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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第四部

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417 滅びの草原一周確認ツアー 雪原(上)

 朝になった。船の上は安心して眠られたらしくみなさん元気だ。


 今日からの注意点を僕が説明しよう。

 「さて今日から陸地になります。といっても雪原です。足が歩くたびに足が雪に潜って大変です。カンジキ、カンジキと唱えながら足をトントンしてください。靴の底が広がって足が潜りづらくなります」

 みんなトントンやっている。うまく行ったみたいだ。説明を続けよう。


 「雪は数千メートル積もっています。今、みなさんは下は安全だと思いましたね。ところが雪に時々割れ目があります。落ちれば数十メートル落ちます。落ちたら大変です。落ちる時は狭いところも落ちてしまいますが、上がってくるのは大変です。特にお子さんが落ちると大変ですよ。子供は狭い割れ目もすり抜けますから、大人は降りられません。雪があると裂け目がわかりません。気をつけましょう」

 ざわつく。少し時間を置く。


 「それと氷上行進の時は天気が良かったですが、そういつも天気が良いとは限りません。良い天気と思っても、強風に雪が舞上げられると、上下左右真っ白の世界になります。悪い天気で風が吹いて雪が激しく降れば同じこと、真っ白な世界になります。遠くの景色も周りにいる人も見えなくなります。目印がまったくありません。どちらを向いているのか、まっすぐ歩いているのか、どのくらい歩いたのか、まっすぐ立っているのかさえ全くわからなくなります。魔物よりたちが悪いです。動けば割れ目に落ちるかもしれません。歩いてもすぐ足跡が消されるのでどこから歩いて来たかもわかりません。前の人の足跡もわかりません。差し上げたロープで班ごと全員数珠繋ぎになるのもいいかもしれません。差し上げたアイスアックスは必ず手にしてくださいね。ストラップが付いていますから手を通してください。地面を突けば割れ目があれば分かるでしょう。慎重に行かないとわかった瞬間落ちてしまうかもしれませんよ。ということで今日は危険だらけです。その上魔物が出てくるでしょう。危ないので赤ちゃんと小さいお子さんは預かりましょう。昨日の橇ですが、天馬が引いてドラちゃんとドラニちゃんが交代で御者をして浮かせて走ります。割れ目に落ちることはありません。では僕の説明はお終い。後はエスポーサ、お願い」


 「三馬鹿さんはブランコより先に行って割れ目を確認し進んでください。真っ先に落ちるのは三馬鹿さんです」

 ひでえと思う三馬鹿。勇を鼓してゴットハルトが聞いてみる。

 「捜索班のお役目はよろしいので?」

 「初めに落ちるからね」

 簡潔なお答えであった。


 「では三馬鹿さんを先頭に行きましょう。他の陣立は前回と同じです」

 諦めて横に展開した三馬鹿が走り出す。ブランコは動かない。ブランコが動かないので参加者全員動かない。


 三馬鹿が消えた。今まで地面と思っていたところに三つ穴があいている。ブランコが歩いて行ってツンツンとつつくと、バサッと雪が落ちて割れ目が現れた。

 「三馬鹿さんが身をもって割れ目の危険さを示してくれました。見に行きましょう。アイスアックスを使って下さいね。雪面を突き刺し割れ目がないか確認しながら見に行きましょう。落ちたところまで割れ目はないでしょうが練習です」

 恐る恐る割れ目に近寄る。1メートル位の幅の割れ目だ。底は見えない。当然三馬鹿も見えない。


 「生きてますかー。置いていきますよー」

 「あ、間違い。置いて行くと落ちる要員がいなくなってしまう。早く出て来てくださーい」

 エスポーサが呼びかける。

 「「「ひでえ」」」

 異口同音、三重奏だ。


 雪の壁を叩く音がしてきて三人が上がって来た。アイスアックスとナイフを使い交互に雪の壁を突き刺して上がって来たらしい。なかなかの腕力である。

 「このように優秀な方は上がってこられますが、まず上がってこられません。気をつけましょう」

 褒められているのだろうと思い込むことにした三馬鹿。


 「それでこの割れ目を通過するわけですが、うっかり飛ぶと雪が崩れてまたここに落ちるか、飛んだ先にまた割れ目があってそこに落ちるかわかりませんので、気をつけましょう。では三馬鹿さん、先にお願いします」

 誉め殺しだったか。言葉通りの誉め殺しだと思いながらも、逆らうより割れ目の方がいいと思って飛ぶ三馬鹿。


 「はい、あのあたりは大丈夫のようです。では進みましょう。三馬鹿さんも気をつけて先に進んでくださいね」

 今気づいたが呼び方がさん付けである。今日は良いことはないのだろうと、アイスアックスで雪原を確認しながら慎重に進む三馬鹿。


 三馬鹿が進んだのでスペースができた。ブランコが先に飛ぶ。と言うより、普通に空中を歩いて行く。三馬鹿が進む速度に合わせて参加者が飛んでいく。しばらくして全員割れ目を越えた。


 参加者は動かなかったブランコ様は割れ目がわかっていたのではないかと思ったのだが、それを言うと、練習にならないと言われて自分たちが先に行かせられる確実な未来が待っているので黙っている。みんなツアコン エスポーサ様を理解してきたのである。


 いつの間にか三馬鹿の後の先頭はブランコ様だけで、よく見るとブランコ様は浮いている。眷属のみなさんは両端か後ろになっている。これでは、三馬鹿がうまくかわした割れ目を踏み抜くのは自分たちである。さらによくツアコンさんを理解した参加者一同である。


 やむを得ずアイスアックスで割れ目がないか確認して進む最前列の参加者。三馬鹿が落ちているのを見ているので慎重である。ブランコ様は先に行くが足跡がついていないので全然参考にならない。

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