461 遊具を作り設置する (下)
では続いて孤児院に行こう。孤児院の庭に転移。
ゴットハルトさんが目ざとく見つけてやって来た。
「こんにちは。今日は滑り台を設置しに来ました」
「こんにちはシン様。滑り台とはなんでしょうか」
託児所の園長さんと同じようなやりとりをして滑り台を設置。
こちらは大人の背より大きい。大人も滑れるだろう。
ゴットハルトさんが登ってすべって見た。
「おお、これは面白い」
子供達が集まって来た。僕も、私もと言っている。
「よし、並んで。前の子が滑り降りたら滑るんだよ。小さな子は大きい子が抱っこして滑ってごらん」
初めはおっかなびっくりだけど一度滑るともう一度滑りたくなるらしい。よかった。
小さい子も楽しいらしく大きい子にあっちあっちと指差して頼んでいる。大きい子も面白いから小さい子を連れて登っていく。
「スパエチゼンヤ支店の隣に児童公園を作りました。そこには滑り台をはじめいろいろな遊具が揃っています。遠足で行ってみたらいいですよ」
「このほかにもあるのですか?」
いつの間にかゴットハルトさんの奥さんがやって来ていた。
「ええ、いろいろあります。ただ、材料が神国関係のものなので、こちらには、その材料を使わずに作ろうと思います。この滑り台はそのため木製です。ただし処理は僕がしたので腐りませんが」
「ありがとうございます。早速遠足を計画して、行ってみようと思います」
「その前に俺が下見を」
「あなたは現場で子供をしっかりみてください。とりあえず私たちが見て来ます」
奥さん連中や爺さん、婆さんが集まっていた。それじゃ送って進ぜよう。観察ちゃんに頼んだ。
子供達はアカと遊んでいる。滑り台を滑ったらアカと遊んでもう一度滑り台に滑りにいく。
30分ほどしたら奥さん連中が帰って来た。
「あれは面白いわ。すぐ遠足の計画を立てましょう」
奥さん連中は中に入ってしまった。
少しかわいそうだから子供はアカが遊ばせているし、ゴットハルトさんたちを交代で児童公園に送った。
ゴットハルトさんが帰って来た。
「あれはいい。全部試して来た。すぐ遠足だ」
保父さんの児童公園体験が一巡した。
みなさん、大満足のようだ。そのうちアスレチックを作ろう。
「それじゃよろしく」
奥さん連中も出て来てお礼を言われた。
アカと一緒に転移。神国に戻った。あれエリザベスさんも一緒だ。ニコニコしている。いいですけど。
ジェナたちが帰ってくる。チルドレンは送って来たらしい。
「おとたん、出かけた」
ジェナを抱っこした。よしよしいい子だ。
「託児所と孤児院に行って来た。みんなの会館の庭に遊び道具を設置したんだけど見にいく?」
「おとたん、でかけた。ん?遊び道具?ま、いいか」
ジェナを抱っこしてみんなの会館へ。途中管理職の皆さんと合流して、一緒に行く。
会館の庭に着くと、すぐブランコとドラちゃんとドラニちゃんが遊び出した。観察ちゃんも遊んでいる。ジェナももちろん。プリメーロとプリメーラも遊具の話を聞いたらしくやって来た。大人もやってみている。エスポーサはジェナを抱っこしてブランコに乗っている。皆楽しそうだ。
「いいものをつくりましたね。楽しみがまた増えました」
エリザベスさんだ。
「今まで生きていくのに精一杯でこういう楽しみはありませんでした。こういうものを作ろうとする気も全く起きませんでした」
ステファニーさんが発言し、みなさん同じ感想のようだ。
「変わったことはそんなにないのに、気持ちの持ち方が変わった気がします」
マリアさんが言うとエリザベスさんが続ける。
「そうね。気持ちが変わったわね。スパエチゼンヤ以来、なんというか、生活を楽しむ、前向きに生きることを楽しむ。そういう気持ちが芽生えて来たわね。まだまだこの国の王都の一部だけかもしれないし、犯罪も多いけど。少なくとも銭湯はごく安い値段だから誰でも入れる。野外劇場は無料で楽しめる。下着、それだけで随分違うと思うわ。放っておいて知らぬふりをしていた貧民街も宰相が手をつけはじめたし、みんなシン様アカ様のおかげだわ」
褒められてしまった。それだけで随分違うと言うのは何を指しているのだろう。僕、たいしたことはしていないのに。この世界は大したことをしなくても大したことになるのです。アカがのたもうております。そうですか。
「それじゃ夕食だから帰るよ」
みんなでうちに帰ります。もちろんエリザベスさんも。お狐さんも来ました。
結局エリザベスさんは一泊して朝食を食べてから観察ちゃんが送っていった。
朝からジェナが張り切っています。みんなの会館の庭の遊具で遊びたいらしい。プリメーロとプリメーラが来た。リオンちゃんとフロランスちゃんもドラちゃんが乗せて来た。
「行くよ。新しい遊びだよ」
ジェナがチェルドレンを率いていく。ブランコとドラちゃん、ドラニちゃんも行った。お狐さんもなんのことだろうと思ったらしくついていく。
おやつには帰って来た。お狐さんが抱きついて来てアウアウ言っている。そうか。子供を遊ばせたいのか。じゃ、神職さんのいる社でいい?と聞くとアウと返事した。おやつを食べてアカとお狐さんとブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃん、ジェナとチルドレンで、お狐さんの社に転移。もちろん観察ちゃんも一緒だ。社から出て、驚いている神職さんに挨拶。
「子供向けの遊具の設置をお狐さんに頼まれて来ました」
「ここはお狐さんのものです。お狐さんの希望でしたら是非お願い致します」
では早速設置。神国と同じものだよ。お狐さんの中央の社だからいいだろう。
神職さんの奥さんも出て来た。
「では使い方を説明します」
ジェナが一通り使ってみた。
シーソーは片側がドラちゃん、片側がジェナとドラニちゃんでやっていた。
神職さんと奥さんはブランコに乗ってみている。楽しそうだよ。
危ないようなら観察ちゃんに連絡が行くようにしておこう。観察ちゃんはたくさんいるからすぐ助けに来てくれるだろう。観察ちゃんがうん、うんと言っています。頼んだよ。シン様に頼まれた、シン様に頼まれたとうれしがっている。
「ではお子さんが社にお参りに来たら遊ばせてやってください」
お狐さんもアウと言っている。
「承知しました」
では帰ろうかね。お狐さんの社に入る。たらいに水を入れて置いてあるからお狐さんの足を洗ってやった。せっかくだからね。お狐さんをしばらく抱っこする。
「それじゃ帰るね」
お狐さんも分身の元に行くらしい。僕らは神国の自宅前だ。
それから子供がお狐さんの社に来て、お狐様、今日も遊ばせてくださいとお参りして、遊具で遊ぶようになった。時々お狐さんがいる時は一緒に遊んでいると観察ちゃんが報告してくれます。
トウケイの街の子供だけでなく、評判を聞いて旅をして親と遊びに子供が来るようになったとのことだ。親は中央の社にお参りできるし、子供は遊具で遊べるし、たまにお狐さんと遊べるしで賑わっているそうだよ。
親も子供も一生の思い出と言って帰っていくらしい。
イヅル国民のすごいところは決して遊具を真似して作ろうとしないことだ。お狐さんの中央の社に行って、お狐さんが設置した遊具で遊ぶのが喜びなのだそうだ。なんだか申し訳ないね。




