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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第四部

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361 フロランスちゃんの夜働き 誘拐犯篇 (下)

 程なくしてハビエル神父がやって来た。トルネードは国王陛下の人参でご機嫌だろう。

 「誘拐犯の家の現場検証に付き合っていただけませんか」

 「いいですよ。事情は秘書さんから聞きました。お困りのようで」


 馬に乗って近衛兵4、5人とトルネードに乗ったハビエル神父と現場に向かう。何回もこういうことがあったと思う宰相殿である。


 現場は衛兵が遠巻きにしていたが、宰相一行が着くとすぐに引き上げた。家というより屋敷だ。品は悪いがかなりお金がかかっている。家の中に踏み込むと確かに血糊と肉片があちこちにべったりとついている。足首から先が転がっていたりする。階段には大金庫が刺さっている。


 「これはあれですな、動かしたとしたら大力ですな。大したもんです」

 俺にもわかると宰相殿。


 「何かお気づきのことはありますか」

 「色々と有るような無いような」

 有るのか無いのかわからない。もう引き返したくなった宰相。


 キュ、キュと幻聴が聞こえる。頭が痛くなってきた宰相。

 「外に出ましょう。ドラちゃんとドラニちゃんが現場検証に来たようです」


 壁からドラちゃんとドラニちゃんが入って来た。潰れかけている家が軋む。出ろと言っているようだ。すでにハビエル神父は外だ。素早い。出遅れた。すぐ外に出る。


 大金庫が家の中から飛んできた。続いて男どもが飛んできた。どうみても息はない。続いて家が粉々に崩れ落ち出火しすぐ自然に鎮火した。証拠があったとしても灰となってしまった。


 ドラちゃんとドラニちゃんは満足したようにキュ、キュと飛んで行った。花街の方向だ。女将から茶菓子をもらうのだろう。フロランスとも遊んでくれるらしい。俺のところに来なければ大歓迎だと宰相殿。


 階段に突き刺さっていた大金庫を取り出したから家が崩れ犯人の火の不始末で出火したと信じたい、決して証拠隠滅ではないだろう。


 「なんですな。大金庫が重すぎて2階の床が抜けて転がり落ちて階段にはまり込んだのでしょうな。大金庫を取り出したので家が潰れましたな」

 白々しいと思う宰相。だがその方が処理が楽だ。

 「全く。大金庫がかろうじて家を支えていたのでしょう」


 死体は消えていた。

 「犯人は火の始末をしなかったんでしょうな。犯人は灰になってしまいましたな。延焼しなかったのは幸いでしたな」

 全く白々しい。さっきまで死体があった。それも人では成し得ないような損壊具合だった。だがそのような死体があると面倒というのも一理ある。幸い地面は綺麗だ。

 「そのようですね。死体はもう出てこないでしょう」


 金庫は近衛兵が開けようとしているが開かないようだ。

 「どれ三馬鹿ハルト直伝の金庫開扉術を試してみましょう」

 ハビエル神父がショートソードを取り出して大金庫に向かって振るった。角を挟んで小さな手の跡が窪んでついている。角を持って抱えて振り回したのだろう。さりげなくその部分は切り飛ばした。その破片はトルネードがこちらもさりげなく足踏みしているふりをして蹴飛ばした。破片は一直線に空の彼方に消えていった。誰も目で追えないので気が付きようのない一人と一頭の技だ。


 大金庫の扉が落ちた。

 ハビエル神父も化け物だったと思う宰相殿。

 金庫の中身は金貨と書類が大量に入っていた。

 これでまた後処理が大変になった。金庫など開けなければよかったと思う宰相殿。

 「金貨が大量だ。なるほどこれでは重い。床も抜けるでしょうな。一件落着。また何かあればお呼びください」

 神父がトルネードに乗って去って行く。


 「宰相様、なんだったんでしょうか」

 近衛兵が聞く。


 「大金庫が重すぎて2階の床が抜け落ちてあちこちの柱と壁と犯人を破壊しながら転がって階段にはまり込んだ。大金庫が壊れかけた家を支えていて、それをドラちゃんとドラニちゃんが引っ張り出したから、かろうじて崩れずにいた家が犯人ごと潰れた。犯人の火の不始末があり出火して犯人ごと灰になった。そういうことだ。それ以外ない。調書はそう作れ」

 衛兵の取調調書は握り潰すことにした。証拠隠滅である。

「わかりました」


 近衛兵も慣れて来たので物分かりが良くなった。うまく調書を作ってくれるだろう。

 しかしなんだったんだろう。ハビエル神父は分かったらしかったが、詐欺師のようなうさんくさい、シン様には誠実な聖職者である。聞いてもまともな答えは返ってこないだろう。諦める。


 キュ、キュとドラゴンが女将さんの家に来た。時々遊びにくる。ちゃんと玄関から入ってみんなに愛想を振り撒いて、女将さんからお茶菓子をもらってフロランスと遊んでいく。密かにドラゴンの家と呼ばれているのは女将さんはしらない。


 ドラゴンは今日も女将さんからお茶菓子をもらってフロランスと遊び出した。小さい動物も来た。仲がいいらしい。フロランスも楽しそうだ。時々フロランスを乗せて遊びに連れて行ってくれる。

 「お母さん、遊びに行ってくるね」

 「行ってらっしゃい」

 ドラゴンに跨って飛んでいく。


 アカ、フロランスちゃんが活躍しているみたいだけど何か知ってる?フロランスちゃんは狐面も持っているらしいけどアカ知ってる?時々フロランスちゃんが遊びに来てジェナたち新3人組と遊んでいくけど何か知ってる?


 アカはエスポーサが抱えて食事をさせているジェナを構い出した。聞こえないふりだ。怪しい。ほんとに怪しい。きっと狐面も作って渡したに違いない。まさか祭りの屋台で買ったものではあるまい。まあいいか。アカ任せたよ。尻尾を振っている。こちらにきてペロペロされた。騙された。嬉しいけど。


 ドラちゃんがフロランスちゃんを乗せて来た。すぐジェナが遊び出す。プリメーロとプリメーラもやって来た。フロランスちゃんも頑丈なので4人で仲良く遊んでいる。


 ドラニちゃんがリリアナちゃんとリオンちゃんを乗せて来た。リリアナちゃんは裁縫棟に行った。オリメさん、アヤメさんから裁縫を教わっているらしい。リオンちゃんは遊びだ。5人組になった。


 観察ちゃんも来た。お狐さんも来た。ジェナが観察ちゃんとお狐さんだよと名前を教えている。お狐さんはときどき昼間も来る。そういう時は天気が悪くて子供が遊びに来ないらしい。留守番の分身は残して来ているので子供が遊びに来ても大丈夫だ。7人で遊んでいる。


 ジェナの友達が増えることはいいことだ。オトタンとしては喜ばしい。アカは腕の中で尻尾を振っている。

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