486 星外飛来生物殲滅作戦参加者後日談 (1)
リュディア王国
国王と先の国王。
「いやあ、あれは大変だ。あんなところにいたのでは身が持たない。帰って来れてよかった」
先の国王がニコニコして言う。
「全く。誰一人として、世話をしてくれない。シン様関係者は困ったものです。苦情は言えないし」
国王が答える。
「こっちはいいな。侍女も侍従もいる。それにうるさいのはシン様の作戦に参加している」
「伸び伸び出来ますね」
一ヶ月弱のんびりしていると先の王妃と侍女、王妃が帰ってきた。
ゆっくりお茶していた先の国王と国王である。
「大分伸び伸びしていたようね」
先の王妃が国王に向かって言う。
「いや、ちゃんと日々仕事をしていた」
「そうだ。倅は仕事をしていた」
宰相が書類を持ってきた。
「宰相ものんびり過ごせたかしら」
王妃が聞く。
「ええ、のんびり三人で過ごせました」
誘導されてうっかり発言してしまった宰相。気づいて慌てて口を抑えるが時遅し。
バキッ、バキッと音がした。見ると先の王妃と王妃の椅子の右の肘掛けが粉々になっている。
「柔らかいわね」
「そうですね。気を使うようです」
のんびり過ごせた三人組。真っ青である。
先の王妃の侍女が入ってきた。ドアを閉める。
バキッ。ドアノブが破壊された。
「まあ、私としたことが」
「しょうがないわよ。柔らかいんだから。シン様のスパ棟のようにもっと普通の硬さのものをつくればいいのよ。そうだわね」
「そんなことを言われても」
バキッ、バキッ。今度は先の王妃と王妃の椅子の左側の肘掛けが粉々になった。
「そうだわね」
「「はい」」
「それにしてもどうしてそんなに力がついたのかね」
余計なことを聞く先の国王。
「それはこの星の危機だというのにあんたたち三人がすぐ帰ってしまったからわからないのよ。大体あなたたちはーーー」
シン様とアカ様の祝福のお陰で体力が大幅に向上した先の王妃と王妃。三人にお説教を始めた。
国王と宰相、先の国王は、先の王妃たちが精神的には前からだが、今度は肉体的にも恐くなってしまった。
花街
花街に刃傷はつきものである。時々刃傷沙汰が起きる。
刃物は持って入ることはできない約束で、門を入ったところで預かることになっている。ところが時々すり抜けて刃物をもって中に入ってしまう事がある。覚悟して入るので刃傷沙汰になるのであった。
今日も店の芸妓に岡惚れした男が隠し持っていたドスを芸妓の首に当て二階の一室に立てこもっていた。
男は芸妓目当てに通って来ていたが一向に埒が開かない。贈り物もしたし、数日おきに通って来て、ずいぶんお金も注ぎ込んで芸妓は俺を好いてくれていると思っていた。
それなのに座敷ではニコニコと対応してくれるがそれまでである。それ以上のことを誘いかけても暖簾に腕押し、全く思い通りにはならない。
男はだいぶ奉公先のお金を持ち出してしまっていた。身分以上の遊びをしてしまっていた。そろそろ奉公先に横領がバレそうな気配がある。もう先がない、最後と思って、手を取って引き寄せ誘いをかけた。
「あれー、お客さん、ご無体な。誰か、誰かー」
店を入って来た時から男が何か思い詰めているようで危ないと思った若い者が廊下の隅に潜んでいた。
芸妓の悲鳴を聞いて障子を開けて部屋に踏み込んだ。
部屋の中では客が芸妓の首に手を回している。
「何をする」
「うるさい。大金を注ぎ込んだのに手もさわれない。おかしいではないか」
「ここは下衆のやるようなことをする場所ではない。踊りをみたり、唄を聴いたり、お座敷遊びをしたりして楽しく過ごす場だ」
「うるさい。お金だけ取っておいて何も出来ないではないか」
「それは店が違う。ここではそういうことは御法度だ」
「うるさい、うるさい。うるさい。一緒に死んでやる」
男が隠し持っていたドスを芸妓の首に近づける。
少し離れて様子を見ていた若い者、店の旦那の元へ急いだ。
「大変です。二階の客が芸妓に刃物を突きつけています」
「なんだと。どこの芸妓だ」
「例の女将さんのところです」
「すぐ行ってこい」
旦那は二階に、若い者は女将さんの家へ走って行く。
「大変です。うちの店でこちらの芸妓が男に刃物を突きつけられています」
すぐ奥から女将さんが出てきた。
「行ってみましょう。案内して」
おかみさんが案内された店に入ると、店の旦那にわびられた。
「申し訳ありません」
「どの部屋?」
旦那が案内する。
立てこもりの一室の前に行くと障子が開いており、男が女性の首筋にドスを当てて喚いている。廊下には店の若い者が集まっている。
「来るな、来るな」
女将さんがすっと部屋の中に入る。男が気づいたときには女将さんがすぐ目の前にいるのであった。
男が女将さんにドスで突きかかる。
女将さんは突き出されたドスを両の手のひらで挟んだ。パキンと音がして女将さんの手のひらの中でドスが折れた。
呆然とする男。ストンと腰が落ちた。
同時に廊下にいた店の若い者がなだれ込んできて男を抑え込んだ。
「さ、帰りましょう」
女将さんは芸妓を連れて帰っていく。店の旦那がペコペコしている。
女将さんが置き屋に戻って女将さんの部屋で女性に事情を聞いていると、騒ぎのあった店から迷惑料が届いた。
「とっておきなさい」
「でも」
「いいの、いいの。勝手に持ってきたのだから」
こうして女将さんはならず者には恐れられ、店の旦那衆には頼りにされるのであった。
ついたあだ名が、ドラゴン置き屋のドラゴン女将である。本人は知らない。




