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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第四部

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416/499

416 滅びの草原一周確認ツアー 氷原

 「では、先頭はブランコとジェナ。オリメさん、アヤメさん。本体の両脇はベルンハルトさんとラインハルトさん。ゴードンさんとセドリックさんが補助、ゴットハルト保父さんは橇に乗った子供、赤ちゃんの確認をお願いします。三馬鹿は休憩ごとローテートでいいわ。保父さんは橇の乗員を休憩ごとに確認ですよ。いつも通りゴードンさんの家族はエリザベスさんと一緒。殿はステファニーさんとマリアさん。遊軍はドラちゃんとドラニちゃん、ティランママ、ティランサン、観察ちゃんよ。橇の御者を出した班は近くの人が助けてね。では万全よね」


 ふと疑問に思った神父さん。代表してゴットハルトが聞く。

 「それでエスポーサ様は何をするんでしょうか」

 「 もちろんツアコンよ」

 微妙な間があったような気がするが、つつくと蛇くらいならいいがオロチが出そうで黙っている。


 「いいかな。では行きましょうか。あ、言うのを忘れていた。ここは水の上なので、氷の振動を捉えて獲物かと思い、氷の下から魔物が突撃して来るけど、気をつけてね。特に橇よ。保父さんがよく橇周辺を見てね。槍を生やしたような魔物が下から来るかもしれませんよ。御者さんも転覆させないように上手に運転してくださいね」


 「それでは俺一人では足りない」

 ゴットハルトが泣きを入れる。

 「そうねえ。よく考えたらそうかもしれないわね。じゃ三馬鹿が橇の周り。両脇は極級冒険者、ティランママ、ティランサンで行きましょう。完璧よね。ティランママ、ティランサンは配置についてね。いいかな。ではブランコ、出発の合図」

 ウオンとブランコが吠えてゆっくり走り出す。全体が走り出した。


 魔物は出て来ず、1回目の休憩になった。

 休憩は氷の上だ。下から魔物が襲ってくるのではないかと氷を見て魔物の影が見えるのではないかと落ち着けないこと甚だしい。


 我が眷属は能天気で、氷に丸く穴を開けて、棒の先に布をつけて釣りをしている。そんなのでかかるかと思うのだが、かかるのである。船の上から釣りをしたが、同じことで、魔物が擦れていないので、ヒラヒラすれば食いついてくるのである。ただ穴が小さいので魔物が通れない。その状態の魔物を氷の上に転移させて楽しんでいる。

 ティランママとティランサンが面白そうと必死になって転移を覚えようとしている。なんだか出来そうだぞ。出来た。好きこそものの上手なれだな。穴から魔物を転移させて釣りを楽しんでいる。


 ブランコが自分自身も転移させることができるんだぞと何回もやって見せている。どうだと胸を張っている。ティランママとティランサンはブランコの転移をジッと見て、転移した。ブランコがしょげている。エスポーサにヨシヨシされている。


 「では休憩終わりです。お昼まで頑張りましょう」

 ジェナを乗せたブランコが走り出す。釣りの入れ食い状態を見ていた三馬鹿は眷属様が余計な刺激をしてくれたからなんだか出そうだ。大きい獲物狙いなら橇だなと悪い予感がビンビンなのである。


 悪い予感は当たるのである。足元が揺れている。氷にヒビが入る。

 「来るぞ。来た瞬間、橇はダッシュだ」

 下から魔物の気配が急速に近づいてくる。足元の氷に衝撃が走る。

 「ダッシュしろ」

 氷が盛り上がった。割れて行く。氷の厚さは5メートルくらいある。

 橇は間一髪逃れられた。ゴットハルトと周りにいた神父が付き添ってバトルホースが必死になって橇を引いて割れ目から離れて行く。

 ラインハルトとベルンハルトが割れた氷から突き出て来た角2本をショートソードで切断した。長さ10メートルはあった。太さは根元で抱えられないほどの太さであった。収納した。


 「また来るぞ。戻れ」

 急いで戻るベルンハルトとラインハルト。

 橇の周りの隊列を整える間もなく、足元がひび割れてくる。

 「今度は俺とベルンハルトが行く。ラインハルトはタイミングを見計らって、橇を退避させろ」

 氷が盛り上がる。

 「来た。ダッシュだ」

 ラインハルトが叫ぶ。

 また2本角が氷を突き破って数秒前橇が走っていたあたりを突き刺す。すかさずゴットハルトとラインハルトが角を切断して収納する。


 「魔物の影が濃い。また来るぞ。こんどはベルンハルトが橇だ」

 「来るぞ。ダッシュ」

 ベルンハルトが叫ぶ。

 氷が盛り上がり、角が2本虚しく宙を刺した。ゴットハルトとラインハルトが角を切断し、収納する。


 ツアー参加者は一団となって走って行く。

 後ろを振り返ると、ドラちゃん、ドラニちゃん、ティランママ、ティランサンが棒につけた布をヒラヒラさせて、2本角の魔物を楽しそうに釣り上げている。角10メートル、本体20メートルくらいの魚のような魔物であった。一人一匹づつ釣り上げて角の根元をポンと叩いて、収納して満足して戻って来た。

 向こうは遊び、こっちは必死。力の差を見せつけられ、がっかりする三馬鹿である。


 それからは下から襲われることなく昼食になった。昼食は大テントである。

 「みなさんご苦労さんでした。三馬鹿のみなさんの活躍はさすがでした。あの魔物は大変強く、強い魔物ほど美味しいという三人組の法則があり、極上の刺身にできるようですが、三馬鹿は残念でした。角は飾りにはなるでしょう。丈夫ですから保育園や孤児院の旗竿にはなるのではないでしょうか。このテントは下からあの角に襲われても大丈夫です。なんともありません。ご安心ください」


 極上刺身になる魔物を逃し、さらにがっかりする三馬鹿である。

 「三馬鹿は早めに食事をして、さっきの魔物を釣りに行ってもいいですよ。ゴードンさんとセドリックさんも行きたいみたいですから。観察ちゃんに送ってもらいましょう」

 それはありがたいと三馬鹿とゴードンさん、セドリックさん。あれ板長さんもだ。昼食もそこそこに転移して行った。


 我が眷属はテントから少し離れたところに大きな穴を開けてみんなで釣りだ。おお、かかるかかる。二本角の極上刺身魚形魔物だ。僕もアカも何匹も釣り上げた。ブランコ、エスポーサ、観察ちゃん、ステファニーさんもマリアさんもオリメさん、アヤメさんも釣り上げた。二百人衆もエチゼンヤ夫妻、イサベルさんも釣り上げた。ジェナとチルドレンも釣り上げた。

 テントの入り口からみなさん呆れた顔をして見ている。


 十分釣ったからもういいかな。水面を元のように凍らせて、テントに入った。

 チルドレンはブランコとお昼寝です。


 お昼の休憩が終わる頃、釣りの遠征組が帰って来ました。ニコニコしているから満足できる釣果だったのでしょう。


 休憩が終わり午後の部です。テント前に集合してテントは収納。

 「さて、みなさん。釣りは楽しかったようでご同慶の至りです。私もそこに穴を開けて釣りました。楽しいですよね」

 やっぱりツアコンさんだ、がっかりさせるツボを心得ていると思う三馬鹿。


 「午後も午前と同じ布陣で行きましょう。たくさん釣ったから午後は下からは来ないかもしれません。ではブランコ、行きましょう」

 ウオンと吠えて走り出す。

 休憩を挟んで夕方まで何も出なかった。


 「さて、今晩はみなさんこちらで野宿してもらいます。滅多にない経験ですから楽しみましょう。テントは大テントを出します。その中に各自テントを設置してもらえば暖かく過ごせます。外でもいいですよ。シャワー棟も出しておきます」


 大テントを出す。みんな中に入って行く。外は、ゴードンさん一家、エチゼンヤ支店のみなさん、三馬鹿さんだ。三馬鹿は家族に外は拒否されたようだ。意地になっているぞ。シャワー棟も出した。僕らもテントを張る。観察ちゃんが居てくれるというので任せて、神国へ。


 観察ちゃんがエリザベスさんとイサベルさんを連れてやって来ました。ではお風呂にしましょう。

 僕とアカとジェナ、ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃんだ。お狐さんが観察ちゃんを乗せてやってくる。暖かいお湯で遊ぶ。女性は強者連合だな。


 お風呂から出たら夕食です。夕食が終わる頃チルドレンが枕を抱えてやって来ます。

 お狐さんと観察ちゃんが尻尾を振り振りジェナと部屋に行きます。

 エリザベスさんとイサベルさんはエリザベスさんの部屋。僕らは寝室。ぐっすり寝ました。


 朝になって、観察ちゃんがみなさんをテントに送り届ける。僕らも戻りましょう。

 夜は何もなかったと観察ちゃん。星空が綺麗だっと言っています。観察してたんだろうな。


 『シン様、シン様。動かないと思っていた星がほんの少し動いているのがわかったの』

 そうかい。よく観察したね。天文学者になれそう。褒めてやりました。


 それから二日間氷の上。交代も含め、参加者全員が日中一日と一泊はしたので、夕方船を空中に出してみなさんを船上に転移させました。夜の間に氷の上は通過して雪原へ入ったところで停止。

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