420 滅びの草原一周確認ツアー 船で雪原から大湖をすぎ火山地帯へ
船は雪原の上を進み、雪原を過ぎるとまた湖になった。雪原前と同じ大湖だ。
右前方に山脈が見えてくる。噴煙が見える山がいくつも見える。活火山が連なった山脈なのだろう。遠いから少し活火山寄りに移動した。湖、湿原の水の供給は魔の森からのようだ。土地がどんどん乾いてくる。川もない。二日間のんびりした。交代する人は途中でも交代したから全員船旅を楽しんだ。船を停止させる。
「はいみなさん、二日間楽しい船旅でしたね。今日は船で泊まり。明日から船を降りてまた地上を進みましょう。右前方をご覧ください。山が赤いですね。あれは岩が溶けて流れ出しているのです。溶岩です。明日は近くに行けますよ。楽しみですね。山に煙が出ているところは噴火口です。少し赤いですが、夜になるともっと綺麗に見えます。では夜景を楽しんでください」
ツアコンさんがお気楽なことを言っているが、岩が溶けているのだ。暑いどころではない。こっちも溶けそうだと参加者一同。
日が沈んで夜になると、噴火口のあたりは昼間は灰色や黒っぽい煙だけだと思ったが、夜になると真っ赤だ。煙も大変高温なのだろう。時々赤い塊が飛んでいる。溶けた岩が飛んでいるに違いない。溶岩に直撃されたらどうなるのだろう。考えたくもない。進んで行く方向の地も赤い。溶岩がまだ固まらないのだろう。どうするんだ。溶岩平野だぞ。燃え上がる。参加者一同は同じことを考えた。
朝になった。ぐっすり寝られた参加者一同である。
「はい、おはようございます。今日からは見ての通り高温地帯です。フード付きの極寒、極熱対応服を着て、ブーツ、狐面をつけてください。皆さんすでに着込んでいますね。結構、結構。隙間があると熱が侵入しますよ。フードもきちんとしてくださいね」
みんなお隣同士で点検しあっている。
「いいですか。今日は小さいお子さん、赤ちゃんは過酷なので橇に乗ってもらいます。引くのは天馬、運転はドラちゃんとドラニちゃんが交代で務めます。浮いて走ります。小さくても環境に慣れた方がいいでしょう。体に当たる熱風を体感してもらうことも大切です。では橇に乗ってください」
橇に赤ちゃんと小さい子を乗せる。真ん中は赤ちゃん、外に行くに従って大きい子だ。
「では忘れ物はありませんか。バトルホース、バトルベーベーも狐面をしていますね。それでは転移します」
地上に転移。僕は船を収納した。地上は高温だ。湿地との堺付近は水が沸騰している。船から見た時魔の森との境は水蒸気のカーテンが続いていた。誰も遠くで見えなかっただろうけどね。森から染み出したり川となって流れて来たりした水が熱によって水蒸気になっているのだろう。魔の森は熱帯雨林だろうな。
「暑いですね。今日はどうしようかな。一番外側はバトルホースとバトルベーベー。噴石が飛んできたら蹴飛ばしてね。その内側の火山寄りは三馬鹿さん。その内側は順に神父さん、ご家族。真ん中が橇です。三馬鹿さんはバトルホースとバトルベーベーが蹴飛ばせなかった噴石を始末してね。表面は固まっているように見えて、中から溶岩がドロっと。そういうものもありそう。おお、楽しそう。頑張ってね」
さん付だと危ないということをよく理解している三馬鹿。噴石饅頭の餡は溶岩か、薄皮饅頭だとえらいことだ。どう頑張ればいいんだ、噴石が飛んできたらそっと受けてパスしてやろうと隣を見るとこちらを見ている。同じことを考えていたらしい。
「真上から落ちて来るのは神父さん、頑張ってね。お子さんが危ないですよ。先頭はブランコ。ゴードンさんとセドリックさんがその両脇。溶岩流が固まってなかったら水でもかけて冷やして固めてね。他の人は全員遊軍。では配置についてください」
ゴードンさんが質問だ。
「あのう、少し水をかけてだけで溶岩が固まるものなのでしょうか」
「そうねえ。確かにそうかも。固まらなかったら飛び越えるか、泳いでいけばいいわ。溶岩を泳いで渡るっていうのはなかなか経験できないわ。チャンスよね。いいかな。では出発」
ブランコがジェナを乗せて、ウオンと吠えて走り出す。
しぶしぶゴードンさんとセドリックさんが駆け出したぞ。橇の御者はドラちゃんだ。僕は今日はどうするかな。みんなが走っているから走ろう。アカと殿だ。
だんだん温度が上がって来る。まだ火山は遠いから噴石も来ない。でも時々風に乗って灰のようなものが飛んでくる。火山灰というやつだな。こちらには川もない。魔の森から出たら水蒸気になってしまうのだろう。湿地帯からこちらは高温乾燥地帯だ。人は立ち入れない。息を吸い込んだ瞬間死んでしまう。
先頭はどうしているかな。ブランコは順調に走っていく。ゴードンさんもセドリックさんもやけになったのか。ついていく。もちろん参加者も置いていかれてはかなわないからついて行く。
遊軍連中はのんびりおしゃべりしながら走っている。特に何もなく午前の休憩になった。
船、船という声が聞こえますが、世の中そう甘くはありません。まだ十分対応できます。シャワー棟を出し、参加者、バトルホース、バトルベーベーには十分魔の森の泉の水を飲んでもらいます。
以後は食事と休憩ごとにシャワー棟を出し、魔の森の泉の水を供給することにした。
休憩後出発。小石が飛んでくるようになったが無事にお昼休憩になった。
みなさんは時々飛んでくる小石を避けたり叩いたりしながら昼食。チルドレンは地面に横になったブランコに寄りかかって寝てしまった。小石はブランコのバリアで防いでいる。
僕は眷属とテーブルでゆっくりフルコース。小石?そんなものは飛んできません。バリアをだれか張っているのでしょう。バトルホースもバトルベーベーも自分たちでバリアを張ってのんびりしている。




