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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第四部

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438 ティランママとティランサンの街中研修 貧民街など

 「貧民街は遠いのですか?」

 マルティナが爺さんに聞く。

 「城門から塀沿いにしばらく行ったところに貧民街が広がっています」


 「お母さん、あれはなんでしょう」

 「人がいますね。制服の兵隊さんのように見えますが」


 「あれは衛兵詰所です」

 プリシラが答える。

 「王都の治安維持にあたっているのでしょうか」

 「そうです。貴族街をのぞいた部分が担当です」

 爺さんが答える。


 「貴族街はどうするのですか」

 「それは一応近衛兵が担当ですが、各屋敷は自治ですから事件がないと近づきません」


 「事件があっても自治では屋敷に入るのを拒む貴族も多いのでは?」

 なかなか、マルティナさんは鋭い。爺さんは感心する。やはり只者ではない。誰かに調べさせようかと思うが出歩いているのがバレては困るので使えるのは爺さん婆さんである。なかなか難しい。

 「そうですね。そういう場合は、近衛隊長、宰相の出番となります」


 だんだんと家が貧しくなっていく。

 「もう少しです」

 「そのようですね」

 観察眼も鋭いと爺さん。

 明らかに貧民街になったとわかる地点までやって来た。


 「いつもはこの辺りでシン様教ハビエル神父が炊き出しをしていますが今日は来ていませんね」

 「なるほど」

 「これ以上進むと危ないですから戻りましょう」

 「いや、せっかくですから奥まで行ってみましょう」


 なんだこの人たちは全然恐れていない。わかっていないのか。わかっていてそう言っているのか。わからない。まさかこの俺が臆したと思われても沽券に関わる。やむを得ない。行くか。


 奥に向かって歩いていて気がついた。

 俺の脇は右左を二人の女性が固めている。後ろは坊ちゃんだ。なんだこれは。俺の護衛が周りを固めているより遥かに安心感がある。一個小隊に守られるよりも遥かに安全な感じがする。中隊かそれ以上か。わからん。


 「おいそこの爺さんとお姉さん、坊ちゃん、金目のものを置いていけ」

 鈍感なバカがやって来た。危ないぞ。シッシッと追い払おうとしたがバカである。

 突っかかって来た。プリシラと名乗った女性が男の腕を掴んだ。ちょっと引っ張った。腕が抜けたようだ。ギャーと喚いている。忠告を聞けばよかったものを。


 バカの友達がたくさん出て来た。ナイフで一斉に襲ってくる。あっという間に倒された。バカの友達が。しかも3人は素手だ。


 矢が飛んできた。マルティナさんが矢を掴んで手首のスナップだけでひょいと投げ返した。屋根の上から男が落ちて来た。矢に腕を貫かれている。


 三人が周囲をわざとらしくゆっくりと見回す。恐れ慄く気配が周辺から漂ってくる。

 反対側の屋根の上で弓に矢をつがえていた男は弓矢をこちらに見えるように放り投げて屋根の向こうに消えた。ギブアップのようだ。


 「さ、奥に行きましょう」

 マルティナさんに言われて歩き出す。敵意が消えた。屯していた男たちも一斉に消えた。まるで目につけば消されると思ったようだ。誰も出てこないし、気配もない。奥にじっと隠れているのだろう。まるで噂に聞く魔の森の奥にいる最強魔物様御一行の行進だなと爺さんは思う。


 「なにか国で対策を講じているのかしら」

 マルティナさんの御下問だ。

 「宰相が働き口を探す事務所を作ったようですが、働きたくない人もいて難しいようです」

 俺が答えてしまった。宰相に貸だ。だが貸したことがわからぬだろう。面白くない。


 いいことを思いついた。

 近々年に一度の宮中夜会がある。この国の宮中夜会はいわば貴族全員、街の有力者、大小自治組織のまとめ役などの親睦会だ。魔石ランプの魔石代も高いから年に一回だ。食事の後は、懇親のためのダンスだ。


 この国のいいところだが、ダンスという名目で、ダンス会場の脇で飲み物を手に下級貴族や街の有力者や自治組織のまとめ役なども国王や宰相と話ができる。無礼講だ。晩餐会でも舞踏会でもない。


 あれに俺の枠で3人押し込んでやろう。マルティナさん、坊ちゃん親子とあと一人お付きか。お付きも上品で地位がありそうだ。面白いぞ。食事はテーブルだからつまらないが、食事が終わってダンスになったとき、宰相や国王がどんな反応をするか。よし。3人分だ。


 そうと決まれば帰って3人を夜会に押し込む準備をしなければ。

 そろそろ貧民街が終わりに近い。だんだんまともな家になって来た。


 「明日もぜひ同じ時間にあの大衆食堂にお見えになりませんか。お渡しするものがあります」

 「そうですか。わかりました」


 あっさりとマルティナさんは返事した。3人とも警戒もしない。わからん。

 「ではこの辺で失礼します。また明日」


 爺さん、急いで立ち去る。その後を小動物が付いて行くのに気が付かない。爺さんの正体はわかっているので護衛である。


 ティランママ、街中名マルティナ御一行は孤児院の近くに転移した。孤児院に寄るとゴットハルトさん夫妻に歓迎された。孤児達と少し遊んで、孤児院を出て貴族街へ。


 貴族街の入り口あたりに近衛兵が立番していたが、堂々たる貫禄のティランママ御一行である。うっかり声をかけて無礼者と言われてもいけないがお見かけしたことはないと悩んでいたら声をかけそびれた。

 貴族街へ歩いて行って一向に戻ってこない。これはどこかの貴族の知り合いに違いないと見なかったことにしてしまうのであった。


 ティランママ一行は、孤児院の農場に立ち寄って、巨木に挨拶して神国に転移で戻った。

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