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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第四部

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470/499

470 鉱山都市ミネリア 大襲来が終わって

 そのころベアグマンさんの屋敷では、戻ってきたベアグマンさんが執事長に聞いた。

 「シン様は?」

 「働いたのでもうお休みです」

 「そうか。あれだけ働いてくれたからな。しかし、すごかったぞ。今回の大襲来をシン様とその家族だけで対応して、少し魔物を逃してやってあとは殲滅だ。馬も強そうな動物も、門から出て魔物を外側から削って行った。あのエスポーサ様も白い狼もものすごく強い。密集した魔物に嬉々として突っ込んで簡単に突破だ。チルドレンさえ、門の前に飛び降りて魔物を棒でスパスパだ。恐れ入った。あれは棒でなくて、無刃棒剣だ。あとはマルティナさんの光る大太刀、息子さんも同じく光る太刀で魔物を両断、マリアさんの光跡をのこして魔物をバッサリと切る剣、ステファニーさんの禍々しい黒い光跡を残して魔物に向かっていく鞭、無刃棒剣を振るうドラちゃん、ドラニちゃん。オリメさんとアヤメさんは、武器は持っているようには見えないのに、周りの魔物がバタバタと倒れる。暗殺の名手と見た。いやあ全員恐ろしい」


 「シン様とアカ様は?」

 「シン様はアカ様を抱っこして城壁の上で指揮をとっていた」

 「おそらくお二人はみんなより隔絶した力の持ち主と思います」

 「そうか。そうかもしれんな。そうでなくてはみんなが唯諾々と従わないだろう」

 「力とはもっと違った関係があるのかもしれません。力で服従するということではなくて、心から慕って従っているような気がします」

 「それではまるで信仰だ」

 「ーーーーー」


 「しかし、考えてみると確かにおかしい。人があんな力を持てるとは思われない。馬も動物もそうだ。ブランコ様に至っては吠え声だけで範囲指定で魔物を引かせた。あー、神と神の一族か」

 「わかりません」

 「どう接したらいいのか」

 「普通がいいと思います。深く考えずに普通に接するのがいいと思います」


 その夜、鉱山都市ミネリアの周辺では一晩中魔物が倒された魔物を咀嚼する音が聞こえた。大量に餌があるので争う気配は全くなかった。


 夜明けとともに、ハーマン組合長、ベアグマン隊長、クラーリス副組合長が壁の上に登った。嘘のように森は静かで、ミネリアの周辺にも魔物の死体はほぼ残っていなかった。

 「襲来は終わったな」

 ハーマン組合長がポツリと言った。

 「ああ、腹を空かせた魔物も満腹してねぐらに帰っただろう。森も静かだ。残っているのは血の匂いと食べかすだけだな」


 「全く被害がなく終わった。昨日の襲来は、昔あったという大襲来と同規模のようだ。その時は死人も大勢出て、都市も壊滅的被害を受けたという。あまりの被害なので、鉄の取引を断りにいったら、エチゼンヤさんから多大な支援物資をいただいて復興できた。それが今回は人も都市も被害がない。シン様には組合として最大限のお礼をしなければならないな。シン様はエチゼンヤさんの友人と言っていた。エチゼンヤさん方面には足を向けて寝られないな。」

 「そうだな。だがどこにエチゼンヤさんがあるのかわからない」

 「それもそうか」

 笑顔が戻った三人であった。


 「ハーマン、シン様は鉄の延べ棒を買いたいということだった」

 「クラーリス、シン様に好きなだけ持って行ってもらえ」

 「はい、承知しました」


 「荷馬車一台引いてきただけだぞ」

 「見たろう。シン様の一家が歩くと魔物が消えた。収納があるのではないか。それもかなりの容量の収納だろう」

 「私も見ました。チルドレンさえ大きな魔物を収納していたようです」


 「みなさん、おはようございます」

 下の方から声がする。シン様一行だ。

 「「「おはようございます」」」

 思わず丁寧に返す三人。


 シン様一行が城壁の上に上がってきた。今日は小さいドラゴンが2頭いた。ドラちゃんとドラニちゃんと呼ばれていた人がいなくなっていた。大人のやけに神々しい女性が増えていた。直視できない。柴犬とやらは見当たらない。


 「夜中に魔物が食べたようですね。残ったのは食べ残しと血の匂いですか」

 「おかげさまで被害がありませんでした。血の匂いなどはそのうち薄れるでしょう」


 「まあしかし気分が悪いので消しましょう」

 神々しい女性が手を城外に向ける。

 血の匂いが消えていく。食べ残しが消えていく。森の朝の爽やかな風が流れてくる。

 三人は思わず跪いた。


 「シン様、アカ様、ご家族様。誠にありがとうございます。この御恩は我々ミネリア一同決して忘れることはありません。子々孫々伝えてまいります」

 ハーマン組合長が代表して感謝の言葉を述べた。


 「そんなに気にしていただくことでありません。みんな暫くぶりに体が動かせて喜んでいます。血や食べ残しは栄養がありますので少し加工して木炭のための木の植林地にまいておきました」


 「ありがとうございます。鉄鉱石は大変良質なものが大量にあり、露天掘りができますが、木は有限なので、我々の先祖が気付き、植林して木を育てて木炭にするようにしました。長くやっていくために森に負担をかけずに森が供給できるだけの分で鉄を作っています」


 「素晴らしいことです。そこになかなか気づかず欲に駆られ森を伐採して破壊しがちです。これからもその方針でお願いします」

 「ありがたき幸せ」


 「そうだ。僕の関係者の印があるのですが、要りますか?」

 「もちろん、お願いいたします」

 アカが水の入ったコップと線指輪を乗せたお盆を出す。

 「まずはこの水を飲んでください」

 三人に飲ませる。体が光る。線指輪をしてやる。また体が光る三人。


 「線指輪の収納には、竹水筒とハンマー、ナイフが入っています。岩塩の板も10枚ほど入れておきました。収納の大きさは一辺100メートルの立方体です。指輪は外すと僕のところに戻って来ます。不可視と思うと見えなくすることが可能です。執事長には渡しました」

 「ありがとうございます。夢のような線指輪です」


 「僕らはこれで引き上げます。鉄の延べ棒はエトクロース執事長から3本ほどいただきました。ありがとうございました。では上空から拝見して、帰ります」

 「3本でよかったのでしょうか。在庫全てお持ちいただきたくお願いします」

 「3本で十分です。なかなかの品質ですね。鍛えるのも大変だったでしょう。ではこれで」


 ドラゴンが巨大化した。一頭は目の前、一頭は門前。門が開いて馬と動物が外に出た。

 城壁の隣に浮いている巨大ドラゴンにシン様一行が飛び乗った。門前では馬と動物がドラゴンに乗った。

 「さよなら。機会があったらまた会いましょう」


 ドラゴンがふわりと浮いて、鉱山都市ミネリアの上空を一周して、鉄鉱石の採掘場の上を一回りして、森の彼方へと消えて行った。

 三人は暫く沈黙してドラゴンが飛んでいった方を見ていた。


 「神か?」

 組合長がつぶやく。

 「ああ、そうかもしれない。神と神の一族なら昨日のことから今までのことに説明がつく」


 「あの女の子が巨大ドラゴンか。勝てるわけがないな」

 「筋肉質の女の人は、筋肉に力を入れずに私に楽に勝った。人ではないと思った」


 ハンマーを取り出したハーマン組合長。

 「すげえ、なんの金属だかわからないが、これはすげえ」

 慌ててハンマーを取り出すベアグマン隊商隊長とクラーリス副組合長。


 三人のハンマーは微妙に違う。三人に合わせて作ったらしい。三人とも振ってみる。手に馴染む。

 「すごい。これなら高品質の鉄が打てそうだ」

 「ああ素晴らしい」

 ハンマーを大事そうにしまったクラーリス副組合長。


 岩塩の板を取り出した。

 「岩塩の板って、大きな板よ。このあいだエチゼンヤさんが持って来てくれた板だわ。10枚も入っている」

 三人とも10枚づつ入っている。びっくりしている。

 「しかし、これだけのことをしてもらってお礼が鉄の延べ棒3本では申し訳ない」

 どうするかとハーマン組合長。


 「なら、エチゼンヤさんとの取引の時、毎回三人でこのハンマーで一本ずつ鉄の延べ棒を作り、シン様へのお供えだと持って行ってもらうのはどうか」

 「良い案だ。このハンマーで打った鉄の延べ棒3本ずつずっと渡そう。その度ごとにシン様と御一行様の偉業と御恩の記憶を新たにでき、語り継げる」


 「せっかくだから木の箱に入れてお供物としてエチゼンヤさんに持って行ってもらいましょう」

 「クラーリス、良い案だ。お前が気持ちをこめて木の箱をつくれ」

 「えええ」


 ハーマンとベアグマンはニヤニヤ笑っている。クラーリスは力はあるが不器用なのであった。

 「お前の責任で誰かに作らせれば良いさ」

 ベアグマンが助け舟を出す。

 「そうします」


 三人は笑顔だ。今日は良い一日になりそうだ。

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