411 滅びの草原一周確認ツアー 湿地帯
川や湖を渡るたびに魔物に引き摺り込まれて格闘である。進行速度は昨日までの半分にも満たないだろう。
「休憩ー」
ツアコンさんの言葉を聞いてホッとする参加者。
「言うのを忘れていましたが、水陸両棲魔物がたくさんいます。休憩時も油断するとまた水の中ですよ。小さいお子さんと赤ちゃんはお母さんとドラちゃんに乗ってください。上空でゆっくり休憩してください」
小さい子供と赤ちゃんと母親がドラちゃんに乗って上昇したら、すかさず水陸両棲魔物が襲ってくる。あまりのタイミングの良さにツアコンさんが指示しているのではないかと疑う神父たち。まだツアコンさんをよく知らない人たちは疑問を持たないようだ。小さい子供と赤ちゃんと母親を退避させて親切と思っているらしい。
「みんなで交代で防いで休憩してね」
何だか思い出す神父たちであった。
シン様と眷属の皆さんとエチゼンヤ夫妻はパラソルの元、二百人衆が給仕をして優雅にお茶している。
二百人衆は魔物に襲われない。ゴードンさんとセドリック執事長はハルバートと鎖鎌で模擬戦を楽しそうにやっている。もちろん魔物は近づかない。
俺たちと力の差が歴然とあるのだろうと参加者たちは悟る。
ティランサンは、ときどきダッシュして休憩している人を襲う魔物を一撃し収納している。嬉しそうなので美味しそうな魔物だけ襲っているらしい。
諦めて防護班と休憩班とに別れて交代で休憩する参加者たちであった。
何回か休憩を挟んで昼食になった。
「はい、昼食ですよ。昼食ぐらいゆっくり食べてその後のんびりと休憩したいですね。お任せください」
周りに檻が出現した。
休憩の時と同じで、シン様と眷属、エチゼンヤ夫妻、二百人衆は檻から少し離れて優雅に昼食だ。フルコースらしい。美味しそうだ。ゴードンさん一家とセドリック執事長は檻の外で、わはははと笑いながら食事をしている。
神父たちは思う。確かに親切だが俺たちは檻の中だ。
魔物が美味しそうに食べているシン様一同に腹立たしいのだろう。シン様たちに言えないからこちらの檻に当たってくる。こっちに当たるなと思うが話は通じない。
時々、ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃん、ティランママ、ティランサンが魔物を一撃して収納して行く。美味しそうなのを狙い撃ちしているのだろう。
「ここに残ったのは不味い魔物か」
ゴットハルトが呟くと魔物が項垂れた。悪口は通じるらしい。生き残った不味いと言われた魔物はすごすごと引いて行った。
檻の中ではあるがゆっくりと昼休憩ができた。
「では午後の部を始めますよ」
檻が消える。
「では行きましょう。順番はどうでもいいですよ」
午後の部も午前と同じ、川と湖だ。
午前と同様にこなした。今回は川から戻らない人も出なかった。
夕方になった。
「では、本日はこれでおしまいです。残る希望者はいますか」
エチゼンヤさん一行、ゴードンさん一家、三馬鹿ハルトと神父さん、ハビエル神父さん・トルネード、きょうちゃん、6神父さん、エレーネ女王一行、クローニン執事長、ナニー侍女長、ラシード族長、娘のヒバさん、コマチ姫さん。
神父さんの家族を除き全部だ。
「大変な向上心ですね。それでは頑張りましょう。眠れなくても明日も今日と同じスケジュールですよ。いいですね」
みんないいらしい。
二百人衆は子供を鍛えるために残るそうだ。スパルタだな。縫子さんがひえーーと言っている。
プリメーロ、プリメーラが残るならとジェナとフロランスちゃんも残るそうだ。過保護のエスポーサとブランコも残るそうだ。
ステファニーさん、マリアさん、バトルホース、ベーベー夫妻、観察ちゃんが残ってくれるそうだ。オリメさん、アヤメさんも強くなりたいそうで居残り組。ティランママとティランサンは美味しそうな魔物がいるのでこちらも居残り組。
では任せよう。僕とアカ、ドラちゃん、ドラニちゃん、神父さんの家族で神国に転移。
せっかくだからみんなで夕食にしよう。神父さんの家族とはほとんど会うことがないのでちょうどいい。お狐さんも来た。
大食堂に行こうと思ったらメーメーとモーモー、コッコ、ミツバチたちがやって来た。人が減って寂しいらしい。そうかい。いい子達だな。撫でてやる。それでは泉の広場で立食だ。シートも出してお子さんたちが疲れたらゴロゴロしてもらおう。
子供達はシートのほうに行った。親が食事を届けている。食事を食べたら、お狐さん、ドラちゃん、ドラニちゃん、観察ちゃんと遊んでいる。メーメー、モーモー、コッコの子供も上がり込んで仲間に入っている。お狐さんは子供に囲まれて嬉しそうだ。
神父さんの奥さん連中からは、神父さんがツアーの話があってから生き生きして楽しそうだったとか、どうも園児の世話より荒事が好きらしいとか話を聞かされた。やっぱりみんなそう思うよね。
孤児院にラインハルト公爵の孫が何人か引き連れて見に来たとも言っていた。ドラちゃんの弟子と誘拐された仲間だな。
ドラちゃんが代わりばんこに連れ出しているラインハルト公爵も、執事長も、侍女長も身分は明かさず、時々ぶらりとやって来ては差し入れをしていくそうだ。見え見えなんだけど気付かないふりをしてやっていると言っていた。不良三老人もなかなか良いことをする。
そうこうしているうちに子供が眠くなったようだ。お礼を言われて親が連れてテントに向かう。
二百人衆がテーブルを片付ける。お礼を言って僕らも自宅に帰る。僕とアカ、お狐さん、ドラちゃん、ドラニちゃん、観察ちゃんでお風呂だ。楽しく遊んで就寝。
みんながいないのであちこちスースーする。




