402 滅びの草原一周確認ツアーの参加申込書を配付する (上)
翌日、ドラニちゃんが手紙と参加申込書を収納し、ドラちゃんが例のものを収納し、二人で行ってくるーと飛んで行った。
エチゼンヤ支店
行商から帰って来てエチゼンヤ夫妻がくつろいでいると、キュ、キュと声が聞こえて来た。窓を開けるとドラちゃんとドラニちゃんが飛び込んできてエリザベスに抱きつく。
「いい子ね。今日は何?」
ドラニちゃんが足を出すと手紙がぽとり。
ローコーが読んでエリザベスに渡す。
「もちろん二人で参加だ。それとセドリック執事長、アンナ侍女長、バントーさん、板長、イサベル。しょうがない。本店のローレンツ執事長、ベネディクト侍女長、クレマン料理長をいれておくか。バカ倅を忘れていた。ヨシツナ。ほら書いた。持っていっておくれ」
侍女がお茶とお茶菓子を持ってくる。
「我々も神国国民か、ありがたいことだ。またみんなで旅行できるな。楽しみだ」
ドラニちゃんが申込書を預かってもう一度エリザベスに抱きついて、窓から飛んで行った。またねーと声が聞こえた。
「セドリックを呼んでくれ。セドリック、アンナ、バントーさん、板長を連れてスパエチゼンヤに戻ろう」
スパエチゼンヤ警備詰所
ゴードンがお茶を飲んでいる。ドラちゃんとドラニちゃんがやって来た。足を出すとぽとっとゴードンの手の上に手紙が落ちる。
「なんだい。どれどれ、面白そうだ。もちろん参加。申込書があるな。ちょっと待ってくれ。ええと、俺と、ロシータ、リリアナ、リオンだな。書いたぞ。持っていってくれ」
警備員が出してきたお茶とお茶菓子を飲んで食べて満足して、飛んで行った。
心のこもったおもてなしをしてくれれば安物のお茶でもお菓子でも美味しくいただくドラちゃんとドラニちゃんである。
「頼んだよー」
「わかったー」
孤児院
ゴットハルトが事務室で仕事をしているとキュ、キュと鳴き声が聞こえて来た。空いていたドアからドラちゃんとドラニちゃんが入って来た。
ぽとりと机の上に手紙が落ちる。
「おーい。お茶だ」
ゴットハルトの奥さんがお茶とお茶菓子を持って来た。
「なんだろう」
「あなた神国国民と書いてあるわ」
「そうだな。ありがたいことだ。滅びの草原か、面白そうだ。全員参加だな」
ドラちゃんの声が頭の中に聞こえてくる。
『神父さん30人と12人を纏めてね。家族参加もありだよ。ついでにきょうちゃん、ハビエル神父とトルネードも頼んだよ。参加申込書は書いたら観察ちゃんに渡してくれればいいよ』
「承知しました」
頼んだよーと飛んで行った。しっかりお茶を飲んでお茶菓子も食べていった。
「だいぶ頼まれてしまったな」
「いいんじゃない。頼りにされていると思えば」
「それもそうだな。だけど数が多いぞ」
「簡単よ。どうせみんな参加でしょう。神国国民と言われて参加しない人はいないわ。参加申込書に名前を書いてもらうだけよ」
「よし、早速我が家から書こう」
元神聖教国跡地の村
6聖人が広場に集まっている。一応全ての元神聖教国関係の村にドラゴン200芋を配り終えたので今後の方針を相談している。
キュ、キュと声が聞こえた。
ドラちゃんとドラニちゃんがやって来た。もちろんシン様教自称ドラゴン派の6聖人は跪く。
『シン様から手紙だよ』
ぽとっと手紙が差し出した手の上に落ちる。
「神国国民だ。ありがたや」
それだけで感激してしまった6人。
『先を読んでね』
「はい」
すぐ全員の名前を書く。
「よろしくお願いたします」
参加申込書を差し出すとドラニちゃんが収納。
『芋を配り終えたみたいだね。ご苦労さん』
ドラゴン様に褒められたと感激の6人。
それじゃねー、馬はバトルホースを当日借りればいいよ。迎えにはくるよーとドラゴン様が飛んでいく。
エレーネ女王の宮殿
キュ、キュと声がする。
女王の執務室で相談をしていたいつもの女王、執事長、侍女長。
すぐ執事長が窓を開け、侍女長がお茶とお茶菓子を用意しに行く。
ドラちゃんとドラニちゃんが入ってきてエレーネ女王の前に来て足を出す。ぽとっと手紙が机の上に落ちる。
「まあ、神国准国民だわ」
「ありがたいことです」
女王は、すぐ三人の名前を書いた。
「では、三人でお願いいたします」
わかったと声が聞こえた気がした。お茶を飲んでお茶菓子を食べて窓から飛んで行った。
女王は浮かれている。シン様から手紙をもらった。シン様から手紙をもらった。
執事長と侍女長はいつもの通り肩を落とす。
ラシードの屋敷。
ラシードは隊員とベーベーの世話をしている。隊長自らベーベーの世話をするものだからベーベーも隊長に懐くし、隊員もサボれない。
砂漠の乾いた空からキュ、キュと鳴き声が聞こえる。
「おい、鳴き声が聞こえるな。幻聴か」
「いや、隊長。ベーベーがピタッと静かになりました」
確かにベーベー言っていたベーベーが静かになって動かなくなった。金縛りか。
ドラゴン様が降りてくる。今回は小さいままだ。ほっとする。
目の前に来て、足を出す。思わず手を出すとぽとっと手紙が落ちる。ドラゴンが浮いて待っている。
「中にお入りください。お茶で喉を潤してください」
屋敷に招き入れる。すぐ、奥さんと娘さんがお茶とお茶菓子を運んでくる。
娘は期待しているようだが今日はドラゴン様だけだ。
手紙を拝読する。
「神国准国民か。ありがたいことだ」
申込書に自分の名前を書いた。娘から圧がすごい。しょうがない。ヒバと娘の名前も書いた。ドラゴン様に申込書を渡す。ドラゴン様が申込書を見て口の端が少し歪んだ。笑ったようにも見える。
ドラゴン様が娘にコップに入った水を渡す。もちろん娘は躊躇なくゴクゴク飲みほした。体が光る。ドラゴン様が娘に手を出せと言ったような気がする。娘が手を出している。ドラゴン様が細い指輪をしてやる。俺の指輪と同じだ。体が光った。
指輪の中にショートソードと16木乃伊の泉の水の入った竹水筒が入っている。ショートソードはよく稽古しておきな。二人とも自分のベーベーに乗ってくるんだよ。迎えにはくるよ。そう聞こえた。
ドラゴン様は開け放してある応接室から外に飛んで行ってたちまち見えなくなった。
「お父さん、剣の稽古をつけて」
「わかった」
そう返事するより他にないお父さんである。お母さんは羨ましそうに見ている。




