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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第四部

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369 ラシード隊商 イヅル国で市を開く

 「ところで肝心の塩はどうした」

 タロー大君がラシードに聞いた。

 「ああそうだった。どこに出す?」

 「倉庫だな。今、行商人が何人か来ているから少し持っていってもらう」

 倉庫に行くと行商人が3人待っていた。


 「どのくらい欲しいか?」

 「とりあえず塩を見せてください」

 「これが見本だ」


 エチゼンヤからもらった見本を出した。行商人は一目塩を見るなり言った。

 「これはこの国の人では買えない。品質が良すぎて値が張りすぎる」


 「このイヅル国は俺の先祖からのお得意だ。心配するな。重量の3割の砂金でいい。」

 「本当か?それじゃ今までより安い」

 「ああ。それにこれはお狐様の知り合いから仕入れたものだ。これを高く転売すればお狐様が悲しむ。お狐様の恵みの塩とでも言っておけ」

 小さい動物がうん、うんと頷いている。いいのだろう。

 「わかった。売る時、お狐様の恵みの塩と言っておく」


 「塩板は一枚35キロだ。何枚要か」

 「とりあえず300枚俺が買おう。買った値段で行商人たちに渡す」

 「500枚でもいいぞ。お前のところは他から塩は入ってこない。他のところはこの塩は贅沢品として流通させる。今までの塩と共存できるようにするつもりだ」

 「それじゃ500枚にしよう」

 「料金は、明日陶器を仕入れるからそれも含めて清算だな」

 「わかった。陶器は窯元から仕入れてある。明日見てくれ」


 「それでどこに出す?」

 「300枚はここだ。悪いが残りは帰りにサイトの町年寄まで届けてくれ」

 「いいよ。どうせ帰り道だ」

 湿気が来ないように、風通しが良く、乾燥するように木で組んである棚に塩板を出した。


 「おい、棚が潰れそうだぞ」

 慌ててタローが家人を呼んで棚を補強する。新しく棚も作り無理のないように置いた。

 行商人も手伝ってくれやっと300枚を棚に納めた。


 行商人さんは収納から出したので驚いている。

 「何枚持っていく?」

 タローが行商人に聞く。

 「明日市で他の品物を仕入れて、それから取りに来たい」

 「わかった」

 ラシードが付け加える。

 「明日の市は楽しみにしてくれ。砂漠の向こうからたくさん珍しい品物を仕入れて来た」


 翌日市が立った。イヅル国の市は日用品が中心である。他から買い付けに来るわけではないので国民が消費するものが全てである。商いとしては旨みがない。他の隊商が寄らないのもそういう理由がある。


 ただ陶器は品質に定評があるが、輸送に気を配る必要があり、その買い付けのためだけに来るには割が合わない。ラシード隊は暴利を貪る事はしないので、ラシード隊から仕入れた方が安上がりであり、結局イヅル国に来る隊商はラシード隊だけとなっている。


 だがイヅル国の人たちはラシード隊が来るのを楽しみにしている。近くの人たちは必ずやってくる。品物もそうだが隊員の異国の話が面白い。異国の話を聞いて異国に行きたくなるかというとそうではないのがイヅル国民である。最後に、なんだお狐様がいないのかで終わってしまうのである。


 ほら話かと思うほどの話もたまにある。今回は砂漠の生き木乃伊の話で盛り上がった。そういう話は、ラシードのホラ話として語り継がれていく。本人はそう言われていることなど知らない。


 遠くの人たちは行商人が市で品物を仕入れて行商にくるのを心待ちにしている。行商人たちもお狐様を悲しませてはいけないので利益はほどほどにして品物を売って歩いている。


 今回は行商人は忙しい。いつもの日用品に加え、女物の下着、男物の下着、幼児服、ベビー服、おむつ類などが店頭に並んでいる。


 いつもの品物ならわかるのだが、女物の下着など、売れるかどうか皆目見当がつかない。どうするよと顔を見合わせる行商人たち。

 ところが女性があっという間に下着売り場にたかって、争奪戦を始めた。それをみて行商人も戦列に参加。大混乱である。


 「ひとり一枚ずつだよ。行商人さんたちはこっちだ」

 隊員が声を枯らしている。近年こんな事はなかった。


 下着を手に入れた勝利者は、男物の下着、幼児服、ベビー服、おむつ類などの売り場に突入していく。やがてそちらも大混乱。


 一息つくと連れて来た子供が目ざとく、ブランコ馬車という子供がまたがって漕ぐらしいおもちゃを見つけた。白い狼の頭に小さな女の子が乗っている。ドラちゃん馬車、ドラニちゃん馬車というドラゴン馬車もある。


 「買って、買って、欲しい」

 子供たちの大合唱だ。自分たちが下着を買ったので多少後ろめたいのか、馬車も飛ぶような売れ行きだ。それをみて行商人が群がる。


 「行商人さんたちはこっちだ」

 今日はよく叫ぶラシード隊員である。


 ラシードはテントの陰でせっせと品物を出している。もちろんニンマリしている。


 それが一段落すると今度は塩の量り売り場を見つけた。よく見るといままでの塩より遥かに品質がよく、しかも安い。あっという間に群がって争奪戦だ。


 ラシード隊員総出で捌くがなかなか追いつかない。

 普段は1日で終わりだが、これでは収まりそうもないと見たラシード。タローに許可をとって、明日も市を開くと隊員に触れて回らせてやっと騒ぎが収まった。


 行商人もぐったりである。タロー大君から塩板を2ー4枚仕入れて宿に引き上げた。

 ラシード隊は店を片付けて宿舎に引き上げた。こちらも全員ぐったりである。


 「ブランコ馬車はそんなに仕入れてなかったな。こんなに売れるとは思っても見なかった」

 「ここで全部売ってしまうわけにもいかんでしょう」

 「そうだな、馬車はイヅル国での予定数完売ということにしよう。いく先々ではどうするかな」


 「隊長、景品がいいっすよ。一定以上子供服とベビー服、おむつなどを買ったら抽選券を配るんです」

 「おまえ、頭が回るなあ。よし、その抽選券はお前が作れ。ディースは交易都市だから、見本を並べておいて次回持参でいいだろう。景品方式なら一箇所1台で済むから小さな市を含めてどこでも出せる。景品方式はお前が仕切れ」

 

 「えええ、仕事が増えた」

 「言い出しっぺだ。がんばれ」

 「そんなあ」

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