395 オリメさん認定織物工房がある街で (上)
出店は混み出した。最初はいつもの日用品が売れる。日用品が一回りすると女性が下着に群がる。初めてらしいが、みなさんお買い求めだ。
あれ、さっきの村より高いような気がする。さっきの村ではほとんど原価で下着を売っていた。慈善事業だな。基本的な品はどこでも無理なくいきわたるようにしているらしい。こちらの街は余裕があるから、値段も高いのだろう。高いと言っても日用品の値段の範囲だ。
店員さんがエリザベスさんを荷馬車の方に呼んだ。店に出す品物を相談している風を装っている。
「織物工房の周りには目つきの良くない連中が屯しています。私は、市場が開くよーと言って回っているだけでしたので、気にしなかったようです」
「それでいいわ。織物工房に勝手に入り込まれては困るのでしょう」
『シン様、シン様。今は織物工房の中には織子さんたちしかいないよ』
では行ってみますか。エリザベスさんの方をチラッと見る。
「日差しがきついわね」
「馬車の中で日が翳るまでお休みになったらいかがでしょうか」
店員さんもさすが影の者だね。上手く合わせ、見張りの目つきの悪い男達に聞かせている。
「そうね、それじゃ馬車で休んでいるわ。坊ちゃんも外で立ちっぱなしでは疲れるでしょう。馬車で休んだら」
「うん。少し疲れたからそうする」
坊ちゃんになってしまった。見張りの人も不審に思わないだろう。
僕とアカとエリザベスさんが馬車の中に。
「織物工房の建物の中に転移しましょう」
「はい、お願いします」
観察ちゃんが織物工房の詳細な見取り図を作ってくれていたので僕とアカとエリザベスさんで休憩室に転移した。
エリザベスさんがそっと顔を出し、ちょうどこちらを向いた織子さんに指を唇に当てて静かにとサインを出した。顔馴染みらしくさりげなく休憩室にやってきた。
「どうしたの」
「織子のまとめ役がどこかに連れて行かれて、私たちは見張られて睡眠時間を削られて仕事をさせられています」
「家族は?」
「どうなっているのかわかりません。連絡もありません」
「ここは、みんなの家にあった織機を集めた作業場だったはずよ。誰にも指図を受ける必要はないわ」
「それが代官がエチゼンヤの意向だといって乗り込んできて、そんなはずはないと言って抵抗したのですが、まとめ役をどこかに連れて行かれて、働かなければまとめ役も家族もないものと思えと脅されています」
「ひどいわね。今日は我慢してちょうだい。明日にはなんとかする。そうね。みんなには黙っていてね。見張りに感づかれるといけない」
「わかりました。エリザベス様はどうやってここに入れたのですか?」
「うん。ちょっとね。じゃみんなのところに戻ってね」
織子さんは首を捻りながら戻って行った。
「さて、どうしてくれよう」
「とりあえず、馬車に戻りましょう」
「そうだわね」
馬車に転移した。
ジェナが戻って来た。
「おとたん、人が閉じ込められているところを見つけた。周りに見張りがいたから気づかないふりして戻って来た。観察ちゃんが監視している」
観察ちゃんから映像が送られてくる。まとめ役だろう。エリザベスさんにみてもらうとやはりまとめ役だという話だ。だいぶ具合が悪そうだ。
オリメ商会からマネキンを借りて来てもらおう。
エスポーサを馬車の中に呼んだ。すぐ借りて来てくれた。下着売り場のマネキンさんだ。織子さんのまとめ役の服を複製して着せて、狐面をつけて、身代わり君、いや身代わりお姉さん一号だ。
ではすり替えよう。誰かが近づいて来たら殴っていいからね。観察ちゃんがそばにいるから大丈夫だよ。観察ちゃんがうん、うんと言っています。
まとめ役さんはだいぶ痛めつけられたね。痛めつけられたひどい記憶無くなれ、体元に戻れ、元気になれ。治った。
気が付いたね。
エリザベスさんが話しかける。
「もう大丈夫よ」
「私がいなくなるとみんなが痛めつけられる」
「身代わりお姉さん一号をおいてきたから見張りの連中は気づかないわ。暫く休んでいなさい。ここでは寝られないわね」
エリザベスさんがこちらを見る。
わかりました。移動用のスパ棟を街の外の丘の上に出した。ジェナと観察ちゃんについていてもらおう。
「街の外の丘の上に家がありますから、明日までそこで休んでいてください。明日にはエリザベスさんがなんとかします」
「ゆっくり休んでいてね」
「娘のジェナと、この観察ちゃんをつけますので安心してお休みください。ジェナ、観察ちゃん、頼んだよ」
わかったーとまとめ役さんを連れて転移して行った。
さて許せないぞ。見張りの連中。見張りの連中から代官への定時連絡はなさそうだから三人組を馬車の中に呼んだ。
「エリザベスさん、ちょっと出かけて来ます」
「行ってらっしゃい」
エリザベスさんはわかっているみたいだ。
転移した先はもちろんまとめ役さんが閉じ込められている家というか、物置のそばだ。
見張は三人だな。ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃんが、三人を確保した。
「何をするんだ」
「こうするんだ」
「ブランコ、中に投げ込んで」
物置のドアを開けてやるとブランコが咥えた男を放り投げ入れました。
ドアを閉めます。中からバキン、ボキンと派手な音がします。すぐ静かになりました。
「何をしたんだ」
「さあ、中に入ってみればわかるのでは」
ドラちゃんが男を投げ入れます。
またまた派手な音。
三人目はようやく理解したようだ。逃さないよ。
ドラニちゃんが男を投げ入れます。
中はなかなか賑やかで楽しそうだ。さて、静かになったから中に入ってみましょう。
三人が床に倒れています。
ドラちゃんが空中でコネコネしています。出来上がったようです。
僕は親切だから一人づつ骨折を治してあげましょう。
一人目、治った。ドラニちゃんが口を開けさせる。すかさずドラちゃんが泥団子の三分の一を突っ込んだ。ドラニちゃんが少し抑える。生体接着泥団子はなかなか性能がいい。
二人目も三人目も同様にした。
ドラちゃんは楽しそうにまたコネコネしている。
一人目を蹴飛ばして裏返す。両手を後ろに回す。手のひらにドラちゃんが泥団子を一つ、ドラニちゃんが手のひら同士を合わせて押さえつける。くっついた。三人とも後ろ手になった。
気絶している三人を身代わりお姉さん一号が蹴飛ばす。目が覚めたようだ。口を開こうとしても開かない。手で殴りつけようとしても上半身が動くだけ。口が開けない、手が後ろでくっついていることに気がついたようだ。
三人の股間に手を向けた。
「報いを受けよ」
段々先っぽから腐っていく。ゆっくりゆっくり腐っていく。腐り終えた時が死ぬ時だ。それまでトイレに行くと激痛だ。
ドラちゃん、ドラニちゃん、明日の夕方まで動けないようにしておいて。
ドラちゃんとドラニちゃんが蔦のようなもので下半身を床に縫い付ける。
僕は?とブランコ。
はいはい、骨継ぎ練習をしていいよ。幸い口が聞けないし、動けないからね。
ブランコが早速練習を始める。ボキッ、ボキッと音がする。三人だから足は6本、次々練習している。身を捩っている。涙、涙、涙だ。
ドラちゃんがコネコネする。
親切だから教えてやろう。
「目を瞑っていないと、目玉が潰れるよ」
泥団子をドラちゃんが目に投げつける。手で押さえつけられないからね。ドラニちゃんが空気を圧縮して押さえつけた。何回かやって、重さをかければいいのかと気がついたみたいだ。重力を泥団子にかけて押さえている。上手だ。
「はい、みなさん、涙を流さずにすむようになりましたよ。明日夕方には足を縛り付けている蔦のようなものが消えますからあとはご自由にどうぞ」
そうだ。すぐ亡くなってはかわいそうだね。せっかくの筒涸らし、もとい、筒腐らしが効果を発揮する間がない。舌は固定、口は開くようにしよう。口はきけないが流動食ぐらいなら食べられるぞ。
「筒涸らし」に敬意を払って「筒腐らし」にしました。言葉として多少変かもしれませんがそう言う事情です。ご了解を。




