろりと伸びかけた鼻がくじかれた。


 観察ちゃんが閃いたらしい。リオンちゃんを連れてきた。チルドレンの中で一番弱い。

 幼児を見て少し自信が回復してきた公爵と孫。懲りない。

 「一手ご指南を」


 「一手って何?ご指南て何?」

 観察ちゃんがリオンちゃんになんとか言ったらしい。

 「わかった」

 棒を取り出す。


 「いいよ」

 公爵と孫がかかっていく。

 ポン、ポンと打たれた。ふたりとも木刀を落とした。


 やっぱりという顔をしている観察ちゃん。

 リリアナちゃんを連れてきた。

 ポンポンで終わり。


 それではと観察ちゃん、ヒバさんとコマチさんを連れてきた。

 「こんにちは。公爵様、カイル君。稽古したいそうですね」

 まずはコマチさんだ。観察ちゃんが木刀を渡す。

 「どうぞ」

 ローソク組だ、これならなんとかなるだろうと懲りない公爵とカイル君。カイル君はコマチさんとヒバさんにいいところを見せようと意気込む。


 二人して打ちかかっていく。

 ポン、ポン。

 二人共木刀を落とした。

 そんなはずはないと公爵とカイル君。


 相手が変わってヒバさんだ。

 「どうぞ」

 ローソク組だ。何かの間違いだと二人で思いっきり木刀を振る。

 ポン、ポン。

 二人共木刀を落とした。

 自信が木っ端微塵に砕かれた。


 観察ちゃんが首を捻ってコマチさんとヒバさんと転移していく。

 「「頑張ってね」」

 コマチさんとヒバさんに励まされてしまった。男の沽券がーーー。哀愁のカイル君である。


 観察ちゃんが再びやってきた。

 神父さんの子供である。線香組だ。

 今度は勝てるだろうと余裕の公爵とカイル君。


 観察ちゃんが子供に棒をわたす。

 「いいの?」

 観察ちゃんが頷く。

 「いつでもいいよ」


 公爵とカイル君は、怪我をさせてもなと思いながらも思いっきり踏み込み木刀を振り下ろす。

 ドカ。ドカ。

 胴を抜かれた。肋骨が何本か折れる。


 すぐドラちゃんが観察ちゃんを乗せてやって来た。ドラニちゃんもついて来る。

 ドラちゃんが公爵とカイル君に手をかざすとすぐ骨折が治る。

 ドラゴン様が神父さんの子供を褒めて観察ちゃんが転移させていく。

 『最弱の子に負けているんだよ。もっと精進だね』


 爺さん、婆さんがのぞいている。爺さんは、ウォーレン執事長、婆さんは、バーサ侍女長だ。

 ドラちゃんが笑った。少し引く公爵とカイル君。


 ドラちゃんが爺さん、婆さんを呼んだ。

 ドラニちゃんが爺さんと婆さんに木刀を渡す。

 「旦那様に剣を向けるなど」

 勝てると思った公爵。

 「よい、かかってこい」

 爺さんが公爵。婆さんがカイル君の相手だ。


 「手加減なし。初め」

 ドラちゃんが声を掛ける。

 あっという間に木刀が叩き落される。公爵とカイル君は呆然としている。

 「「負けた」」

 ここに至ってついに自分たちの実力に気がついた公爵とカイル君である。


 「人の世では確かに相当な使い手になった。だが上は層が厚い。慢心することなく励むと良い。しばらくしたらまた来よう。外出は観察ちゃんに頼むと良い」

 ドラちゃんとドラニちゃんが転移していく。観察ちゃんは庭の大木にぴょんと飛び移った。


 公爵は思い出した。コイツらたしかに昔から手加減してもらっても強かった。今日は手加減なしだった。しかし、線指輪をもらった俺達にかなうはずがない。おかしい。


 「旦那様。戦場ではシン様から口止めされていましたが、じつは私共も」

 ウォーレン執事長とバーサ侍女長の指に線指輪が光る。


 「どこにいたのか?」

 「谷の端にいました」

 執事長が代表して答える。


 「戦に参加したのか?」

 「はい。なかなか大変でした。あちこち怪我をして、その度毎に観察ちゃんに運ばれてエスポーサ様に治していただきました。私などは角に腹部を貫通され、足が食いちぎられそうになりました。バーサは腕がもげました。エスポーサ様は戦いながら片手間でちょいちょいと治してくれました。桁違いの力です」


 侍女長が続ける。

 「私たち以外の人は、みな最低でも基礎的な訓練を終えた方々、肉体的に大変な力がある鉱山都市の方々でした。強靭さが違います。訓練経験もなく、力もない私たちが戦場に立ったので怪我をして当然でした。みなさんは、怪我をしてもかすり傷くらいでした。でもお陰様でエスポーサ様から地上での行動は合格とお墨付きをもらいました。あとは、水と空らしいですが、陸の訓練が終わればコツを覚えればいいとのことでしたが、常識が違うので本当にそうかわかりませんが」


 「それは大変だったな。死ななくてよかった。まだまだ長生きして俺に仕えてくれ」

 「もったいないお言葉。誠心誠意仕えさせていただきます」

 「うむ。頼む。俺とカイルは見学していただけだ。戦死してしまうような怪我をして死線を潜り抜けた人に敵うはずがなかった。これからも手加減せずにお願いする」

 「承知しました。では一手」

 「今日はもう良い。たまらん」

 主従4人の笑い声が公爵邸に響く。


 母屋まで届く笑い声に、使用人は、公爵も変わった。格式を全面に押し出し、常に王室と世間に対して肩肘張っていたこの家も丸く明るくなった。仕えるのが楽しくなったと思うのであった。

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