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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第四部

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487/499

487 星外飛来生物殲滅作戦参加者後日談 (2)

 鉱山都市ミネリア

 ハーマン組合長、クラーリス副組合長、ベアグマン隊商隊長、エトクロース執事長が戦場から無事帰ってきた。


 四人が急いで連れ出されたので、事態がわからない組合本部の居残り組に、何があったか講釈師さながらの身振り手振りで話す組合長。


 エスポーサ様の全てを燃やしてしまう働き、両手に武器を握って振り回す人たち、とりわけ、棍棒を両手に持って振り回すきょうちゃんの話に聴衆はオーとどよめく。

 筋肉信奉者たちにとって、両手に棍棒は夢である。講釈師の話に従って握った手のひらに汗をにじませながら棍棒を持ったつもりで両手を振り回す聴衆。鉱山都市にきょうちゃん棍棒聖人伝説が爆誕した。


 「それでおれたちはこれをもらった」

 黒光りする鎚である。執事長は棒を出した。


 「どこから出したんでしょう?」

 「これだ」

 4人が線指輪を見えるようにする。

 「この指輪がシン様の信者の証である。この間の魔物襲来を撃退してくれたシン様とアカ様よりてづから頂いた。見ろ、この光り。それにこれは収納になっている。一辺100メートルの立方体の収納だ。信じられないが本当だ」


 「それじゃ鉄の延べ棒を運ぶのも楽ですね」

 「いや、神様から頂いたものに商売物の鉄の延べ棒を入れるわけにはいかない。入れるのはシン様への献上品の鉄の延べ棒3本のみだ」

 なんとなく納得がいかない様子の組合員。


 「そうだ。鉄を打ってみましょう」

 クラーリス副組合長が言ってゾロゾロと鍛冶場に行く。


 鉄を打っていた者をどかして3人で打ち始める。

 鎚が炎をまといだした。

 オーッとどよめく。

 あっという間に3本の鉄の延べ棒ができた。


 今までの鉄とは明らかに輝きが違う。

 またオーッとどよめく。

 「これだ。これしか収納できぬ」

 あまりの質の差に全員納得した。仕事は口ほどにものを言う。

 以後、三人は炎の三鎚と呼ばれるようになった。


 三人はシン様からもらった鎚はシン様への献上品を作るときにしか使わなかった。使わなくても今までより質の良い鉄の延べ棒が出来るのであった。


 ラシード隊

 やっと隊商の旅を続けることが出来たラシード隊。今回は長めの旅である。ディースを越えて高原を歩いている。


 「隊長。出ませんね」

 「出られても面倒だ」

 「でも飽きてしまいます」

 「それはそうだな」


 遠くから隊商が来る。

 近づくと道をそれて避ける。相手のベーベーが恐れている。相手の隊員も目を合わせない。

 「なんだ」

 「しょうがないっすよ。隊長の目つきが悪いっす」

 「お前の目つきだ」


 ディースまではなんとなく見知った顔がいたからこんなに極端に避けられはしなかった。ディースを過ぎてからはこれだ。


 遠くに丘が見える。襲撃にちょうどよい。

 「出ますかね」

 副長が聞く。

 「出てほしいものだ。みんななるべく丘を見ないように。下を向いてトボトボ歩こう。そうだ。岩塩をこれみよがしにベーベーに積んでいこう」


 隊商は止まらずにラシードが塩板を配って歩く。隊員もホイホイ受け取ってベーベーにくくりつけていく。もはや塩板など隊員にとって偽装飼い葉袋のようなものである。ベーベーも塩板をくくりつけてもびくともしない。


 「隊長、塩板が軽くなったっすね」

 「たしかにそうだが、軽くなったのは俺達が力がついたからだ。この間の殲滅作戦から帰って来てからどうもおかしい。物が軽い、柔らかい」

 「ほんとにそうですね。ベーベーも一段と強くなったようです」

 「こいつらも頑張ったからな」

 ベーベーと鳴いている。知能も向上したようだ。


 「ゆっくり下を向いてトボトボと行くぞ」

 「ベーベー」

 返事をした。

 ベーベーも隊員も下を向いてトボトボと歩いていく。

 だんだん丘に近づく。


 「止まれ」

 おお、出た。一応止まる。

 「命までは取らない。積んでいる塩板を置いていけ」

 「盗賊さんでしょうか」

 「変なことを聞くな。当たり前だろう」

 「ありがとうございます。何人様でしょうか」

 「30人だ」

 丁寧に聞かれたからついうっかり答えてしまった盗賊。

 「左様ですか。それでは少しお待ちください」


 「おい、30人だとよ。一人あたり一人でどうだ」

 ベーベーが文句を言っている。

 「隊長、ベーベーが不服のようです。それに盗賊の数が足りない」

 「塩板を積んでいるだろうが。塩板が傷んだらどうするんだ」

 「さっさと収納しましょう」

 「それもそうか。お前ら持って来い」


 「おい、何をやっている。俺たちは盗賊だぞ。もっと怯えるとか、盗賊に襲われた場合の標準的な行動様式があるだろう」

 「もう少し待ってくれ。今塩板を下ろす」

 それもそうかと思った盗賊。

 「早くしろ」


 隊員が塩板をベーベーから取り外し、隊長のもとに持ってくる。山積みにする。全部下ろし終えた。


 「ベーベー10、俺たち20だ。早い者勝ちだ」

 ラシードが塩板を収納しながら叫ぶ。

 ベーベーと隊員が盗賊に殺到する。盗賊は抵抗する間も無く吹っ飛ばされた。


 「困った。ぶつかっただけでおしまいだ。これでは剣の技術が向上しない」

 「もっと切り結ぶとかしないと魔物が襲っているようでいけませんね」

 副長も同意だ。


 「俺らは魔物っすか?」

 「魔物はまずい。神軍の二軍、いや三軍にしておこう」


 盗賊が去った後におこぼれを頂こうとしてすぐ先の岩の陰に隠れていた弱小盗賊団、5人。

 「連中は人もベーベーも目つきが極悪だ。盗賊を獲物と思って探している極悪盗賊狩暴力隊商だ。逃げるぞ」

 そっと逃げ出した。


 「5人いるけどどうします?」

 「あれじゃ普通の隊商でも問題ない。運動にもならない。面倒だからやめておこう」

 ラシード隊長が言って、出発した。どこか抜けている隊長に隊員である。荷をそれらしく積むのをすっかり忘れている。


 ラシード隊は鼻歌を歌いながら今日も意気軒昂、信じられないほどのハイペースで歩いていく。ベーベーもベーベーと鳴いてご機嫌である。ベーベーは空荷であることに気が付かない。主人と隊員に似て抜けているのであった。

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