385 海岸に向かい、塩田を経て、崖下の狭い砂浜で焼き肉をする
「二百人衆は本当にいい種芋を作り出しましたね。シン様から聞いた時も褒めたのだけど、帰ったらどう使ったか教えて、また褒めてやりましょう」
ステファニーさんの発言に、マリアさんはじめみんな頷いています。本当に素晴らしい芋だよね。原種は役に立つな。また何かあったら採取して二百人衆に渡そう。
チルドレンは飽きちゃったね。ブランコに寄りかかって寝ている。
寝ている間に生き残った人たちの村を上空から見てこよう。
エスポーサとアンナさんに残ってもらってドラちゃんに乗って一周してこよう。
あれ、チルドレンが起きてしまった。
疑いの目で見ている。
「置いて行こうとした」
ジェナが代表して言っています。
「よく寝ていたからね。一回りしてこようと思っただけだよ」
「置いて行こうと」
「おやつにしよう」
途端にチルドレンの機嫌が回復しました。移動用簡易スパ棟だから狭いけど、ホールにテーブルを出しておやつにした。
今日のおやつはセンベーだよ。お米が収穫できたからね。二百人衆が作ってくれた。醤油センベーだ。マリアさんが出してくれる。チルドレンはもとより、アンナさんがバリバリと食べている。
「美味しいですねこれ。何ですか?」
「センベーです。米の粉を焼いてさらに醤油を塗って焼いています」
「ショウユってなんですか」
「これです」
醤油差しを出した。
「黒い液体ですね。この容器は傾けると出るのでしょうか」
「そうだけど」
口を開けて上からポタポタやっている。大丈夫か侍女長。
「何でしょう。結構複雑な味ですね」
「万能調味料ですよ。お昼に肉を焼くときに試してみましょう」
「肉、肉、肉」
ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃん、チルドレン、それにアンナさんだ。
アンナさんの食いしん坊レベルは三人組とチルドレン並らしい。
「それじゃ一周してから海岸に行こう」
移動用簡易スパ棟から出て、スパ棟を収納。ドラちゃんに大きくなってもらってみんなで乗った。
ぐるっと回ろう。
ドラちゃんとドラニちゃんで並んで飛ぶ。
点々と小さな集落があるね。囲みの中の畑は小さい。みんなやっと囲って住んでいるんだろう。芋が役立つといいな。
六人は右左の二手に別れてぐるっと集落をまわり芋を配るらしい。気づいた。手を振ってる。僕らも手を振って、みんなに幸あらんことをと一周して海岸方面へ。
「ドラゴンだ」
「ドラゴン様だ。このドラゴン200芋はドラゴン様より御下賜されたものだ」
「ドラゴン200芋?」
「そうだ。この芋は魔物よけにはならないが魔物が食べない。葉も食べない。だから村を囲む壁の外で栽培できる。収量が多いので村の食料事情は大いに改善される。みんなお腹いっぱい食べられる。そして余裕ができたら壁を徐々に広げていけば良い。ただ一年に一度種芋にして植え直さなければ絶えてしまうのでそれだけ気をつけてくれ」
「夢のような話だ」
「さあ、種芋を植えよう」
後にこのドラゴン200芋は、ドラゴン芋やドラゴンとか二百とかに略され、魔物がいる地方のみならず魔物の少ない地方においてもその収量とおいしさで普及して行った。
ドラちゃんは海岸目指して飛んでいく。
やがて海岸が見えて来た。切り立った崖が続くが一箇所砂浜の箇所があった。
四角い塩田がいくつもある。神聖教国の塩はここで作っていたのだろう。天日塩田だな。一番広い塩田に海水を入れ、水分を蒸発させる。そしたら次の塩田に入れまた水分を蒸発させる。最後の塩田で塩を結晶化させる。大変だな。
いくつも塩田があるが、塩を生産しているのはほとんどない。一箇所あるがそのほかは使ってないようだ。
塩田で作業している人がいた。
「ドラちゃん、少し離れたところに降りて」
「こんにちは。大変ですね」
「ああ」
「一箇所だけですか」
「そうだ。神聖教国が潰れる少し前に塩の輸出禁止となって、その時大半の人が塩作りをやめた」
「いまこの塩はどうしているんですか」
「塩の禁輸が解けたが神聖教国も潰れて、塩商人も買いに来なくなった。今はこの近くの人が買いに来るので売っているだけだ」
「坊主は、買いに来たようには見えないな」
「ええ。魚がいるかと思って来てみました」
「魚はいるが魔物もいる。俺たちは砂浜を少し掘って海水を引き入れて使っている。海は怖いからな。それでもたまに海水を引き入れる水路にも魔物が上がってくる。俺が知っているだけでも何人か生命を落としている。命がけだ」
「そうですか。大変ですね。それじゃ戻ります」
少し見えないところまで戻ってドラちゃんに乗った。下から見えないようにして上昇。海岸線に沿って飛ぶ。なるほど切り立った崖だ。一箇所崖下に砂浜があった。
「あそこに降りよう」
砂浜に降りた。ドラちゃんがギリギリ着陸できた。狭い砂浜だ。崖から降りてくるのも容易なことではないだろう。誰も足を踏み入れたことはないんじゃないか。
「お昼にしようね」
いつもの日除を張ってシートを敷いて、座ってお昼だ。
「肉、肉、肉」
と三人組とチルドレンとアンナさんが言っています。
岩がないな。砂を圧縮して即席のかまどを作った。鉄板を出して、油を引いて、焼くぞ。魔肉。
焼き始めたところに醤油を垂らす。ジュッと音がして、あたりに香ばしい香りが漂う。
アンナさんが唾を飲み込む。
「醤油ですよ。香りがいいでしょう。出店でやると歩いている人が寄ってくること間違いなしです」
三人組がジリジリと寄ってくる。狙いを定めている。
「ほい、焼けた」
あっという間に三切れなくなった。
チルドレンがベソをかいている。
「三人組はもう最後だよ。次はチルドレン」
チルドレンに焼いてやる。醤油を垂らす。
三人組の口から涎が垂れる。美味しかったんだろう。
「はい、チルドレン」
皿にとって渡す。ふうふう言いながら食べている。
「おとたん、美味しい、もっと」
「まってね。次は大人」
また醤油を垂らして焼く。
もう三人組は涎たらたらだ。しょうがないねえ。あ。アンナさんももう少しで涎が垂れそうだけど踏みとどまった。
「はいよ。焼けた」
アンナさんが一切れ掻っ攫った。パクリとかぶりついた。
「アチアチ」
舌が火傷したみたいだ。放置。
頑張る。ふうふうして食べ出した。
「おいひい、おいひい」
残りのマリアさん、ステファニーさん、オリメさん、アヤメさんにはいい肉を焼いて進ぜよう。
「ほい焼けた」
野菜も焼こう。
三人組が肉、肉と言っているが。
「野菜食べたら肉だよ」
諦めて野菜を食べ出した。
「美味しいだろう。醤油で焼いた野菜」
みんな野菜を食べる。
かまどを拡張して、鉄板も大きくして、一度に大量に肉を焼こう。
ジュウジュウいい音がして醤油の香りがあたりに漂う。
「はいよ、焼けたから食べてね」
全員肉にかぶりつく。アンナさんの舌の火傷も治ってしまったようだ。
海から何か来る。触手が見える。醤油の香りに誘われたかな。
「みんな、食べ物が来たよ。塩で滑りをとって刺身だ」
アンナさんが、刺身、刺身といいながら、薙刀を振って一本触手を切り落とした。食べることに関しては素早い。
懲りずに何本も触手が伸びてくる。何匹もいるんだろうな。
「お昼の邪魔をして」
マリアさんがロングソード、ステファニーさんがショートソード、オリメさんとアヤメさんは忍者刀でスパッと一本づつ確保。三人組は棒でスパッ。チルドレンも細い棒でスパッ。エスポーサは薙刀でスパッ。アカはちょいちょいとすると何本も触手が落ちる。
オリメさんとアヤメさんの忍者刀は、忍者服を着る時の飾りかと思ったらこういう時は実用品になった。無駄にならなくてよかった。
慌てて触手の主が海へ戻って逃げて行った。
それでは下処理をしよう。塩水の塊を空中に作った。
「みんな下処理をするよ。塩水の中に放り込んで」
触手が投げ込まれる。
渦を作ってグルグル回す。程よいところで滑りとれろと言ってから真水の塊に放り込んでぐるぐる。
よし。できた。
各人の収納に一本づづプッシュ。僕も一本。一本残して余りはアカの収納。
さて刺身だ。
残した一本を空中に浮かせて、皮無くなれ。で皮が無くなった。隣に大皿。久しぶりの相棒で薄くスパスパ輪切り。切ったものは皿の上へ。ほいできた。
テーブルを出して小皿に醤油。わさびはないな。
箸を出して食べてもらう。アンナさんには箸の持ち方を教えた。まずはブスッと刺して食べてかららしい。
「美味しい」
みんなで醤油をつけて食べる。
触手が這って来た時はヌメヌメしていたけど、今はコリコリと美味しいね。
触手は人の背丈の5、6倍だったから流石に余るだろうと思ったら、三人組が頑張って無くなってしまった。余るよりいいけど。
さてお昼が終わって、デザートの触手も食べたし、チルドレンは昼寝。




