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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第四部

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403/499

403 滅びの草原一周確認ツアーの参加申込書を配付する (下)

 観察ちゃんにお狐さんを呼んでもらって、滅びの草原の確認をするけど、お狐さんとコマチさんはどうすると聞いた。内容は説明したよ。

 あたしも行きたいとのことであり、イヅル国民の代表としてぜひコマチさんもお願いということだったから、観察ちゃんに手紙と水の入ったコップと線指輪を渡した。

 手紙は僕とお狐さんの連名だ。宛名はコマチさん宛だ。その方がいいだろう。

 お狐さんはこられる時に来て僕にくっついていればいいよと言ってあげたよ。『うん』て返事した。可愛いね。


 コマチさんへの手紙は内容も変えた。


 神国准国民

 コマチ様

 お元気ですか。

 コマチ様には一度神の国に来ていただきたく思います。神の国は神国といいます。

 また、神国国民、准国民を集めて神国領土のツアーを企画しました。

 食事は各自持参となります。少なくとも一ヶ月分くらいは準備し収納しておいてください。もちろん一日だけ等、日数を限っての参加も可能です。間を空けることも自由です。そういう場合は食事数は適宜減らしてください。

 ツアー用の服は用意します。またテントは収納に入れておきました。

 愛馬がいましたらお連れください。

 では参加をお待ちしています。

    ◯年◯月◯日

          樹乃神

          狐 神


 お狐様が狐神になっちゃったと照れている。それじゃ持って行ってね。

 頭を擦り付けてお礼を言われた。観察ちゃんと転移して行った。


 大君屋敷

 お狐様が観察ちゃんと玄関に現れた。すぐ女中さんが濯ぎを持って行き神様の足を洗う。


 女中からお狐様と観察ちゃん様が玄関に現れたと聞いて俺は仰天する。脇玄関ではなく玄関だぞ。何か正式の話だ。急いで奥にも声をかけ玄関に走る。コマチ、コジローも付いてくる。


 「ようおいでいただきました。お狐様、観察ちゃん様、どうぞ、こちらへ」

 俺は客間にお狐様と観察ちゃん様を案内した。もちろん上座だ。


 お狐様と観察ちゃん様が座ってくれた。俺と奥、コマチ、コジローが座卓を挟んで正座した。慌ててやってきた家宰と女中頭は部屋の隅で正座している。

 女中がお茶とお茶菓子を運んできた。


 「今日はどのようなご用向きでしょうか」

 女中がお茶とお菓子を配り終えたのを確認して、俺が聞くと、お狐様がアウと返事をし、観察ちゃん様が手紙らしいものを取り出して座卓の上に置き、お狐様がコマチの方にそれを滑らせた。

 「アウ」

 読んでということらしい。コマチが読み始める。


 「是非全日程参加でお願いいたします」

 そうコマチが返事をして手紙についていた紙に名前を書いて観察ちゃん様に渡した。

 俺と奥、コジローは疑問符だらけである。家宰も女中頭ももちろん同様である。


 観察ちゃん様が、水の入ったコップを取り出して座卓の上に置く。お狐様がコマチの方を向き、コップの脇をテシテシと軽く叩く。コマチはコップに手を伸ばし飲み干した。コマチの体が光る。俺たちは仰天した。


 次に観察ちゃん様が細い指輪を出して、お狐様に渡した。娘はお狐様の近くに行って手を出している。お狐様がコマチに線のような指輪をしてやった。また娘の体が光った。俺たち一同はもう一度仰天した。何がどうなっているのかわからない。


 アウとお狐様が言ってお狐様と観察ちゃん様の周囲の空間がゆらゆらとゆらめきお狐様と観察ちゃん様がゆらめきの中へと消えていく。俺たちは平伏した。


 ややあって、もう大丈夫だろうと顔を上げると、みんな顔を上げた。

 娘は首から収納袋を外して、小太刀と竹水筒を出した。何をするか見ていると小太刀と竹水筒、収納袋が消えた。線のような光る指輪の中に消えたようにも見える。


 「おい、なんだったんだ」

 「あ、お父さん。少ししたら一ヶ月ほど出かけてくるわ。お母さん、板さんに言って一ヶ月分の朝昼晩の食事を作ってもらえる?」

 「そんな、腐ってしまう」

 「大丈夫、できた分づつ収納するわ」

 「そんな量は収納できないわ」

 「大丈夫よ。今度いただいた線指輪の容量は一辺100メートルの立方体よ」


 一同仰天する。

 俺はそんな収納の容量は聞いたことがない。それが細い線のような指輪に入るのか。収納といえば子供二人分くらいの容量でも国宝級だ。神級というべきか。


 「おまえ、どこに行くんだ?」

 「あ。これ、シン様とお狐様からの手紙」


 俺は手紙を拝見する。もちろん奥もコジローも家宰も女中頭も集まってきた。お狐様から手紙をいただいたことは開闢以来一度もなかった。

 みんなで読む。一同今日何回目かの仰天である。


 「お前、これはどういうことなんだ」

 「お狐様の生国は神の国で、そこに里帰りするから一緒に来ないかということじゃない。ついでに神の国を見せてくれるのよ。はやても連れて行くわ。颯の飼葉も一ヶ月分頂戴」


 二の句が継げないというのはこういう時のことだろう。颯はコマチの愛馬だ。確かに手紙の末尾には、樹乃神と狐神と二柱の神様が記されている。樹乃神様がシン様で狐神様がお狐様なのだろう。えらいことだ。


 二柱の神様にコマチが呼ばれてしまった。生け贄か。葬式饅頭か。神国国民と准国民と一緒らしいから生け贄はあるまい。巫女か、神人か。赤飯か、紅白餅か。わからねえ。

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